概要
あの美青年は、すでにこの世にはいない人気俳優の、幻影だったのか…。
散歩の途中で公園のベンチに腰掛けると、視界には人目を引く家が建っていた。ここにどんな人が暮らしているのだろう。愛犬ユミトのリードを短めに持ち、朱鞠(しゅまり)はその家の前に佇んでみた。二階の窓のブラインドがわずかに開いて、黒々とした眼差しが朱鞠とユミトに注がれる。吸い込まれそうな美しい若者の視線。そう直感した朱鞠は、逃げるように散策路に引き返した。季節が巡り、クリスマスイブの夜がやってくる。その家は雪の白さに映え、ひときわ幻想的だった。「こんばんは」と声をかけられ、朱鞠は視線を上げる。あの時のあの目の美青年が立っていた。最初で最後の出逢い。極寒の中で交わした心温まる会話。神様からいただいた最高のプレゼントに、朱鞠はユミトを抱きしめた。
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