第15話 ノワールとデイジー
9月になり、父ノーランとマリスさんが戻ってきた
ゴスリングさんへお願いして、7月の襲撃事件はわたしたちの秘密になっていた
あのあとデイジーに調べてもらったところ、キースの両親の日用品店を狙っていた金貸し屋の雇ったゴロツキ共の仕業だと判明した
金貸屋の従業員と眼帯の男が繋がっていたことも掴んだが、まだ上がいるだろう
おそらく借金を肩代わりしたと睨んだわたしを狙う身代金目的だと判断した
公爵家を狙うとは馬鹿だなぁと思ったが、ゴスリングさん曰く大きな家ほど外聞的なものがある為、金で済むならと払ってしまうところが多いとのことだ
特に領主の父ノーランが不在の間の犯行の為に計画的だろうとも話していた
だが逃げた男と眼帯の男は見つからなかった
領都を捨てたかも知れない
頓挫してしまった
わたしは頻度は減ったがあいかわらず街へ繰り出していた
大まかには冒険者ギルドへ行き、キースの日用品店で会話し、ご飯を食べた後、商人ギルドに集う馬車を見て珍しい輸入品を探す
だがいつも見るものばかりで簡単には見つからない
わたしは港のあるウォルシーで船から積み下ろしたばかりの輸入品を見たくなっていた
が、領都外は許可されないだろうし、襲撃事件がバレたら街への外出すら不許可になるだろう
わたしはデイジーと話した持ち込みの話を進めていた
トウモロコシとテンサイの絵をゴスリングさん、リンツさん、マリスさんへ見せた
トウモロコシは皆知らなかったが、テンサイはマリスさんが知っていた
砂糖の原料とは言わずに料理に使いたいと説明するがマリスさんからは
「食べたことがありますが、実は生でも煮ても苦味とエグ味が強すぎて食べられませんよ」
マリスさん曰く地元では葉の部分を長時間湯がいて食べているそうだ
冬前の葉物の食料だがそれでも苦いらしい
間違いないテンサイだ
今度持ってくる事に決めた
あと、キースの日用品店から購入したトマトが熟れ過ぎていた為、収穫しトマトのパスタを作った
麺はいつも行くカフェにお願いした
前にペペロンチーノもどきを食べたことがあったので麺があるのは知っていた
いや、唐辛子がなかったので正確にはアーリオ・オーリオになるだろう
単にパスタと名付けられたペペロンチーノもどきはニンニクとオリーブオイルのみで唐辛子のピリッと来るものがなく物足りなかった
わたしはトマトとニンニクとオリーブオイルとベーコンに近いイノシシの燻製肉と塩、胡椒でトマトベースのパスタを作った
トマトはペースト状になるまで完全には煮詰めず、形が残るくらいにした
本音を言えば唐辛子が欲しかったが仕方ない
わたしはまずゴスリングさん、リンツさん、マリスさんに出した
最初はトマトのせいで拒否していたがわたしが味見したのをきっかけに食べてくれた
胡椒があるおかげでかなりいい味に出来たと思う
マリスさんが酸味のあるトマトベースパスタを気に入ったようだった
気をよくしたわたしはエルナおばあちゃん、父ノーラン、クレアさん、兄ジルベルトにも試してもらった
エルナおばあちゃんとクレアさんの女性陣が気に入ってくれた
父ノーランはトマトは毒がある先入観と血の色の食べ物ということで中々口に入れてくれなかったが皆が食べているのを見て食べてくれた
兄ジルベルトは酸味が合わなかったらしくあまり口へ運んでくれなかった
今度は父ノーラン達男性陣が飛びつくようなトマト料理を作ってあげよう
わたしは事件のこともあり今日もゴスリングさんに剣を習っている
剣もそうだが立ち回りの練習が主だ
一息休憩になりわたしはデイジーの横に座り、耳打ちする
ゴスリングさんはリンツさんに練習をつけている
「デイジーにお願いがあるんだけど。。。」
「サイレント」
デイジーはお願いと聞いた瞬間、サイレント(**空間魔法・周りをドーム状に覆い、音を外へ漏らさなくする/熟練度効果無)を唱えわたしに続きを促した
「えーと、ブランさんのとこにいたときみたく、また一緒に剣や魔法の練習したいなと思って。でも、この世界から長時間抜けられないから昔漫画で見たメンタルタイムルームみたいなのを魔法で出来ないかなと」
デイジーはクスッと口元を隠して笑いながら
「ノワールさまなのですから創り出せばよろしいかと」
「たとえば中では1日が1年の時間の流れの空間を持つ、転移を発動させる魔道具とか。。。」
夜になり、わたしとデイジーはわたしの家へと戻った
わたしは中が1秒が1時間の時間の流れの空間に決めた
ただわたしの創り出すものは危険だ
他の人が使えないよう発動呪文も考えた
センスがない為、デイジーにお願いした
転移の使えるデイジーに管理してもらうように考えて、デイジーが持っていないと発動しないようにも考えた
デイジーが身に着けるものとして、違和感ないものと腕を組んで考えていたら左手小指の銀の指輪が目につく
閃いたわたしは同じ銀の指輪を創り出した
「デイジーお願いね」
デイジーへ手渡すと、両手で恭しく受け取り左手薬指へつけた
わたしは見ないふりをした
自室へ戻ってきたわたしたちはデイジーにさっそく発動してもらった
「Audentis Nox juvat.!(アウデンティース・ノックス・ユウァト!)」
デイジーの前に楕円の転移陣が現れた
転移陣の先は想像した通りの空間が見える
デイジーと並んで中に入ると、後ろの転移陣がスッと消えた
「スゴッ、ほんとにメンタルタイムルームだ」
「あっ、ところでさっきのアウンデンノックスなんとかって何て意味?」
「Audentis Nox juvat.、夜の神ノワールさまは大胆に振る舞う者を助けるという意味ですね」
「原文の格言を少し変更させてもらいました」
やっぱりデイジーに任せるのが正しい
わたしは創った空間の出入り口は小さな神社にした
神社の社から外へ出るとわたしの家と同じように夕焼けで何もない空間が広がっている
さっそくデイジーに指南を受ける
久しぶりにデイジーと立ち合うがやっぱりスパルタだった
「自分と同レベルの相手と戦う場合は相手が何をするか、何を考えているかを常に考え、先手先手で身体が動くようにしないといけません」
「相手が動いてからでは遅いです。このように。。。」
「それはかわしてはいけません。こうなります。」
はるか上のレベルのデイジーはそういいながら4歳のわたしをボコボコにした
デイジーはヒールでわたしを回復し、
「ノワールさま、休憩いたしましょう。紅茶をどうぞ」
本殿の階段に腰掛けて紅茶を飲みながらデイジーに聞いた
「デイジーは一番剣が得意なの?」
「得手不得手はありませんが、これを大事にしております」
デイジーが見せてくれたのは非常にシンプルな両刃のククリ2本だった
「前のノワールさまから頂きました。。。」
わたしは興味心より聞いた
「ねぇ、前のノワールはどんな人?」
「そうですね。博識で、理知的で、魔法の造詣も素晴らしく優しいお方でした」
思い出しながら答えるデイジーの横顔を見る
「ブランさんは創り出す力は一番だって言ってたけど」
「はい。私たちを生み出して頂いたおかげで今があります」
「今もお役に立てている実感があり、非常に幸せです」
「わたしも、デイジーがいてくれて助かってるから感謝してる」
デイジーは笑顔で答えをくれた
わたしは突っ込んだ質問をしてみたくなった
「去ったって聞いたけど、理由あったの?」
「さて。。。何故でしょうか。。。」
さぁ練習の続きをしましょうを言いながらデイジーは立ち上がった
わたしは聞いちゃマズかったかなと思いながらデイジーの背を追った
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