第11話 祝福の儀までに
父ノーランは話しかける
「ゴス、お前に頼みたいことがある」
「お真の勇士、忠義を見込んでのことだ」
「ハッ、閣下」
「娘の専任護衛騎士の役をお願いしたい」
「本来なら5歳の祝福の儀終わってからが慣例だ」
「が、周りがきな臭い」
「ウェブは動かせん。このようなことを広めるわけにもいかん。頼む」
頭を下げながら話す父ノーランにゴスリングさんは笑顔で答える
「まこと名誉なこと。お嬢さまの御身はこの不肖ゴスリングが我が身に変えてもお守りいたします」
「すまん」
ゴスリングさんは角刈り、髭モジャの見た目通り熊みたいな人だった
40歳くらいだろうか?日に焼けた肌とマッチしていかにもな雰囲気を醸し出していた
だが見た目と違い話しやすい上に、わたしを引き付ける何かがあった
生まれは南の海事都市ウォルシーより東の漁村カーモモ
ゴスリングさんは結婚しておらず、弟シグルズとその家庭のみ
祖父よりその漁村カーモモと付近の領土を拝命し、領主だそうだ
今は本人が領都に在中する関係上、弟シグルズが漁村カーモモ領主代行をおこなっているという
わたしは祝福の儀と専任護衛騎士について聞いた
父ノーランが言うように5歳になると祝福の儀というものを受けるのだという
祝福の儀は2月1日と2日、帝都もしくは領都の聖堂で行われる
すべての子供は神よりの祝福を受け、特に使徒や聖人たる魂の持ち主へは天啓を下すのだという
「まぁ俺が子供の時は見なかったので天啓がどんなものかは不明ですがね」
---そういえばブランさんはどうやってわたしを使徒にしたんだろう。ホムンクルスを眷属にする時みたくアデューバメなんとかってやってなかったし。。。
あと、デイジーはどうやって眷属になった。。。?
とわたしの頭に謎が浮かんでいた
その祝福の儀の後に護衛騎士やガヴァネスや専任メイドをつけるのが慣例だという
「ガヴァネスって?」
わたしは知らない言葉に食いつき聞き返した
「あぁ、そうですね。住み込みの家庭教師みたいなもんです」
いい案を思いついたわたしはゴスリングさんへ聞いた
「お父さまへ言えば今からでもお願いできるかしら?」
さぁ俺にはなんともと言うゴスリングさんを無視して父の自室へ急いだ
わたしの目論見はガヴァネスをお願いする、今の時期はダメと断られる、かわりにデイジーを専任メイドへ引きあげる、ガヴァネスの代わりにゴスリングさんやデイジーから剣や魔法を習う許可を得る、あわよくば勉強の一環として街を見にいく許可をとり、さらに流れで押せれば帝都クージアと都市トゼリングと海事都市ウォルシーを巡りたいというものだった
「お父さま、お願いがございます」
「なんだい?」
娘からの頼み事に嬉しそうに父ノーランは答えた
「ガヴァネスをつけていただきたく思います」
断られなかった
考えが浅かった
父ノーランはわたしが生まれて紋章見た時より、祖母エルナと話し合って祝福の儀の後のことを考えていた
時期が多少早くなったが想定の範囲内のようだった
後日の面接の日はユーディーも立ち会いなさいと言われた
デイジーの専任メイドの件も許しが出た
だがデイジーはクレアさんの専任メイドだ
わたしから直接クレアさんへ許可を取るように言いつけられた
ガヴァネスが許可された為、剣や魔法を習う許可へ持っていく流れが取れず、無理に押し込んでも切り返されるのが分かっていたので剣や魔法を習う許可は言い出せなかった
最後のふたつは許可されなかった
ダメ元だったので仕方ない
まぁ想定の範囲内だった
断られるだろうガヴァネスに許可が下りたため、どんな人が来るだろうとワクワクしながら退出した
退出すると兄ジルベルトと鉢合った
「ユーディじゃないか」
「お兄さま」
兄ジルベルト6歳
父ノーランと同じ薄茶の髪色、吊り目の整った顔をしている
専任護衛騎士はハンナル、兄と剣の練習をしていたときに見たことがある
スラッとした体系の黒髪二枚目だった
専任メイドは顔は見たことあるが名前は知らない
ポニーテールに眼鏡の美人のメイドさんの印象
わたしはさきほどの話題を振ってみる
「お兄さまお聞きしたいことが。。。」
「なんだ?」
「祝福の儀はどのようなものでした?」
「お兄さまは去年受けられたと聞きました」
「司祭さまからノワールさまと帝国の話を聞いて、聖水を頂いた。ユーディが興味がありそうなことは起こらなかったぞ。」
そうですかと悲しそうに答えるわたしにジルベルトがフォローを入れる
「来年のおまえときはきっと天啓があるさ」
「じゃあな」
天啓とはどういうものなのか?なかなかいい情報が集まらない
兄と別れてからさっそく母クレアさんの所へ行き、デイジーをわたしの専任メイドへ異動のお願いをした
クレアさんはあなたが希望するならと承諾してくれた
わたしも嬉しかったが、デイジーは嬉しさが溢れているようだった
さっそく部屋へデイジーとゴスリングさんを呼んでこれからのことを話した
近々ガヴァネス予定の人の面談があること、ゴスリングさんに剣を教えてもらいたいこと、ダメと言われたが街へ出たいということ、帝都クージアと都市トゼリングと海事都市ウォルシーを巡りたいことを伝えた
都市を回るのはゴスリングさんは観光か?と思ったようだが人や情報を得たいのとデイジーの転移先を増やすためだ
本当は他家領都市も言いたかったが怪しまれる上に絶対許可が下りない為、帝都と領内のみにした
後日、父ノーランからガヴァネスの面接の日が決まったと呼ばれた
わたしの負担を考えて3人にするとのことだったが父ノーランにお願いして最終選考前の10人の資料を全部見せてもらった
わたしは資料をみて除外された一人が気になった
魔法使いのマリス
エルナおばあちゃんは〇評価だが父ノーランとクレアさんは評価なしのようだ
ガヴァネスの歴が少なく出自も不詳で男爵からの推薦1つのみだけだが、氷魔法、雷魔法、薬術、錬金術、占星術が使えるとのこと
わたしの好きな氷魔法と錬金術が使える点に高い評価を置いた
錬金術が使える人物がいれば役に立つ点が多い
デイジーを見るとコクンと頷き、同意のようだ
さっそく父ノーランにお願いし、父ノーラン達の選んだ3人と魔法使いのマリスの4人と面接することにした
面接の日になった
1人目に会った元宮廷魔導士というおじいさんは、すぐデイジーから×がでた
あとで聞いたら魔法の基本とするマナの取入れが上手くなく、宮廷魔導士だとしても学ぶ必要はないとのことだった
2人目はわたしから×を出した
推薦があった優秀なガヴァネスだそうだが視線が蛇のように絡んできて生理的に無理だった
嫌な感じがしており、ゴスリングさんからもアイツは裏があると警告を受けた
デイジーもコクン頷き、ダメだと一致した
3人目が魔法使いのマリス
ロイヤルブルーのローブと同色のいかにもな帽子を被った20歳くらいの女性だった
長い銀髪がローブの色と対比し、マッチしていた
父ノーランやわたしが質問しても興味がなさそうに「そうね」と「違うわ」としか言わない
ただわたしの目をじっと見つめている
外れだったかなと面接を終わり、退出を促したときだった
マリスさんは姿勢を正し
「5年前に星から啓示を受けました」
「次の年に巨星が生まれ出でると」
「わたしは巨星を助けるのが使命だと」
「あなたの魂はとても大きくとても深くとても暖かい、そしてとても輝いている」
「会って分かりました」
「。。。使徒さまですね」
これが永遠にも続く
わたしの使徒マリスとの出会いだった
外はやわらかな春の風が吹いていた
帝国歴987年3月1日のことであった
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