圧倒的な描写力

刺青を彫る女の話。とにかくその描写力が素晴らしい。視覚的な描写以外に、作者自身の美的感性が散りばめられているように感じる。
写実的に書くだけではない。幻想的な世界観を描きつつ、作者の感性が先立ち、読者の想像力が自然とそこに導かれるような文章の構成。痛々しいはずの彫りを進める場面も、女の悲壮な心情や、全霊をかけて挑むその姿勢に尊さすら見えてくる。
この話を読み終えると、ふと谷崎潤一郎氏の「刺青」を思い出した。「娘」を「魔性の女」へと変貌させ、肥料となった彫師の男。
しかし、この物語の彫師には何が残っているだろうか。雪のような女は消え、残されたのはりんごと決して孵らない卵だけ。「父の作品」からは解放されたものの、空しい気持ちのみが残る。
寂しげな終わり方が奇妙な読後感を生む作品……最高でした!!!!