第14話 キース

わたしは父ノーランが不在なことをいいことに頻繁に街へ繰り出していた

いつものようにデイジーのセットの時間が長いのが気になるが言っても治らないのでもう諦めていた

外出はマリスさんもいない為、ここ最近はわたし、デイジー、専任護衛騎士ゴスリングさん、騎士見習いリンツさんの4人での行動だった

いつものように露店を見て回り、冒険者ギルドへ行く

いつもの流れだった「中に入りたい」「俺達もお嬢さまも怒られてしまいます。勘弁を。」が今回は違った

「お嬢さまには負けました。」

と、ゴスリングさんに諦め顔で言われた


わたしは根勝ちした!



ゴスリングさんを先頭に中に入るとファンタジー世界でよくあるイメージしていた通りの内部だった

中は広く、冒険者たちがたくさんいた

一瞥して仲間との会話に戻る人、仲間と食事を楽しんでいる人、酒を飲みながらこちらの品定めをしている人、デイジーをニヤニヤ見ている人、子連れか?とヤジを飛ばしてくる人、訝しんでこちらも見ている受付嬢。。。

ゴスリングさんも、リンツさんも冒険者資格があるらしく

わたしも「冒険者登録したい」と言ったが

「10歳になるまでは出来ませんし、きっと閣下がお許しになりませんぞ」

と言われた

仕方なく壁に貼られた依頼書をゴスリングさんに抱っこしてもらい見せてもらった

わたしでも出来そうな本整理の依頼や、スケルトン退治の依頼やロック鳥の肉の依頼など多種多様だった

抱っこしてもらい依頼書を見ている間にもゴスリングさんにヤジが飛んでいた

お約束があるのでは?と期待したが起きなかった


冒険者ギルドを出たわたしは10歳になったら冒険者登録すると決めた



わたしたちはその足でまたキースの日用品店へ向かった

キースはたまたま父親が外出中で母親と共に店番をしていた

わたしたちが入ってきたのが分かったキースは「よお」と気さくに声をかけてくれたが「領主さまのお嬢さまになんて失礼な言葉を!」と母親からゲンコツを受けていた

わたしは笑いながら「気にしてません」と言ったが、母親は平謝りだった

いつものようにお茶を飲みながら街のことや最近の話をした

さっきの冒険者ギルドの話をするとキースは「ほら」と言いながら胸から下げた鉄のプレートを見せてくれた

わたしが「何それ」と聞くと

「冒険者資格がある証拠の冒険者ランクのプレートだよ」

とため息をつきながら教えてくれた

F級・鉄(**冒険者ギルドに入ったばかりの新人用のプレート)

E級・銅(**ギルドマスターより新人を卒業したと認められたらギルドマスターより与えられる)

D級・青銅(**ギルドへ貢献し、中堅レベルと認められたらギルドマスターより与えられる/昇級試験有)

C級・銀(**ギルドへ高く貢献し、複数のギルドマスターより推薦あれば統括ギルドマスターより与えられる/昇級試験有)

B級・金(**ギルドへ非常に高く貢献し、複数の統括ギルドマスターより推薦あれば統括ギルドマスターより与えられる/昇級試験有)

A級・ミスリル(**不明)

まだ上もあるらしく調べたがよく分からなかったとのことだ

ワザとらしく鉄のプレートを見せてくるキースに最下級と言えど、わたしが手にすることの出来ない鉄のプレートを持っている彼ににうらやましさを感じた


「最近あの美人の魔法使いのねぇちゃん見ないな」

とキースからふいに聞かれた

わたしはマリスさんがウォルシーへ行ってることを説明し、なぜか?と聞いた

「今まで興味なくて気にしなかったけど魔法書と魔道具の店があったから案内しようかと思って」

と、キースが答えた

わたしは魔道具が気になったのでゴスリングさんにお願いして行くことにした

キースは店番で動けないのでゴスリングさんが店の場所を聞いていた




キースの店を出るとお昼過ぎだったのでメイン通りへ出て、カフェでお昼を食べる

頻繁に街へ繰り出していた成果もあり、食事はこの店が一番おいしいと思っていた

わたしとデイジーはいつもの紅茶とサンドイッチ、ゴスリングさんとリンツさんはパンとステーキだった

以前ステーキを少しもらったことがあるがやはり胡椒のせいだろう物足りなかった

わたしはいつか胡椒の効いたステーキを食べさせて驚かせたい!と考えていた

やはり胡椒と塩と砂糖は優先課題だ


一息ついてゴスリングさんに案内され、魔道書の店についた

かなり歩いたのでメイン通りからは離れているのだろう

キースはよくこんな店を見つけたものだと感心しながら中に入った

若干カビ臭く薄暗く古めかしい店内だ

「いらっしゃい」と老婆の声がした

老婆は私の姿を見つけると声をかけてきた

「こんな小さなお客さんが何をお探しかね」

ビクッとしたわたしを見てデイジーが横から「魔道具を見たいのですが」と答えてくれた

「そこにあるのがすべてじゃ。見てっておくれ」

と老婆はわたしを見て言った


魔法書は見てもよく分からなかった

やはり専門のマリスさんに見てもらったほうがいい

魔道具はなんの役に立つかわからないものや魔法が使えれば解決しそうなものが多かったが、わたしは1本のスタッフに目が留まった

わたしの身長では大きすぎてかわりにデイジーが持ってくれた

「それはアビサルスタッフと言われてるものじゃ。ウォータードラゴンの力で水と氷魔法を増幅してくれるというが真偽はわからんの」

それを見ていた老婆より声がかかる

「買うのかい?」

デイジーを見るとコクンと頷いたため、銀貨2枚でスタッフを買った

デイジーの見立ててでは本物らしい

いい買い物をしたと思い、魔道書の店を出た




わたしたちは屋敷へと戻る為、路地を歩いていた


デイジーがギュッと手を握った



「貴族様がこんなところを通るのはやめた方がいい」

前から4人、後ろから3人の男が現れた



「メイドとガキは捕らえろ。護衛は殺せ」

前方の左目に眼帯をした男が吐き捨てた

ゴスリングさんは「リンツッ!」と言い剣を抜き前方へ切りかかった

リンツさんは逆の後方へと切りかかった

ゴスリングさん初撃で1人を切り倒し、2人と睨み合っていた

2人の奥には仁王立ちでゴスリングさんと仲間の2人見る眼帯の男

逆にリンツさんは3対1の状況睨み合っていた

リンツさんは左の敵からの一撃を剣で受け、真ん中の敵からの一撃をかわしたところで横からタックルを受け建物へ飛ばされた

リンツさんがやられたの見ていたデイジーは持っていたスタッフを置き

「お嬢さまは目を隠してお待ち下さい」

と飛んできたリンツさんのショートソードを拾いながら言った

ショートソードを持ってゆっくり歩いてくるデイジーに男どもは

「お嬢ちゃん、あぶねえもんは捨てたほうがいいぜ」

「ほら?ケガしちまうぜ、ハハハ」

ゴスリングさんからは

「クソッ!お嬢、逃げろ!!」

と声が飛んだ


だが、左の男が言ったセリフがデイジーの逆鱗触れた

「あんたとそこの嬢ちゃんはしっかり可愛がって躾けてや・・・」

セリフを言い終わる間もなく左の男の首から上が消し飛んでいた

セリフが途切れたのを不審に思った二人が横を見ると血飛沫の上がる首のない仲間が立っていた

「ゴミがッ」

とデイジー吐き捨て、残りの2人も構える隙も与えず2撃で切り捨てた

あまりの早業に前方で見ていたの左目に眼帯の男は「チッ」と舌打ちし姿を消した

ゴスリングさんと対峙していた2人も逃げ出したが1人はゴスリングさんに背後より切り倒され、一人は逃げていった



わたしは震えて動けなかった

あんなに剣や魔法を練習したのに動けなかった



「お嬢さまもう安心です。帰りましょう」

わたしは抱きしめられ優しい声で話すデイジーにしがみつき、情けなくて泣いた

「わたしがんばるから、デイジーを守れるようにがんばるから。。。」



ゴスリングさんがわたしを抱きしめるデイジーの近くへ来た

「あんた。。。」

「わたしはただのお嬢さまのメイドです」

ゴスリングさんは笑顔で答えるデイジーに

「そうか。。。」

と言いそれ以上は聞かなかった



リンツさんは左腕と腰の打撲で、1ヶ月の療養となった



帝国歴987年7月20日のことであった

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