桜夜 -sakuya-

白河マナ

プロローグ



 花びらが舞っていた


 桜色の空


 青年は草むらに寝転んで、空を見上げる


 桜の花びら、


 それと、雪


 冷たく白い結晶が、空から落ちてくる


 春


 なのに、雪が降っていた




 青年は目を閉じる


 身体は動かない


 苦い、血の味がする


 死はゆっくりと近づいてくる


 恐れはない


 ただ、最後に会いたい人がいた


 会って、伝えたい言葉があった


 だが、それは叶わない願いだと知っていた


 寒い


 血が凍っていく感じがする


 眠い




 雪が青年の姿を隠し始めていた


 声が聞こえた


 聞き覚えのない、声


 けれど、とても懐かしい気がした


 灰色の空


 黒髪の──


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