第10話 紋章
わたしは4歳になった
少しずつだかわかってきた
この家のことも帝国のことも世界のことも
そして次女が生まれ姉にもなった
シュヴァーベン公爵家は父の祖母エルナ55歳、父ノーラン33歳、母クレア26歳、兄ジルベルト6歳、妹リーラ1歳の5人家族だ
流石に公爵家だけあり、雇われ人は多い
執事のヴォルドン、おじいちゃんの代かららしい
我が家は家令はおらずヴォルドンが兼務している
メイド長モーラ、50人近くいるメイドをさばいているすごい人
筆頭騎士ウェブリュー、騎士ゴスリング、騎士ノーリン、騎士ハンナル、騎士ラス
筆頭魔導士グーグ、その弟子ワイス
父ノーランが授与したのが騎士ノーリン、騎士ラスで以外の3人は先代よりの騎士とのこと
わたしは騎士ゴスリング、筆頭魔導士グーグ、弟子ワースは会ったことがない
エルナおばあちゃんの命で出ており、別の大陸へ行ったとも聞いた
メイドにいたっては50人近くいる上にわたしが通るときは頭を下げているせいで顔がわからずデイジーとエニスとモニカしか顔と名前が一致しない
エニスはデイジーと共に入ったショートボブのメイドで至って普通
たまに見かける程度で会話もない
モニカは掃除中にバケツを引っかけてしまい、下にいたわたしへ水をぶっかけた過去がある
モーラにクビだと怒られながらクビだけはと泣いて謝る姿に同情して何事もなかったようして働いてもらっている
そのことがあってからはモニカとは話すようになった
最初は公爵家令嬢と扱われてたどたどしかったが今は壁がなくなったようだ
父親が亡くなり4人兄弟の長女で公爵家で働くモニカのお給金だけが唯一の糧となっており、お嬢さまのおかげでモニカは今もこちらで働かせていただいておりますと今でも言われる
モニカは領都アプラータの北西アルデノ森林そばのテルグル村生まれだそうで父親は木こりだったが、ある日4人組の冒険と共に案内役として森へ向かったが帰ってこなかった。救出隊も向かったが父親の斧と冒険者の物であろう割られたバックラー、折れたスタッフ、切り裂かれた鞄等が残っていただけで姿はどこにもなかったという。
「魔物に食べられちゃったんですかね?」
「お嬢さまにこんなお話はいけませんね。申し訳ございませんでした」
と悲しそうに語ったモニカをみてさらに気にかけるようになった
デイジーは最初のころはクレアさんに疑われていたがクレアさん付きのメイドの一人になった
デイジーは優秀だから同然だ
わたしは自分のことのように嬉しかった
クレアさんは今でもわたしがデイジーと話すのを訝しむときがある
流石にクレアさんは感がいい
わたしは定期的にホムンクルスのガス抜きにわたしの家へ帰らないといけない
深夜ノーランやクレアさんが寝ているときにデイジーが連れ帰ってくれた
デイジーには謁見で主から言われたことは伝えてある
星を正さないといけないことも
でもまだ家からは出れない
力を貯めるときですとも言われた
デイジーのいうことはいつも正しい
だが自分でわたしのお世話や髪のセットを出来ないことは不満そうだ
クレアさんがわたしを髪を触っていると不服そうな目で見ているときがある
ランベルツ帝国は大陸南部にあり、帝都クージア
シュヴァーベン公爵家はその南西部に当たる
公爵領主要都市は領都アプラータ、さらに西に都市トゼリング、南にウォルシー港を構える海事都市ウォルシーの3つになる
毎年かなり献金を行うことでオレリア神聖宗教国との和平はなった
父ノーランが自室で宰相と話しているときにあの業突張り共めッと怒っていたのを立ち聞きしてしまった
デイジーに父の自室を調べさせたところ戦争と献金でかなりの負担になるようだ
南東のドビ国との戦いも今だ続いている
小康状態であるが火種がくすぶっている
トビ国とはガトー山脈とで隔てられており、大軍でガトー山脈を抜ける唯一の主要道にクルス砦を築き、防衛ラインとしている
この道は帝都クージアへ通じる為に、クルス砦とガトー山脈沿いの主要道北側のヴィーリ侯爵家と主要道南側のクレアの実家のコース伯爵家で対応している状況だが長引く戦争でかなりの負担なっているようだった
わたしの公爵家もランベルツ帝国第二の港・ウォルシー港周辺の海にオレリア神聖宗教国との和平の為の献金と戦争によって負担が増大していることを嗅ぎ付けた海賊達の襲撃が頻発して父ノーランが頭を抱えていた
わたしは裏でオレリアが動いていると睨み、デイジーを転移で行かせようとしたが転移は一度行ったことのあるところしか行けず、この領都アプラータにも間者がおり、わたしを残しては行けないと断られてしまった
それとなしに聞くと父ノーランもオレリアを怪しんでいるようだった
手が足りない
わたしを助けてくれる人が欲しい
動いてくれる人が。。。
動けない歯がゆい日々が続く中
騎士ゴスリング、筆頭魔導士グーグ、弟子ワイスが帰ってきた
エルナさまエルナさまと執事ヴォルドンの声が響く中、気鬱としていたわたしはその声にひかれて部屋を飛び出した
2階から玄関ホールを覗くと5人が立っていた
今部屋にいるのは
わたし、エルナおばあちゃん、父ノーラン、クレアさん、角刈り髭モジャのおじさん騎士ゴスリングかな?、黒のローブで白い髭のおじいちゃんこの人が筆頭魔導士グーグだろうか?、同じ黒のローブに男の子がワイス?、あとは見当がつかないエルフが二人肩を寄せ合いながら周りを見ている
わたしは初めて見た耳の長いエルフに感動していた
エルナが話し出す
「グーグ、さきほども言ったが長いことすまなかったね」
「ノーラン達にも話してくれるかい?」
グーグが話し始める
「わしらはエルナさまの命でこの紋章と指輪を探しておったのじゃ」
懐より擦り切れてボロボロになった紋章と指輪の描かれた紙を出してきた
「指輪はすまぬ。分からん。装飾なぞない普通の銀の指輪じゃ。ダメじゃった」
「じゃが、紋章は分かるやもしれん」
「このエルフたちを連れ帰ってきた」
「ララとノアという姉妹じゃ」
「ワシらはウォルシーから船に乗り南のスーン大陸へと渡り情報を探し歩いた。誰も分からんかったよ。役に立たん情報ばかりでの。じゃがその途中ガストロフ王国王都にミューというよくあたる占い師がおると聞いた。かすかな手がかりでもとその者を頼ったのじゃ」
「ガストロフ王都?王都グロスターか?ここから半年はかかるぞ?」
「静かに、まぁお聞き」
エルナおばあちゃんが父ノーランを収める
グーグが苦笑いしながら続ける
「そのミューとかいう占い師でもこの紋章と指輪は分からんかった。じゃが光を指し示してくれた。王都より東の国境の村ラルムに光があると。」
「行く当てもないわしらはそれを頼った」
「村近くというところじゃった。野盗に追われ馬で逃げるこのララと出会った。野盗を始末し、この紙を見せると分かるかもしれない。実物を見ないとと言われた。まこと、ノワール神の導きじゃった」
「妹も捕まっておるから助けてほしいと願われ、その妹も助けた。エルフは捕まると売られるのでな。身を隠しながらバレぬよう戻ってきたのじゃ」
「グーグ爺、すまなかったな。ありがとう。ゴス、ワイスそなたらもご苦労だった。」
父ノーランは礼をしながら感謝を述べた
向きなおった父ノーランは紙を指さしながら二人に聞いた
「ララとノアと言ったか?」
「これが分かると?」
妹ノアは姉ララに隠れビクビクしているようだったが、姉ララは凛として答えた
「実物を見せていただけますか?」
エルナおばあちゃんはクレアさんへ目で合図した
クレアさんの膝の上に座らされていたわたしは体を横に向かせられ、袖をめくられた
「なっ!」「んぉ!」「がっ!」「あっ!」と4種類の擬音が飛んだことに笑いそうになった
「見ていただきたい」
父ノーランが言う
姉ララはヨロヨロと立ち上がりフラフラと寄ってきて腫物を触るような風に両手でわたしの肩を触り、涙しながら言った
「ブラン神の使徒の紋章です」
呆然とする父ノーランの代わりにエルナおばあちゃんは姉ララのもとへ行き頭を下げた
「話していただけぬだろうか?」
「わたしたちエルフには古いおとぎ話があります。ローズル神が世界つくり、昼はブラン神、夜はノワール神、二人の女神は神々のまとめ役。。。」
わたしはブランさんがまとめ役ねと思いながら聞いていた
父ノーランはグーグ達に4年間の動きと帝国と公爵家の現状を説明する
「状況が状況だ。そなたたちを今すぐには帰すことは出来ん。申し訳ないが。。。」
姉ララは心が決まった顔で言った
「村は散り散りになってしまいました。今更帰る場所はありません。わたし達は魔法の心得があります。出来るなら妹共々、使徒さまにお仕えしたく思います」
父ノーランが答える
「分かった。そなた達はシュヴァーベン家で雇おう。一先ずグーグ爺達と共にいてくれ」
「よいか。紋章の話、グーグ爺、ワイス、ゴス、あとそなた達も他言無用ぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます