未曾有のパンデミックが起こった近未来を舞台に、実在の毒素をその身に宿した有毒人種(ウミヘビ)たちと、彼らを監督するクスシたちの戦いを描いた物語です。
舞台は西暦2320年。世界では「珊瑚」と名付けられた寄生菌がもたらす病「珊瑚症」が蔓延していました。
珊瑚症にはステージが存在し、重症になると我を失い異形と化し、周囲の人々を巻き込む生物災害を引き起こす非常に危険な病です。
医師モーズはそんな珊瑚症患者を診る医者でしたが、とある出来事から、珊瑚症による生物災害を鎮圧し珊瑚症の研究を行う研究所オフィウクス・ラボへ入所することになります。
そこで彼を待っていたのは、それぞれ協力な毒素を身に宿した有毒人種「ウミヘビ」と、優秀だが癖の強い同僚たちでした。
災害鎮圧に特効薬の研究開発だけでも大変なのですが、さらにペガサス教団と呼ばれる珊瑚を信仰する宗教団体が、彼らの道程を阻みます。
果たしてモーズは珊瑚症の治療薬を作り出し、パンデミックを終わらせることができるのか……!?
こちらの作品、「毒素擬人化小説」とあるように、なんと言っても個性豊かなウミヘビたちの活躍が楽しいです!
ニコチン、タリウム、水銀などなど。作者様が実在の毒素の特徴を、上手くキャラクターの外見や能力に落とし込んでいらっしゃいます。皆さんそれぞれ個性的でイケメン揃いなので、絶対に推しが見つかること間違いなしです!
戦闘面では格好よく戦う彼らですが、ウミヘビたちはそれぞれ重く辛い過去を抱えていることも多く、そこがまた彼らの行く末を応援したくなってしまいます。
また、そんなウミヘビたちと交流するモーズさんも、真面目で真摯で非常に魅力的な主人公です。彼のこともウミヘビたちに負けじと応援したくなります。
モーズさんの同僚もそれぞれ個性的な方々ばかりですので、彼らの活躍にも是非ご期待ください。
もちろん、SF作品としてリアリティのある設定の作り込みや、戦闘シーンの格好良さも折り紙つきです。楽しいことばかりの世界ではないですが、戦闘シーンの爽快さや日常のちょっとしたシーンのおかげで暗くなりすぎることはなく、最高のエンターテイメントを味わうことができます。
現時点で100万字ごえの大長編作品ですが、是非読んでみてください。おすすめです!
『珊瑚』と呼ばれる寄生菌の感染によって罹患する、不治の病『珊瑚症』。
あらゆる動植物に寄生して子実体を生やし胞子による感染を広める。
ステージ4からの回復は見込めず、安楽死かコールドスリープしか選択肢はない。
ステージ5になるとバイオハザードである。菌糸は肥大化し、コンクリすら破壊し、その凶器が宿主である人間よりも巨大化する。
主人公・モーズは、このステージ5になった患者に宿主の意識は残っていることを証明しようとしている。
そんな中、モーズはある事件をきっかけにして、オフィウクス・ラボと呼ばれる組織の「クスシヘビ」となる。
オフィウクス・ラボにいるのは、『珊瑚』を専門に研究しているラボが管理する特殊部隊・ウミヘビ。
特殊部隊・ウミヘビの正体とクスシヘビの役割。
寄生菌『珊瑚』を神からのギフトとする『ペガサス教団』。
モーズの研究と特効薬製薬。
謎に満ちた『珊瑚症』。
『珊瑚症』を中心とした科学要素がリアルに描かれており、非常に現実味のある作品に仕上がっている。
さながらアクション映画ばりの戦闘シーンもあるため、感染症の恐ろしさだけを描いた暗鬱な作品にはなっていない。
様々な謎が好奇心をくすぐる中で、科学的に解説されるウミヘビや『珊瑚症』には、非常にリアルを感じ、決して人ごととは思えない感情移入もしてしまう。
ステージが進んだ『珊瑚症』患者に何もしてやれない無力さがまざまざと見せつけられ、非情な現実が突きつけられると、胸が痛む。
科学的なリアリスティックさと、『珊瑚症』を通した人との関わり合いが生むドラマ、ミステリーのように深い謎がある様々な設定。
読み応え抜群です!