「文学？ 文学」を含む小説

・・・セカイは、蒼に染まったんだ。 今からちょうど十年前、そう、僕がまだ七歳のときの話。 嵐の前の静けさとは、まさにこのことなんだろうね。その日の海は、異常なまでに大人しかっ…

　あなた、さては旅のお人でしょう。 　わたしを見て「ああ！　足だけが歩いている！　化け物だ！」と、わめき散らすような失礼な方は、ここにはおりませんから。 　そうです。まずは落ち着…

　重心を少し後ろに寄せ、後ろ足に力をためて伸びあがるように跳ぶ。それはまるで、力を溜められていた弾性体が急激に変形、地面を押して飛んだかのよう。 　美しい放物線を描きながら飛ぶ猫…

知ってる人しか知らない秘密の抜け道 ある日、そこでしゃべる猫と出会った 昨年の「第一回夢野久作文学賞　わたしの、いなかの、じけん賞」に応募した作品です。 残念ながら選考落ちとな…

自称鼻のきく盗賊サルマは、お宝の匂いを辿り、小さな島にやってくる。そこで出会った少女、アイラからはお宝の匂いがして―――そのアイラの家にあったコンパスは、持ち主の行くべき場所を示…

小さなギャラリーで偶然目に留まった一枚の絵。それは幼い頃に見た夢の中の風景だった。遠い過去の記憶と今を繋ぐ不思議な物語。失われてしまった物と微かな希望。

「後悔の釣り堀」というお店があります。 　その釣り堀は、夏の間にだけ開く釣り堀です。地元ではちょっとした有名店。 　なぜなら、その釣り堀で釣れるのが魚ではないからです。 　店名の…

未だ言にあらず――それは、未だ言葉としてなかった物事に宛がわれた言葉の未《いま》だ。 それを『未言』という概念で産み出していったのが、未言屋店主です。 その未言屋店主の思い描い…

「海が見たい」と、 マッチングアプリのたった一言からはじまる「綾」と「僕」の１日だけの旅。二人を取り巻く想いの連鎖が導いた先で、たどり着いた海は何も応えてはくれない沈黙の海だった。

君に伝えたい僕とそれを邪魔する、虹や雨。

過去という隘路に迷っている、ドクの廻った体で、暗い路地裏を歩いている、月夜の寒空の下、マッチで煙草に火を灯す、薄闇、音が聞こえた、導かれ、兎は狐に化け、俺はキミと出逢い、小石は…

白い建物に迷い込んだ少女ホノコは、そこで行われている特別な儀式を目の当たりにする。それは、神々によるニンゲンの殺処分であった。少女はそれを嘆くも、神々との交流を通して、この世界の…

とあるMMOプレイヤーによる「ぼったちさん」というプレイヤーについての思い出話です。ぼったちさんは1000以上のアカウントで、色んなゲームの色んなサーバーに同時ログインし続けた名…

十年ぶりに幼馴染と再会した

アメリカ人建築家はビルの最上階にある社長室で、社長と向かいあって立っていた。彼らが螺旋階段をおりていくと、巨大なフロアでは社員たちが怒鳴り合い、離合集散しながら働いている様子が見…

大海原を航海中、海軍士官だった主人公は海に投げ出された。 漂着したのはうつくしい南国の島。現地人の娘が何くれとなく世話をしてくれる。 ここはこの世の楽園だ。自分はこの島を「発見し…

失踪していたロクデナシの父親が突然帰ってきた。 その隣には一人のブラジル人の少女。 これは忘れる事の出来ないある夏の物語。