無言の殺し屋と無口な少女
砂上楼閣
第1話〜一人と一匹
1年の大半を冬のベールが包む街に、1人の殺し屋と1匹の獣がいた。
殺し屋はその街でもっとも多く人を殺し、そして生涯に渡り殺し続ける運命を背負っていた。
そんな彼に寄り添うようにいる獣は、その生涯の大半を彼と共に生きることを運命付けられていた。
これは無言のままに人を殺める殺し屋と、その相棒との物語。
後の世に語り継がれる伝説の存在は、しかしまだ、ただの1人と1匹でしかない。
彼の名前はトモ。
苗字はない。
しがない殺し屋稼業を営んでいる。
家族はいない。
いや、この前路地裏で拾ったペットかいる。
名前はユキ。
その日雪が降ってたことと、何より白い髪をしていたからそう彼は名付けた。
ユキは大人しい。
鳴くこともない。
まだ幼くて、軽くて、一人で餌を捕ってくることもできない。
気紛れにトモが拾わなければ数日もしないうちに、いや雪の中でその日のうちに凍死していたことだろう。
もしくは飢えて餓死したかだ。
そう考えると名前の付け方に問題がある気がする。
しかし彼は特に気にしていないようだ。
トモは殺し屋をしている。
この冷たくて一人で生きるのは厳しいこの街で。
唯一の家族はペットのユキ。
白い髪をした鳴かない幼獣。
トモは今日も依頼を受け、街から一つの命を奪った。
冷たくなった亡骸をトモとユキは無言で見つめる。
トモは、いずれ彼自身もこの亡骸のように冷たくなってこの街で眠るだろうことを想った。
そして彼が死ねばユキも死ぬだろう。
この街はいつだってはぐれ者には冷たい。
一人で生きるのにこの街は厳しい。
しかし一人と一匹ならば…。
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