概要
降りしきる白雪は輝きに染まって、万華鏡のように果てしなかった。
涼香のベッドの飾り棚には、尾びれを美しく翻した透明な金魚の標本瓶が置かれていた。彼女は生物学者である父と二人暮らしだった。六つの頃に母の連れ子としてこの家に来たが、母はまもなくガンで死んで、腹違いの兄と姉とは成人してから家を出て行った。涼香が二十八になったある冬の日、父が死んで泣き通しだった彼女は、朝のニュースを耳にすると雪の中を飛び出して行った。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!標本というオブジェに彩られた世界観
透明骨格標本という一風変わったオブジェのイメージが全体を通して配置され、幻想的な雰囲気を醸し出しています。
姉とのベッドのシーンも効果的で壊れた家族の力関係を表し、主人公が受動的に生きる象徴的な出来事となっています。
全体的には非常に素晴らしい出来で星三つ差し上げます。があえて難点を挙げるとすると終わり方があっさりし過ぎるという点です。
これは私も以前指摘されたことがあるのですが、本文をしっかり書いているほど、終わりまで緊張感が維持できていないということです。
終わり方は難しいです。私も自戒を込めて指摘させて頂きます。今後の課題として、お互い頑張りましょう。いずれにしろ佳作…続きを読む