1章 シュヴァーベン
第9話 ユーディス・フォン・シュヴァーベン
遠くより声が聞こえる
「おまえはユーディスだ。。。」
呼ぶ声が聞こえる
「ユーディス?ユーディス?」
意識がハッキリしてきた
「おぉ、目が開いたぞ」
「クレア、よくがんばった!!」
「もう大丈夫だ」
「おめでとうございます。旦那さま」
「ほらあなたを見ていますわ」
「・・・」
「ん?ジルとは違うな。泣かないな。」
ピンときたわたしはオギャーオギャーと自分で泣いた振りをした
「気のせいか。。。」
自力で泣く振りをしないとダメなのか。。。と思った
30歳くらいだろうか?薄茶の髪のハンサムな男性と、その後には50歳くらいのところどころ白髪茶髪の女性、さらに後ろへ控えて同じ50歳のくらいメイド?、わたしは20歳くらいの金髪の女性に抱えられていた
「旦那さま、大奥さま、大事なお話が。。。」
メイドから声がかかる
わたしは話の内容から察し、この人がお父さん、おばあちゃん、お母さん、メイドさん?なんだと確認していた
「今は我々しかいない。話せ。」
「奥さまにはお話しましたが、お嬢さまの左手の小指に銀の指輪が生まれた時よりはまっております」
「あと。。。左肩に使徒の紋章が出ておられます」
困惑した様子でメイドは話す
「何ッ!?」
「でも、ノワールさまの紋章とは違うご様子でして。。。」
言われるやいなやお父さんらしき人はわたしの左肩と左指を確認していった
「俺たち以外にこのことを知っておるものはおらんな?」
「はい。わたしと旦那さま、奥さま、大奥さまの4人だけでございます」
「よいな、他の者には隠せ。」
「ですが旦那さま。5歳の祝福の儀の際に見つかってしまいます」
「オレリア神聖宗教国と和平を結ばんとするときに、使徒が現れたとなると要らぬ噂や国内どころか国外からもちょっかいが来る」
「もし仮にノワールさまの紋章であれば、ノワールさまの使徒を名乗る宗主のオレリアはどうする?ヤツらは僭称するなど不敬だ!神敵だ!とこちらを攻める名目にするのは必定。」
「オレリア神聖宗教国はヤドリギだ。国自体は小さいがまわりの国へ根を張り巡らせ手足のごとく使っておる」
「ドビ国との戦いの最中にオレリアからの指図で背後のサルーン法国を動かされるわけにはいかん」
「背後を突かせぬためにも王はオレリアと和平を結ぶことに全力をかけておられる。もしノワールさまの使徒だと分かれば宗主の座を保つ為に攻められ、必ずや殺されよう。一神に一使徒は子供でも知っておる。使徒誕生の噂が立つ前に潰しに来るはずだ。仮に他の方の使徒だったら、オレリアから交渉の材料に娘の身柄を要求されるだろう。ヤツらの拍付けの為に傀儡の見世物に使うのは目に見えている。」
「生まれたばかりの俺の娘だぞ。逆賊となろうともあのような強欲どもに指一本触れさせるわけにはいかん。」
「母上、この指輪と紋章のことをお願いいたします」
「わかった。調べよう。」
わたしはおばあちゃん?とメイドさんが出ていったのを目で見送った
「クレア。。。すまぬ」
「何を謝るのです。この子がノワールさまの使徒であろうとわたしの娘」
「あなたがランベルツ帝国の国賊となってもついていきます」
「すまぬ。。。」
「天にます、ノワール神よ。あまたを率いるローズル神よ。我らの娘ユーディスを護りたまえ。我らの勇智血肉はあなたさまのもの。何卒、我々のような小さきものにも慈悲深き心を。。。」
お父さん?とクレアさんは?手を合わせて祈りをささげる
わたしはノワールは目の前にいますと思いながら祈りを聞いていた
やがてお父さん?は出て行きクレアさん?と二人きりになった
「あなたのママですよー」
「さぁお乳を飲みましょうねぇ」
ボロンッと胸を出される
デカッ!漫画じゃん!と思ったら
「はいどうぞー」
と口へ胸を寄せられる
19歳になってまたお乳を飲むことになるとは考えてなかった
やはりノワールの力は吸われていて赤子ほどしか力がないらしい
おなかが膨れると眠くなり、微睡に落ちていった
ハッと目が覚めるとベッドの上だった
横を見るもクレアさん?が椅子に座り、編み物をしていてわたしが起きたことには気が付いてないようだった
ゆっくり周りを見渡す
豪華な部屋だった
わたしが寝ている天幕付きベッド、足側の壁には書棚が並び、クレアさん?の座る前にゴシック調のラウンドテーブルが見える。その上に置かれた花瓶には白薔薇のロサ・アルバが活けてあり、その奥に見える暖炉の火と重ると炎の中のロサ・アルバが猛々しく見えた
コンコンと部屋をノックされた
ビクっとドアの見たクレアさん?はすぐさまこちらを見てわたしと目が合った
「はい、どなた?」
ドアのほうへ声をかけながらわたしを護るように抱き、ベッドへと腰かけた
「奥さま。以前お話ししていたメイドのことです。コース伯爵さまからのお手紙とメイドたちを連れてまいりました。」
声の主が分かったのか、ホッとした様子で「どうぞ」と声をかけながら編み物をしていた椅子へと戻っていった
ドアが開いて3人のメイドが入ってきた
さっきいたメイドさんと。。。
デイジーがいた!
目が合った
「失礼いたします。コース伯爵さまからのお手紙です。ご確認を。」
クレアさん?は手紙を受け取ってナイフで開封し、読み耽る
途中まで読んでメイドに聞いた
「ノーランはなんと?」
「奥さまにお任せすると。さきほど旦那さまと大奥さまにはお目通りいたしました。」
「あなた達お名前は?」
立ち上がりわたしを抱きながらクレアさん?が2人に聞いた
「デイジーと申します」
「エニスと申します」
デイジーとエニス?を訝しむように上から下までみる
考え込むクレアさん?にメイドが聞いた
「お差し支えなければお手紙はなんと?」
「お父様からの推薦とその二方の身分も保証する内容だったわ」
「。。。いいわ。デイジーさん、エニスさんあなた達を雇いましょう」
「しばらくはそのモーラに仕事を習ってちょうだい」
「「ありがとうございます、奥さま。精いっぱい頑張らせていただきます」」
デイジーとエニス?は声を合わせてそう答えたがクレアさん?は後ろを向き顔も合わせず
「下がっていいわ」
とだけ言った
クレアさん?はわたしを抱き暖炉とは反対の窓辺へと向かい、つぶやく
「2人も?」
「タイミングが良すぎるわ」
「気に入らない」
クレアさん?は窓の外の雪の舞う冬空を見ながら思案していたようだったが、わたしの目を見て言った
「ユーディス、わたしの愛しの子。わたしたちが必ず護ります。」
帝国歴983年1月5日
ランベルツ帝国シュヴァーベン公爵家にユーディス・フォン・シュヴァーベンことノワールは生まれた
雪の舞う寒い日であった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます