第27話 メルダース海賊団エリー

さざ波亭はウォルシーの街入口付近のメインロード沿いにあった

別邸の執事曰く、古い店構えだが料理はおいしく人気のお店なのだという

メモにはなかったがわたしのデイジーとるーちゃんの3人だけで来た

ゴスリングさんたちは別宅で待機してもらった

わたしたちは10分前に店へ着き、店内へ入る

店主だろうか?カウンターの男が皿の拭き掃除をしながらわたしたちをジロっと見て言った

「ランチは終わったよ。夜は17時からだからまた来てくれ」

「15時に待ち合わせがあるんです」

「お嬢ちゃん名前は?」

「ユーディスと言います」

「その奥のテーブルだ」

わたしは奥のほうを見る

最奥に茶髪のポニーテールの人が座っており煙が上がっている

反対向きへ座っているため顔は見えない

店主?に「ありがとう」と言い、奥のテーブルへ進んでポニーテールの人へ声をかけた

「こんにちわ。ユーディスと言います。エリーさん?」

「座りな」

「あと、お供は出てってもらえるかい?」

わたしは対面に座り、デイジーたちには外で待ってもらうようデイジーに目で伝える

コクンと頷きデイジーたちが退店し、店内はわたしとエリーさん?と店主?だけになると口を開いた

「さて、あたしに噂の公爵令嬢・ブラン神の使徒さまが何用かな?」

「貴方がエリーさん?」

日焼けしているが鼻筋が通ってツリ目

パイプを咥えたポニーテールの美人に再度聞く

「エリー・メルダースだよ。お嬢ちゃんが呼んだんだろう?」

「ええ」

「あぁ、ガン爺からは何も聞いちゃいないよ。あたしは自分の目で確認しないと気が済まないタチなんでね」

わたしはガンさんに話したウォルシー近海の海賊で父が困っている点と香辛料の輸送ルート恒久化の目的を説明する

その為の海賊掃討に手を貸してほしい旨を話した

黙って聞いていたエリーさんが口を開く

「面白いお嬢ちゃんだね。海賊を潰すために海賊と手を組むってのかい?」

「ダメでしょうか?」

「お断りだね。仲間を売る気はないよ」

上手く言葉を引き出して心の中でニンマリした

「あら?メルダース海賊団は海賊の掟を守るウォルシーの鷲と聞いていますわ?仁義のかけらもないヤツらと仲間意識があるとは思いませんでしたわ」

わたしは畳みかける

「それにこのまま行けば巨大なヒューイ海賊団に飲まれてメルダース海賊団は吸収されてしまいます。貴方のお父様が育てた海賊団はなくなり、ウォルシーの海はヤツらのもの。動くラストチャンスだからわたしに会って頂けたのでしょう?」

「・・・。」

わたしはエリーさんへ笑顔を向ける

「チッ、食えない娘だね」

「ありがとうございます」




「いいかい?ヒューイは3つのデカい海賊団を束ねている。シップ(**3本以上のマストですべてに横帆が張られた大型軍艦/戦列艦含む)はないけど、ブリガンティン、スノー(**2本のマストにメインセイルが縦帆と後部のスノーマストに縦帆が張られた高速船)、スクーナー(**2本以上のマストすべてが縦帆に張られた高速船)が多数の大船団だ。うちにあるのはブリガンティン2隻とスノー1隻の計3隻。だけど人が足らないから2隻しか動かせない。戦力差は天と地だよ?」

「あと、やるとしてもわたしはタダじゃ動かない。手を貸す条件だ。ウォルシー沖にわたしの島がある。そこの保証が一つ。あんたの親父の保証でいいさ。二つ目がメルダース海賊団の命の保証だ。海賊は縛首だからね。あと手間賃で1大金貨出しな。この三つは譲らない。」

「・・・。」

「一旦始めるとどっちかがつぶれるまで終わらない。よく考えるんだ」

「父に相談します」

考える素振りを一旦見せてわたしは言う

「あと船を譲ってもらうことは出来ますか?」

エリーは頭を掻きながら呆れたように言う

「お嬢ちゃん、あんた話を聞いてなかったのかい?圧倒的に不利なんだよ?」

わたしは笑いながら

「あら?父に相談するとは言いましたがやめるとは言ってませんよ?それに戦いは数では勝てません。それで船はどうですか?」

「ブリガンティンを1隻1大金貨で譲ってやる。どうせ飲み込まれたらヤツらに渡っちまう船だ。旧式で移動用にしてたから装甲板を貼ってねえがいいか?」

「構いませんが、合わせて船を知っている方を貸していただけると。。。」

「分かった。よし、お嬢ちゃんは親父さんと話がついたらガン爺に伝えてくれ」

そう言うと立ち上がって青のフロックコートを翻し、店を出て行った

取り残されたわたしも立ち上がって出ようとしたがお代が気になり、店主?へ代金を聞いた

「ん?誰か居ましたか?お嬢ちゃんも誰も見てないでしょ?」

わたしは意味を理解し、お辞儀をして店を出た

店を出たわたしに気づいてデイジーたちが寄ってくる

何か魔法を使ったのかデイジーたちはわたしたちの会話を知っていた

あわせてるーちゃんは船と聞いてかワクワクしているのが顔に出ていた

わたしたちは別邸に向かって帰路へとついた

わたしは歩きながら考える

「何かお悩みが有りますか?」

デイジーから言われ、わたしはデイジーの顔を見てポツリと呟いた

「お父さまへの説明が難しいね。下手をするとわたしが家に閉じ込められちゃう」

「海賊との戦いとなるとそうなさる可能性は高いかと。しかも数字上は不利な戦いだけに。」

「何かいい手はないかな。でもここでウジウジ考えてても進まない。どちらにしろ一度アプラータへ戻るわ」





わたしは父ノーランの部屋にいる

父ノーランは腕組みしながら口を開いた

「話は分かった。条件の保証の書簡は出そう。2大金貨も用意しよう。だが海賊退治行くのは許可出来ん。」

「お父様!」

「聞け。帝国海軍はトビ国方面より動かせん。かりに動かしたとしても帝国海軍がいると知れば海賊どもは逃げるだろう。援軍もない不利な戦いだ。危険過ぎる」

「危険なのは承知です!試作品ですが対船用の武器を作りました。効果を発揮するはずです。わたし以外には動かせないようになってますから行きたいんです」

「武器?どんな武器だ?」




「お嬢さま。策が一つあります。」

「言ってみてデイジー」

「お嬢さまが船にいないといけない理由を作ればいいのです」

「それは分かるけど、理由がないのよ」

「例えばお嬢さましか使えない海賊船用の武器がある!とか」



わたしはあらかじめ描いてた絵を説明する

現代で言えば榴弾砲だ

弾薬を広範囲の対艦船用にクラスター弾をモチーフとした

クラスター弾内の多数の子弾へ魔法を閉じ込め、面制圧を狙う

「魔砲と名付けました。この筒の中に弾を入れ発射し、船を攻撃します。この筒の下部にはウインドバースト(**風属性中級魔法・指定した場所に突風を巻き起こす/熟練度に応じて威力増加)の魔法陣が組み込まれていまして、狭い筒内で発動し、圧縮されたウインドバーストは弾を押し出し発射させます。この弾は特殊で中に多数の弾が入っています。それ一つ一つに魔法が閉じ込めてあり、これがポイントとなります。発射された弾は一定後に破裂して中の弾は、空中で一帯にバラバラに降り注ぎ船や海面に当たると中の弾が割れ、閉じ込めた魔法が飛び出し攻撃するという仕組みです」

父ノーランは唖然として聞いている

「か、可能なのか?」

「ルビーさんとマリスさんと試案して作りました。ですがこの砲の部分の材料が貴重な為、一つしかありません。ですからわたししか動かせないようにしてあります。」

「実物を見れるのか?」

「見れますが弾を改良中の為、試作の弾しか撃てません」

コンコンとドアがノックされ、ギィとドアが開く

「わたしたちも見ていいかい?」

わたしは振り返り、父ノーランは口を開く

「母上!」「エルナお婆さま!」

ニヤッと笑いながら立つエルナおばあちゃんと筆頭魔導士グーグがいた

父ノーランはエルナおばあちゃんとグーグをソファへ案内する

座ったエルナおばあちゃんは口を開く

「声が漏れててね。立ち聞きしてしまったよ。悪かったね。」

「構いません」

「海賊退治に出るんだろ?わたしとグーグたちも出よう。」

「母上!?」

エルナおばあちゃんは言う

「帝国と領内がこんな状況の時に家でじっとしていられない。ドンと構えてるのは領主のノーランだけでいいんだ。カールにキャラック船でも一隻回してもらって改造すれば戦力になるかい?」

「一隻でも欲しいです。船員も足りません。」

「ノーラン。ユーディの言った通り動くなら今しかない。東のトビ国は今だ火種が燻っている。すぐ西にはサルーン法国とその背後のオレリア神聖宗教国のペテン師たち。オレリアとは金を払って偽りの和平を結んでいるだけでいつでも手のひらを返す。そして南のオレリアに焚きつけられた海賊。さらに北のディルウィ王朝もキナ臭い噂がある。どこも友好とは言えず四面楚歌だよ。どの国も虎視眈々と帝国の肥沃な領土を狙ってる。南の海賊だけでも殲滅しないと次はない。それにはユーディとその武器が必要なんだよ。」

「ですが。。。」

「まずはユーディの言ったその武器をみせておくれ」

エルナおばあちゃんにわたしはコクンと頷いた






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