第6話 拝謁1
「ブランさん!お久しぶりです」
そう言いながら振り返った
あの日しか会ってはいないが懐かしい声だった
「拝謁の日が決まりましたの」
「5日後の地球でいうところの1月1日ですわね」
「その日に主だった者を集めての評定があります。その前にお会いになるそうですわ」
「あとあなたの仰られていた件も上申いたしましたわ。主は直接会って決めるそうです」
まずは前進と思いながらブランへ感謝を述べた
「ありがとうございます」
「あー、服装とかはどういうものを着ていけば。。。」
ブランは笑みを浮かべて答える
「主は魂をご覧になります。服など今着ているもので十分ですわ」
「わかりました」
するとフッと真顔になったブランが言う
「一点だけ。謁見の間へ入ったら床の太陽のシンボルの手前まで進み、そこで平伏なさい。床の太陽のシンボルを超えてはなりません。あと主がお入りになられて、出られるまで何があっても、何を言われても顔を上げてはなりません。言われたことに素直に答えなさい。」
「これだけは絶対に守りなさい」
わたしは一点じゃないじゃないと思ったがそれよりこちらが気になる
「もし、顔を上げたら?」
「消滅します」
ブランは笑顔でとんでもないことを言い出す
「さきほど申し上げた点だけ気を付ければ、そのように気負わずともとって食べたりするような主ではありません。」
「安堵なさい。わたくしもその場へ立ち会うよう申し受けておりますので」
考え込む私を尻目にブランは言う
「他になければまた当日迎えに参りますわ」
「ではまた。。。」
ブランはいつものようにカテーシーをしながらスッと消えた
膠着したままのわたしを解きほぐすようにデイジーから声がかかる
「ノワールさま、紅茶でもいかがでしょう」
椅子へ座り、デイジーの紅茶をいただく
美味しい
膠着と不安が解けていくようだった
「このデイジーも2度ほど拝謁いたしましたが、ご無体されるような御方ではありません」
落ち着いたわたしは気になった太陽のシンボルについてデイジーへ問う
コクンと頷いたデイジーはいつものように無から紙とペンを出してきて描き始める
デイジーに描いてもらった太陽のシンボルはどこか見覚えがあった
引っかかったので思い出そうとするがもやがかかったように思い出せない
意味があるのだろうか?そのうち思い出すだろうか?
でも平伏する位置と頭を上げたら消滅することは覚えた
ブランの言うとおりに当日の服もデイジーへ任せることにした
そして当日を迎える
デイジーは普段と変わらない服装を用意した
ブランのようなドレスかと気にしてはいたが、杞憂だった
デイジーから衣装を合わせて確認したいとマネキンとされたときに着させられたことがある
お似合いで御座いますと目をキラキラさせながら言われたが、あんな動きにくく、キツイものは二度と着るかと思ったものだ
黒のコルセットベストに白のキャバリアブラウス、黒のキュロットに茶色のロングブーツを履いたいつもの剣の修練の服装に安心する
わたしは比較的動きやすいこの服装を気に入っていた
前から思ってはいたがデイジーはわたしの髪を扱うのが大好きなようだ
セットが終わると毎回鏡で髪型のポイントを説明してくる
わたしはおしゃれに目覚める前から病室へいたので聞いてもピンとこない
前にデイジーに大変だから今日は後ろでくくるだけでいいよと言ったことがあるが笑顔で無視された
髪もデイジーの好きなようにさせている
とりあえず今日はシニヨンにされてしまった
「準備で出来てらっしゃるかしら」
いつものようにスッと声がかかる
「今日はよろしくお願いします」
わたしは慣れた声へ向かって頭を下げる
「結構。では向かいましょうか」
「お帰り、お待ちしております」
ブランはわたしの手を取り、何かを言うとスッと視界が消えた
わたしが最後に見たものはデイジーがお辞儀していた瞬間だった
2、3秒くらいだろうか?スッと視界が開ける
視界が明けたところは石畳へひかれたレッドカーペットの上だった
レッドカーペットの先のほうに2Mくらいの両開きっぽい扉が一つ
周りを見ると天井を支える装飾の施された円柱が等間隔で並んでいる
よくあるファンタジーの宮殿内の広間の感じだが一点だけ違う
ブランの家と同様に見渡す限り先まで壁が見えない
石畳と円柱が果てしなく続いている様は気味が悪かった
「いらっしゃい」
扉の前にいるブランから声がかかり、我に返る
急いで扉へ向かいブランの後ろへ並ぶ
笑みを浮かべながら来たことを確認したブランは前を向き直ったが思い出したかのように振り返った
「太陽のシンボルを超えずに手前で平伏して主が出られるまで顔を上げぬこと、言われたことに素直に答えること、覚えてらっしゃいますわよね?」
わたしは「はい」と答えようとしたがのどがカラカラで「ひゃひ」と声が出てしまった
ブランは満足そうに扉へと向きなおり、フゥと息を吐いた
それを見てわたしも大きく息をする
「第二位神・惑星管理神統括ブラン、お目通りいたしたく参上いたしましたわ」
スーっと音もなく静かにドアが開く
わたしは勝手に勘違いしていた
ファンタジーとかでよくある壮大な玉座をみたいなものを
中は20畳のリビングくらい大きさで真っ白
中心の床には教えてもらった太陽のシンボルがあり、その奥にバロック調の椅子が一つあるだけ
わたしはまた不思議に空間をみてしまった
ブランが入ってすぐ扉の横へ向かい立ち直ったのが気配で分かった
扉を超え部屋へ一歩足を入れると空気が違う
入るとすぐ額と脇から汗が出てくるのが如実に分かった
空気が重く顔を上げられない
わたしは心の中でブランに言われたことをつぶやきながら太陽のシンボルの手前へ歩き進める
---太陽のシンボルを超えずに手前で平伏して主が出られるまで顔を上げぬこと、言われたことに素直に答えること太陽のシンボルを超えずに手前で平伏して主が出られるまで顔を上げぬこと、言われたことに素直に答えること太陽のシンボルを超えずに手前で平伏して主が出られるまで顔を上げぬこと、言われたことに素直に答えること太陽のシンボルを超えずに手前で平伏して主が出られるまで顔を上げぬこと、言われたことに素直に答えること
顔を下げたまま進むわたしに太陽の金のふちが視界に入る
大きく息を吸いこみ一呼吸おいてから平伏する
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