珊瑚に侵食される人類のリアルと人間ドラマ

『珊瑚』と呼ばれる寄生菌の感染によって罹患する、不治の病『珊瑚症』。
あらゆる動植物に寄生して子実体を生やし胞子による感染を広める。
ステージ4からの回復は見込めず、安楽死かコールドスリープしか選択肢はない。

ステージ5になるとバイオハザードである。菌糸は肥大化し、コンクリすら破壊し、その凶器が宿主である人間よりも巨大化する。
主人公・モーズは、このステージ5になった患者に宿主の意識は残っていることを証明しようとしている。

そんな中、モーズはある事件をきっかけにして、オフィウクス・ラボと呼ばれる組織の「クスシヘビ」となる。
オフィウクス・ラボにいるのは、『珊瑚』を専門に研究しているラボが管理する特殊部隊・ウミヘビ。

特殊部隊・ウミヘビの正体とクスシヘビの役割。
寄生菌『珊瑚』を神からのギフトとする『ペガサス教団』。
モーズの研究と特効薬製薬。
謎に満ちた『珊瑚症』。

『珊瑚症』を中心とした科学要素がリアルに描かれており、非常に現実味のある作品に仕上がっている。
さながらアクション映画ばりの戦闘シーンもあるため、感染症の恐ろしさだけを描いた暗鬱な作品にはなっていない。

様々な謎が好奇心をくすぐる中で、科学的に解説されるウミヘビや『珊瑚症』には、非常にリアルを感じ、決して人ごととは思えない感情移入もしてしまう。
ステージが進んだ『珊瑚症』患者に何もしてやれない無力さがまざまざと見せつけられ、非情な現実が突きつけられると、胸が痛む。

科学的なリアリスティックさと、『珊瑚症』を通した人との関わり合いが生むドラマ、ミステリーのように深い謎がある様々な設定。
読み応え抜群です!

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