第12話 領都アプラータ

マリスさんはマリス・リリーベルという名前で、はるか北の雪国から来たそうだ

「とても古い忘れ去られた場所です」と場所は教えてくれなかった

星を見て占ったり、作ったポーションを売ったり、たまに依頼が来て手伝ったりと隠者のような生活だったと笑って話してくれた

わたしは星からの啓示というものに興味があり聞いた

占星術をやって占っているとぼんやりと頭に響くのだという

だが今回ほど強いものは初めてで星からの使命だと思ったそうだ

1年間準備し、わたしが生まれてからは占星術をやりながら星の啓示を頼りに領都アプラータまで辿り着いた

領都アプラータについてから屋敷に啓示の巨星がいるのはすぐ分かったそうだが、屋敷への入館やアポイントをとる手段がなかったので困っていたが、過去にガヴァネスをした男爵家の伝手を辿ると父ノーランからわたしのガヴァネス募集の話が届いており、それに応募したとのことだった

屋敷へ入れれば誰か分からなくても父ノーランに嘆願して屋敷の皆を確認させてもらう予定だったが、わたしと対面してすぐに啓示の巨星と分かったそうだ

「あのときは会ってすぐにわかりました。使徒さまの魂に見とれていました」

と思い出すように笑顔で言われた

魂が見えるというのは実際に見えるわけではなくイメージとして浮かぶのだという

実際にどういうものかを口で説明するのは難しいらしく、申し訳ありませんと謝られた



わたしはゴスリングさんに剣を習い、マリスさんにはガヴァネスとしてこの世界のことや氷、雷魔法を習い、デイジーには裏での調査と闇魔法を習っていた

すでに魔法は氷魔法2つ、闇魔法3つの計5つ会得していたが知らない体で魔法を習った

マナの動かしが上手い為、覚えが早いわたしに「流石です。お嬢さま」と他の氷魔法アイスフィールド、フローズン、アイスジャベリンと雷魔法タッチアサンダー、サンダー、サンダークラウドを教えてくれた

だがわたしの異常な会得の速さと専任メイドのデイジーを見て何かを感じているようだった

氷の下級魔法アイスフィールド(**氷属性下級魔法・自身を中心に冷気を発生させる/熟練度に応じて効果範囲延長)

氷の下級魔法フローズン(**氷属性下級魔法・近距離の相手の足元を凍らせ移動不能にする/熟練度に応じて持続時間延長)

氷の中級魔法アイスジャベリン(**氷属性中級魔法・氷槍を生成し相手へ飛ばす/熟練度に応じて氷槍数増加)

雷の最下級魔法タッチアサンダー(**雷属性最下級魔法・しばらくの間、雷属性への耐性を上げる/熟練度に応じて効果時間延長)

雷の下級魔法サンダー(**雷属性下級魔法・雷を発生させ相手へ落とし、まれに麻痺を与える/熟練度に応じて麻痺効果発動増加)

雷の下級魔法サンダークラウド(**雷属性下級魔法・追尾する雷雲を発生させ雲下の相手へ定期的に雷を落とす/熟練度に応じて雷雲の滞在時間延長)


わたしに仕えると言ってくれたララとノアはエルフという見た目もあり、父預かりで筆頭魔導士グーグさんの弟子という仮の扱いになっている

その為、ガヴァネスの仕事とは別にマリスさんへ顔を変えれる変化のポーションの作成をお願いしたが、材料の1つである火炎草が足りず頓挫してしまった

火炎草はここよりはるか南の熱い地域に生え、抜いてしばらくすると枯れるとのことで、輸入もできず自分で拾いに行き調合する必要がある

今後の予定へと記憶にとどめた



マリスさんにもデイジーやゴスリングさんにも話したわたしの今後の希望を説明した

マリスさんは父ノーランと掛け合い、街の中までならという条件付きで外出の許可を取り付けた


わたしは勉強という名目だが、街へ出かけることが出来るようになった

短時間だが、デイジーに頼んで夜に何度か転移で抜け出したことがあったが昼間の街は違った

領都は賑わっていた

わたしは、デイジー、ゴスリングさん、マリスさん、と新たにゴスリングさん付きの騎士見習いリンツさんの5人で街へ出た

外出前デイジーは気合を入れて服を選び、髪をセットをした

わたしは街へ行けることに夢中で早く出かけたかったので丁寧に三つ編みを作っているデイジーを急かしたが、ノワールさまが外へ出て人々へご神体を晒すのに手を抜けませんと怒られた


わたしはみるものすべて新鮮で楽しんでいた

死ぬ前の日本とは違う、ファンタジーの街並み、見たこともない野菜だろうか?を売っている露店、ゴザを敷いて木工品や日用品らしきもの売る人、異世界なんだなと感じていた

それに明らかにどっかのご令嬢一派と分かる集団だったが人々は気にかけないようにしてくれている感じだった


わたしは祝福の儀がある聖堂へ向かった

自室からも見える聖堂は目の前へ来ると大きさが違った

ゴシック調の聖堂は生きている頃なら歴史建造物になりそうな趣があった

建物に圧倒されていると顔を知られていたのだろうゴスリングさんが司祭?から話しかけられた

司祭は?わたしたちを見てピンと来たのだろう

「お忍びだ」と言うゴスリングさんを振り切って聖堂へと走っていた

中も入りたかったが、「捕まると長くなるので行きましょう」と勧められた

帰ろうと聖堂前の広場を抜ける頃に後ろから「お待ちを!」と声がかかる

振り返ると先ほどの司祭?達複数人と立派な法衣に司教冠の司教が走ってきた

苦虫を噛み潰したような顔のゴスリングさんが対応に当たる

「お忍びだ」「ぜひ中で。。。」とせめぎ合いの中わたしは司教と目が合った



嫌な感じがする



デイジーの後ろへ隠れる振りをして耳打ちする

デイジーも気づいていたようだった


ゴスリングさんが折れない司教たちと戦う中、

わたしはデイジーにアイコンタクトをし、街中へ走った

「あぁー、お嬢さまー」

とデイジーがワザとらしく言い、追いかけた

ニヤっとしたマリスさんも追いかけてくる


背後の出来事に気づいたゴスリングさんとリンツさんは折れない司教たちを振り切り、焦った顔で追いかけてきた

わたしは街中へ入り、司教たちが見えなくなったところで振り返りゴスリングさんたちに「うまくいったでしょ」と笑みを見せた



わたしはゴスリングさんに冒険者ギルドと商人ギルドにも行きたい旨を言った

ファンタジーと言えば冒険者ギルドでお約束の場所だ

ゴスリングさんや、リンツさんから「お嬢さまのような方が足を踏み入れるような場所ではありませんぜ」と言われたが個人的に行ってみたかった

あと、この世界の食事は味が薄い

死ぬ前の御飯の味付けを知っているおかげか満足しない

わたしの家へ戻るときや恋しくなったときは夜デイジーにお願いして和食を出してもらい食べていた

父ノーランから塩は高く、砂糖、胡椒は貴重品と簡単には聞いたが商人ギルドで具体的に知りたかった


ゴスリングさんに渋々ながら案内してもらい冒険者ギルドへ着いた

2階建てで入口は西部劇の酒場でよく見るウエスタンドアで頭でイメージしていた通りの建物だった

「中に入りたい」とゴスリングさんへ伝えるが

「俺達もお嬢さまも怒られてしまいます。勘弁を。」

と言われ仕方なく引き下がったが、次は行く!と心に決めていた


冒険者ギルドから露店やお店を覗きながら商人ギルドへ向かう途中だった

わたしの後ろを歩いていたマリスさんがいきなり後方へ氷魔法アイスウォールをぶっ放した

氷の下級魔法アイスウォール(**氷属性下級魔法・時間がたつと消失する氷の壁を生成する/熟練度に応じて強度強化)

ジャキーンと大きな音がして建物と建物の間の路地をふさぐようにして地面より生まれた氷の壁は建物の2階へを到達するほどの大きなものだった

氷の壁の前に10歳くらいだろう男の子が腰を抜かし、震えながらマリスさんを見ていた

周りで見ているの街の人や集まってきた野次馬もマリスさんと大きな氷の壁に畏怖している

「相手を見てやることね」

「返してもらえる?」

といいながら男の子へ近づくマリスさんを見て、この子が掏ったんだとピンときた

「返します。許してください。お願いします。。。」

と頭をこすりつけ、財布とペンデュラムを差し出しながら謝る男の子のほうへ向かい何故掏ったのか聞いた

男の子曰く、家は日用品店で借金があるのだという

ゴロツキがたびたび家へ来て父親たちに迫っているのを見て借金がある知ったそうだ

魔法使いの人ならお金と高い魔道具を持っていると思って掏ったと話した


「家へ連れてって」


「お嬢さま!?」とマリスさんとゴスリングさんたちから声が飛び、わたしが主人だと気づいたのだろう男の子は

「案内しますので命だけは助けてください」

と泣きながら言った


街中で魔法をぶっぱなしたマリスさんと男の子は誰かが呼んだ衛兵に捕まったがゴスリングさんがわたしたちの身分を明かしすぐ解放された

男の子はキースといい、わたしが領主の公爵家令嬢だと知ると唖然としていた



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