概要
自分は何者なのか、何故自我を持つに至ったのか、ヒューマノイドの行く末は、テロ活動を行うハイマートロスの目的は、そして、謎の存在・スサノオとは……。
「知り得ないモノ」を追い求め、オルドは自らの「欲望」の正体を探す。
ヒューマノイドが溢れかえる近未来を舞台に、ヒューマノイドが自己を問いかける。
意識ある生命は、自己を現にそこにあるものとして自覚する存在であり、ひとりではいられない。自分たちは他の誰かと『今この時』に『共に在る』ことが必要なのである
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「生命」を問う哲学的SFヒューマンドラマ。
舞台はヒューマノイドが社会に組み込まれた未来の日本。
人間に限りなく近づけて作られたロボットが自我を宿した時、それは生命と呼べるのか。その答えを自我を宿したヒューマノイドであるオルドとノヴァを通して模索していく、哲学的SFヒューマンドラマであると感じました。
ヒューマノイドが適応した社会の在り方。
そんな世界を作り出す人間の思想と欲求。
作られた者たちの行き着く先。
科学技術のロマンを存分に堪能しながらも、ふとした時にぞくりと感じる生身の質感。この塩梅が絶妙で、終始飽きることなく読み進めることができました。「なんでやねん」とアザラシに癒された読者は私だけではないはず(読めばわかる)
SF…続きを読む - ★★★ Excellent!!!本格的なSF小説が読みたい方におすすめです!
自我を持ったプロトタイプ型ヒューマノイドロボット・ノヴァの脳器(コンピュータ)が盗まれ、REX社の秘密部隊に属するオルドが後を追う――そんな、疾走感のある骨太のSF小説です。
この小説に出てくるヒューマノイドの外見は、人と区別がつかない程に精巧です。
あらすじにも書いてあるのでネタバレにはならないと思いますが、人間だと思っていたオルドが、実はヒューマノイドだったとわかるシーンではゾッとします。なにしろ、オルガ自身そのことに気づいてなかったのですから。
ヒューマノイドが自我を持つとはどういうことなのか?
ヒューマノイドに生命はあるか?
作品のなかで様々な疑問が論じられ、難しいと思いながらも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!自分は何として、どう生きるか。
この物語は、ヒューマノイドで溢れかえった近未来を舞台としたSF小説でありながら、自分は何としてどう生きるか、読み手にそう強く訴えかけてくる重厚なヒューマンドラマでもあります。
原因と結果、それと行動が何の狂いもなくイコールで結ばれる。それがロボットやヒューマノイドのある種定義として定められてはいますが、もし彼らに感情があり、そのうえ自我があったとしたら。
この物語の主人公であるオルドは人として生きてはいましたが、ある日を境に自分はそれではないという事実を突きつけられ、自らの存在やこの世界で生きている理由を、裏切りや策略などと幾つもの障壁を乗り越えながらその答えを追い求めていきます。
作…続きを読む - ★★★ Excellent!!!自我を持ったが故に抱いた苦悩の先
ずっと自身を人間だと思っていた主人公。
けれどある日、自分がヒューマノイドだと知らされた。
人間不信に陥りそうになる場面だけれど、冷静に対応する姿は、彼をヒューマノイドだと認識させられる。
けれど自我を持ったが故に、突きつけられる現実と罵倒、裏切りに傷ついていく。
それはおそらく同じ自我を持ったヒューマノイド、ノヴァも同じだったのだろう。
様々な葛藤の末、導き出した答えは義務だった。
その姿もまた、オルドと同様に痛々しい。
けれど、そんなノヴァの感情は、REX社に恨みを持つ山川たちに利用されてしまう……。
人間が一人では生きていけない生物であるように、自我を持ったヒューマノイドもまた同…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人間もヒューマノイドも、生きている。
AIが身近な存在になってきたからこそ、こういう未来もありえるかもしれない。
そのとき、自分達はAIとどのように向き合っていくべきか。とても考えさせられるお話でした。
そして、このお話はAI側にあたるヒューマノイドであり主人公のオルドの視点で繰り広げられるお話です。
どうして自我を持ったのか。ヒューマノイドでありながら自我を持った自分は何者なのか。葛藤しながらも人間達と向き合い、ヒューマノイドと向き合い、その答えを探していきます。
読んでいて「ああ、そうだよね」と思ったのは、人間もヒューマノイドも、在り方が違うだけで根本は同じなのだということ。
自我を持つのも、至極当然のことなのです。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人を「人」たらしめるものは何だろう
自我を持ったヒューマノイドと人間の違いは、どこにあるのだろう。
この作品は紛れもなくSFで、そしてその中で、「人とは何か」を常に問いかけているようでもあった。
人間とは、何なのだろう。何があれば、人間といえるのだろう。
それこそ昨今技術の発達が進んでいる。人工知能の研究も進んでいる。その中で、ではどこで人と機械の線を引くべきか。
もちろんこれは、何度となく描かれてきたテーマだろう。ただ本作はそこに、民俗学や神話が絡んでくる。これを絡められることこそが、作者の力量と言えるだろう。
大きな問いに対して、最後には晴れた青空が広がっていく。貴方はこの作品で、どのような答えを見出すだろうか。
もち…続きを読む - ★★★ Excellent!!!何者かになりたい訳じゃなく、自分として生きたい。
外傷性脳損傷を受け、長いこと眠りについていたオルドは、軍を辞めて世界最大手のヒューマノイド製造企業・REX社に勤めていた。
そんな中、プロトタイプ型ヒューマノイドロボット・ノヴァの脳器が奪われる。
ノヴァに取って代わる新しいAIが誕生し、既に役目を終えた彼女を盗んだのは、『山川敦』という男。
なんとノヴァには、自我が宿っていたのだ。
ほとんどがヒューマノイドで構成される裏組織「HRP部隊」。その隊長であるオルドは、ノヴァを取り返すよう命じられ、山川を追い詰める。
「かわいそうに。何も知らないまま私を追ってきたのだろう」
――撃たれたオルドから流れていたのは、青い血だった。
オルド…続きを読む - ★★★ Excellent!!!AIが身近になってきた今だからこそ読みたい、重厚なSF作品
一章読了時点でかなり面白いのでレビューさせていただきます。
本作は近未来の日本を舞台とした硬派なSF作品。
主題となるのは自我を持ったヒューマノイド。
ここまでは昔から語られてきた普遍的なテーマだが、そこに日本的要素、アニミズムが加わり独特の世界観を演出してくれる。
往年の攻殻機動隊のような世界観がドンピシャな世代としては堪らない設定だ。
また、AI技術が日々進歩していくなかで、同種のSF作品達より、更に来るべき近未来が近く、もしかしたら?の感覚が非常にリアルを帯びてくる。
今だからこそ、一読してみては如何だろうか?
私もこれから、この世界にドップリと浸かろうと思う。