第23話 冒険者ベルント
「あのー?大丈夫ですか?海賊に詳しい方を知りたいのですけど。。。」
わたしは固まっている受付嬢へ再度尋ねる
再度の声で気が付いた受付嬢は後ろに立つるーちゃんに注意を払いながらわたしへ話しかける
「あ、あぁごめんなさいね。海賊に詳しい方?」
「はい」
「申し訳ありません。ギルド側より冒険者の情報を話すことは出来ないのです。もし希望されるなら海賊に詳しい方希望として依頼を出すことが出来ますが如何しましょう?」
「分かりました。今回は遠慮しておきます。ありがとうございました。」
たしかにギルドの言い分はもっともだ
簡単に情報を教えて冒険者を危険にさらすわけにはいかない
それに依頼として出してもらわないとギルドの取り分がない
だが、わたしは依頼やめておいた
ウォルシーに長期でいるわけではない上に、まだ大々的に動くわけにはいかない
わたしたちは踵を返し、冒険者ギルドを出た
いつも領都では商人ギルドへ行くのだが港へ向かう
港へ向かい歩いていると後ろより声をかけられた
「すみません待ってください!」
わたしたちが振り返ると15歳くらいの男の子と同じくらいの女の子がハァハァと息を切らせていた
男の子は直剣を腰に差し、背中にラウンドシールド、戦士だろうか?
女の子は白のフード付きクロークに白いローブ、右手には身長ほどのスタッフを持っている
男の子はるーちゃんに言う
「あの、あのっ。。。」
口ごもって言い出せない男の子へるーちゃんは言う
「用がないならもういいかしら?」
振り返り歩き出そうとしたるーちゃんに意を決したように話す
「あ、あの僕に剣を教えて下さい!」
るーちゃんは足を止めもう一度振り返え男の子へ言う
「お断りいたしますわ」
うっすら分かっていたのだろうが、食い下がる
「ギルドでの剣を見ました。あなたなら僕を強くしてくれると思いました。強くなってランクを上げてお金を稼がないといけないんです。お願いします!」
「聞こえなかったのかしら?お断りいたしますわ」
るーちゃんが抑揚のない声で答えた
再度「早くランクを上げないといけないんです。お願いします」と頭を深々と下げる男の子と一緒に女の子も「お願いします」と頭を下げる
ハァとため息をついたるーちゃんは諭すように言った
「いいこと?まず第一にわたくしはお嬢さまの護衛が大事で手が離せない。第二にあなたたちに興味がない。第三にわたくしがあなたを教えるメリットがない。」
ストレートなキツい言葉に落ち込む男の子
可哀そうになったわたしは助け舟を出した
「何故そんなにランク上げを急ぐのか教えてもらえない?」
横からのわたしの声に怪訝な目を見せる男の子だったが、隣の女の子が口を開いた
「ランクを上げて稼がないと船が作れないから。。。」
「お、おい!エッダ!」という男の子を無視して女の子エッダ?は話す
フーンと思ったわたしは男の子たちへ言った
「そろそろお昼だから一緒にご飯どうかな?よかったらそこで話を聞かせてもらえる?」
「お嬢!」「お嬢さま!」と声が聞こえたが無視して、ゴスリングさんにお店を選んでもらう
ゴスリングさんが選んだ店は高級そうな外観の店だった
店中へ入ると個室へ案内される
男の子と女の子エッダ?はキョロキョロ見回しながらわたしたちと席に着いた
いつものようにメニューはわたしの好みを知っているデイジー任せる
椅子に座りもじもじしている女の子エッダ?と目があうと話しかけられた
「あ、あの、わたしたちお金が。。。」
「あぁ、お金はいいよ。わたしが誘ったんだから好きなの頼んで」
それぞれ注文してウェイターが出た後に聞く
「えっと、わたしはユーディス。この人がデイジー、その人がゴスリングさん、でその剣を習おうとしてる人がルビーさん。」
「それでランクを上げないと船が作れないんだっけ?」
男の子がわたしがるーちゃんが言ってたお嬢さまだと認識したようで怪訝な目はなくなっていた
「僕はベルントと言います。こっちは妹のエッダ。二人ともカッパー(E級冒険者)です。」
ベルントが言うにはお父さんが漁師だそうだ
仲間の漁師と漁中に突風にあおられ複数の船が転覆し、助かった船に辛うじて救助されたが船や装備一式が沈んだ
助かったお父さんは陸へ上がり仕事をしているが家族で食べる分で精いっぱいでとても新しく船を作れない
そのため新しい船の建造費用を稼ぐためにランクを上げ、上の依頼をやりたいのだそうだ
依頼もそうだがE級からD級へは昇級試験があり、それも含めて剣を学びたいが伝手もない
そのときるーちゃんの早業をたまたまみて弟子にしてもらうと思ったそうだ
「お願いします。僕に剣の指導をしてください。」
机に手を付け頭を下げるベルントにわたしは言った
「わたしこのゴスリングさんに剣を習っているの。よかったら一緒に剣練習する?」
「ゴスリングさんはC級だったよね?いいかな?」
わたしはゴスリングさんに確認する
「閣下とお嬢が良ければ」
「どうする?」
翌日朝、ベルントとエッダが別邸へ来た
流石にメンタルタイムルームへ連れていけないので庭へ案内する
領都の屋敷の庭に比べたら狭いがそれでも広い
妹のエッダの独り言が耳に入る
「やっぱり貴族のお嬢さまだったんだ。。。」
わたしは聞こえなかった振りをしてベルントに話しかける
「じゃさっそくやろうか!」
わたしが見る限りベルントは悪くないように見える
それを見ながらるーちゃんがポツリとこぼす
「剣が軽い。両側共隙だらけ。足つきが覚束ない。5点」
10点満点中5点ならまぁまぁかと思っていたら、100点中ですわと言われた
デイジーへ目を向けるも同じ意見のようで、剣を持つよりまず足の運びを勉強すべきですと言った
ゴスリングさんとベルントが剣の修練をしている中、わたしとるーちゃんとエッダはお茶を楽しんでいる
デイジーは外部の人間がいる為か、座らずにわたしの後ろへ付き添っていた
「エッダさんはベルントさんと二人でPT組んでるの?他にPT組んでる方がいたりは?」
わたしは緊張しているエッダに声をかけた
「は、はい。二人だけです」
「わたしたちはE級ですし、中々一緒に組んでくださる方がいなくて。いい方もいるんですが困った方も多いのでなかなか。。。」
「やっぱり難しいんだね。ところでエッダさんは魔法使いなの?」
「は、はい。いえ、魔法使いじゃないです。回復士です。」
ヒーラーかと思いながら聞く
「へー、どんな魔法使うの?」
「まだ未熟なのでライト(**聖属性最下級魔法・光球を頭上に出し、周りを照らす/熟練度に応じて消費マナ減少)とヒールとキュア(**聖属性下級魔法・毒等の体調不良を治す/熟練度に応じて効果上昇)しか使えません」
「魔法使いから攻撃魔法とか習って使えようになるといいんじゃない?」
わたしは何気なく言ったらデイジーから注釈が入る
「お嬢さま、善意で指導してくれる魔導士は剣士以上に稀です。対価がなくば関わりすらしません。普通は対価を払うか魔導書で会得するしかありません」
「あー、そうなんだ」
エッダへ目線を戻すと苦笑いのエッダがいる
「マリスさんいれば教えてくれそうなんだけどな」
わたしは呟くとデイジーに目配せした
---わたしが教えてもいい?
が、デイジーはダメだと首振った
デイジーが言うなら仕方がない
何かエッダにも手助けをしたかったが諦めた
わたしは魔導書をプレゼントするくらいは許可が出るかな?と思いながら紅茶をすすった
次の更新予定
2025年1月7日 12:00
公爵令嬢は掃除する おもち @omochi9940
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