「咲く 花」を含む小説

千の名をもつ人々の口からこぼれる言霊。 花咲くように広がり、そして散りゆく想い。 オムニバスになります。

　日清戦争の勝利に巷が沸き返る明治中期。 　「生家に顔を見せにこい」という短い手紙を受け取った主人公は、十数年ぶりに故郷――戦勝景気とは掛け離れた山深い寒村へ帰省する。 　主人公…

舞台は疫病が数百年と蔓延する世界。 疫病を背負った少女エスターは、本能のまま、薬草の捜索に野を駆ける。 隣国から亡命してきた少年カロは、自らの出生の謎を求めながら、薬草の秘密を…

　幼馴染と一緒に歩く、高校からの帰り道。近くに咲いている黄緑色の小さな花に関して、二人で話し始めたのだが……。そこには、思いもよらぬ落とし穴があった。 （この作品は「小説家にな…

初投稿です

　空木ましろは高校に入学したばかりの女の子。 　漫画を描くのが趣味だけど、中学の頃にクラスメイトに趣味がバレてからスランプに陥り、今は無気力な日々を送っていた。 　そんなある日…

落下傘部隊に配属された新兵、ザシャ。彼は恐怖により戦場から逃亡し、その先で捕虜となる。その中での人との関わりにより、彼は何を手に入れるのか？

きらびやかな中華風異世界に転移した女子高生が目にしたものは……。 ――2023年6月30日、「大検」を「高認」に修正しました。 ――2021年3月29日、「安南《あんなん》族」…

近所の銭湯に通うことで日々を生きながらえている私はある日、身体に押し花を持つ女の子と出会う。彼女の消えない模様たちに指を這わせながら、どうかここにいてほしい、と願うけれど。 …

排除してもすぐに咲く花がある

鳥取県の小さな田舎町に『和食処　若櫻』はあった。 この食堂のかまどでつくった料理を食べた者は死者の国へと送られるのだ。 キツネのサナと、幽霊のコンはこの食堂を営み、お客としてやっ…

「もし叶うなら、未来でも俺のことを思い出してほしいんだ」 大学受験を控える高校生の浅海啓太は祖父の家で若き日の祖父とその祖父の海軍での同年兵である志木敏郎のことを知る。 その後…

時は平安。 貴族の姫である葵は、顔も知らない男君の下へ嫁ぐ日の朝、庭にひっそりと咲く朝顔の花を見つける。 ――朝顔は嫌い。あの人を思い出すから。 これは一人の姫君が抱える苦い記憶…

1年のほとんどを雪が覆う街。 そこには1人の殺し屋と１匹の獣がいた。 声を失った無言の殺し屋、トモ。 鳴くことを恐れた無口の獣、ユキ。 1人と１匹は今日も白い街に生きる。 罪人た…

人類が地球を放棄し、遥か宇宙へと羽ばたいた未来の世界。地球に残された人造人間・フォーチュンのシオンとアイリスは、空の彼方との交信を夢見て荒廃した地上を旅していた。全人類を乗せた移…

野辺に咲く花を見ながらそう願う物静かな少女は、その想いのみを拠り所にしてあの時代を生きた。疎開先で青年と会ったのは、そのたった一度きり。しかしあのくらがりの中に射した一条の光はい…

親友の胸に花が咲き、彼女は眠り続けている。 彼女を生かすため、私はある決断を迫られることとなった。

さく、さく、ひと針通すたび、淡く小さな光の粒がふわんと布に浮かぶ。木枠にはめられた絹のハンカチに刺繍糸の花が咲く。 　――これを使う人が、きっと、悲しくならないように。 　私は願…