第24話 洋館、まるでホー◯テッ◯マンション

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

3月ウサギ&ラプンツェル&ルクレツィアT

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


四人と別れた三人は、洋館へとひたあるく。見えてはいた。しかし、中々辿り着けない。まっすぐ見たらわからないが、目の前までいけばわかる。入り口と思われる蔦塀のアーチ。くぐれば道は一本で、分かれ道などはない。だが………、分かれなくとも、曲がる、曲がる、曲がる、曲がる!目的地の周囲を少しずつ、全容を見せるかのように曲がり続ける。蔦塀は、首が余裕で出る程度の高さ。中々辿り着けないことを嘆くか、中に入ったときのための外堀把握に努めるか。

一人前者、二人後者。

前者は置いておいて、後者の視点でお送りしよう。


「……あの位置からじゃわからなかったけど、近づくにつれて、ボロ洋館に見えるわね」


ぼそりと言うルクレツィア。


「上で旋回してる小さな塊たちは……カラスかしら?気味悪いわぁ」


空間も心なしか夕闇に包まれていた。さっきまで明るかったのに……。洋館も木造らしく、ルクレツィアが言ったようにかなりぼろぼろ。そこかしこを茶緑の蔦が覆っている。


「俺、帰りたい………」


頼もしさの欠片もない声がした。


「あなたは黙って、前だけ見て歩いてて」


ピシャリと、涙目の3月ウサギにいい放つ。肩を落としながら歩き続ける彼は、哀愁が漂っていた。好みの年代女性といても、この異様な雰囲気には飲まれてしまうようで。


「……窓とか、今にも割れそうね」


増長するかのような淡々とした現状説明に、ビクリとしながら、瞳を見開き、歩き続ける3月ウサギ。脂汗と、今にも倒れそうなくらい青ざめた顔。いつもの余裕など、欠片もない。


何度目かの曲がり角で、真後ろに到着する。入り口まではまだまだだが、ふと、ラプンツェルが止まる。


「……どうしたの?ラプ」


ラプンツェルの様子なら、見なくてもすぐわかるルクレツィア。すぐに振り返った。


「見て………」


彼女の指し示す方向に、二人は目をやった。


「ぎゃぁぁ……………!!!!!」


3月ウサギが叫ぶ途中で、二人は口を塞ぐ。叫んでも仕方ない光景が、三人の眼前に広がっていた……。


窓という窓に、びっしりと人形が張り付き、こちらを見ていたのだから。


「……ロックオン。既にモードね」


何人もの行方不明者を出しているだけあって、侵入者には敏感なようだ。……来た道を振り替える。


道はいた。完全に隔離された。こちらがこうならば、あちらも……。


「……白雪姫のがこっちだったら、笑えないわねぇ」


の話は聞いている。本人を見たのも、話したのもローゼリアただ一人。リーゼロッテと帽子屋、居合わせた青年は、消える間際の少女のを聞いていた。


「纏めましょ……。カノンに対峙してしまった場合に備えて。白雪姫は何て言っていたかしら」


あの説明が下手なローゼリアの言葉から、必要な情報を搾取する。生半可ではない。


「ん~……、『人形に執着』『人形を壊すな』『人間が嫌い』『赤ずきんと白雪姫を知っていた』……それと、『人形をどんな形でもいいから救って』?」


ルクレツィアが無表情で黙っていた。何かを考えているよう。


「……ねぇ、いる定で話しているけど、全てを踏まえて考えたら………『追い返している』って。カノンもまた、人形たちのように暴走しているのかしら?まだ残る理性で自制している……?」


彼女を人形と認識するならば、そう仮定出来る。


「気配に敏感な白雪姫が、『人間臭しない』けど『やけに人間臭い口調』だったって。自我を持った人形……?」


「……助けなきゃ」


ルクレツィアには他人事ではなかった。彼女は亜種の合成獣キマイラを得た合成獣キマイラ。同じならば、少女を救わなくてはならない。やり方なんてわからない。それでも、ルクレツィアの生きている理由は、の救済。受け入れていくれた街、そして、大好きなラプンツェルのために。


「……うん。助けましょ。白雪姫の毒舌が一番効果ありそうだけど!何せ高飛車ってことは、少女!」


ラプンツェルのやる気スイッチが入った。お姉さんずはとなにかにより、動く。

……一人、役立たずな3月ウサギは膝を抱えていた。そんな彼が動き出す二人に合わせて、嫌々立ち上がろうとしたとき……………。



━━目の前にが置かれていた━━



「……なぁ。これおかしくねぇか?」


3月ウサギの声に振り替える二人。すぐに駆け寄ってくる。


「あら、可愛い~♪」


ひょいっと、警戒なく持ち上げると、ひらりと一枚の真っ白な紙が落ちる。すかさず、ルクレツィアがキャッチ。見事な連携プレイである。


「……?」


「何か書いてあるの?」


「……『をあの子に』」


そう読んだ瞬間、またかも紙が、なかったかのように消えた。


?この子かな?」



━━もぞ…………



一瞬、テディベアが動いた気配がした。いや、まさか、ないない。どう見てもただのぬいぐるみだ。


………人形を名乗る少女のものであるならば?


二人は凝視した。ひたすら、テディベアを凝視した。……次第にテディベアがぷるぷるし始める。



━━ぷはっ



縫い目である口が開いた。


『……!みてんじゃねぇよ!って、えええ?!知らない女の子?!ちょっとまて!『架音』どこいった!?』


ぶるんぶるんと首を動かし、辺りを見渡す。


『迷子になるから、あたしを離すなって再三いったのに!あんのガキャー!』


勢いを削がれるほど捲し立てられる。予想外の口調に誰も何も発せない。


『おい!おまえら!あたしを抱えて屋敷あんなか入れ!』


態度のでかい申し出。


「……ぶっ、あははははははははは!!!!!」


ラプンツェルが壊れた、基、笑いだした。


「いいわよ。一緒にいきましょ。あれよりは心強いわ」


あれ呼ばわりされた3月ウサギ。


「……じゃあ、行くわよ。招待してくれるんなら、さっさと入り口まで連れていきなさいよ。私たち、きっとのお客さんなんだから、丁重にしてくれない?」


淡々と語りかけるルクレツィア。まるで、その声に呼応するかのように、道が変わり始めた。蔦塀が動きを止めるころには、障害物は囲う蔦塀だけに。皆、壁伝いに歩き出す。


確実に、一歩一歩、蔦の巨大アーチへと向かう。ほんの数分。

……彼らは知らない。あの蔦塀迷宮のままだったなら、中には入れなかったことを。その迷宮の中で、息を引き取った冒険者がいたことを。

しかし、彼らは進まなくてはならない。悪夢を減らして、いつか来る平和な世界のために。


巨大蔦塀アーチを潜ると、でかい花壇が左右に4つずつ。花は咲いていない。青々とした緑の絨毯が敷かれたまま。


三人とぬいぐるみは、黙々と進んでいく。ぼろぼろの屋敷には不釣り合いな庭を横目に進む。





━━彼らを待ち受けるのは、最悪の事態。どうする?!━━


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る