第21話 襲来
わたしは6歳になった
春先に去年と同じようにテンサイ、カブ、トマト種まきを行った
今年は砂糖の原料のテンサイと需要が上がったトマトは去年と比にならないくらい種付けが増えた
テンサイは極秘だがトマトは領都内の家でも植えているのが見かける
食用になる上にそんなに手間がかからないトマトが人気になったようだ
わたしは砂糖のテストもかねて、プリンを作った
この世界では冷蔵庫が存在しない為、冷やす作業が大変だった
作ったプリンの粗熱を取るためにカップごと水へつけてから氷水へつけなんとかプリンを固まらせた
家族へ食べてみてもらったがクレアさんと兄ジルベルトと妹リーラが大変気に入ったようでまた作ってほしいと頼まれた
特にクレアさんから毎日作ってもらってもいいとまで言われた
あと、4月から入学する兄ジルベルトが帝都へ旅立っていった
付き添いは専任護衛騎士ハンナルさんと専任メイドのポニーテールに眼鏡のメイドさんの2人
以前は知らなかったが名前はウルスラさんと言い、結局話したことはないままに帝都へ行ってしまった
妹リーラも3歳になった
リーラはわたしや母クレアさんと同じプラチナブロンドの髪色だ
3歳にして可愛く、将来絶対美人になると思った
リーラもプリンにぞっこんで何度か餌付けをしたからか家族で一番懐かれてしまった
お姉様!お姉様!と懐いてくるリーラに姉妹のいなかったわたしはさらに愛情を注いでしまい、毎日のように私の部屋に入り浸るようになってしまった
が、わたしは今問題が起きている
「リーラさんもユーディスさんに似て可愛いですわ」
「わたしもルビーさん好き!いい匂いするし、キレーな服だし、かわいい!」
「まぁ!流石はユーディスさんの妹!」
「リーラさん、わたくしのこともルビーお姉様とお呼びになるとよろしくてよ」
わたしはルビーさんことるーちゃんとリーラの会話の眺めつつ、溜め息をつきながら紅茶を口に含んだ
例の評定から一カ月くらいしてからだろうか
わたしがいつものようにマリスさんから授業を受けているとあたまに緊急!緊急!と念がきた
初めての経験の上、鳴り止まない警報にただ事じゃないと思ってマリスさんにトイレにと断り、デイジーを連れ出して経緯を説明した
デイジー曰く、わたしの家のホムンクルスではないか?という事で至急家に帰った
家には約二名がおり、一人は紅茶を一人は緑茶とぜんざいを飲みながら火付盗賊改を見ていた
「夕さん、この劇の長官の方素敵ですね」
「わたくしはこの伴侶の方のドレスがいいですわ。夕お姉様も着た事ありますの?」
焦るわたしをそっちのけで感想を言う二人
「いや、そんな事じゃなくてですね。緊急緊急って鳴ってるから来たんですけど」
ブランさんがテレビからわたしへ顔を向けて言った
「主さまより、願いがあり代理で参りました」
わたしは緊張した思いで続きを聞く
ブランさんは文を取り出して勅使のように文を持って読み上げる
−ノワールよ。ルージュがそなたの星へ出入りする許可を求めておる。お前の手助けがしたいそうだ。今まで褒美を求めることのなかったルージュの初めての要求だ。お前にも考えが有ろうが良ければ許可を出してやって欲しい。よしなに頼む。
「以上となります」
ポカーンとするわたしにブランさんがさらに聞く
「如何されますか?」
「如何と言われても主さまがいいならわたしは構いませんけど。。。」
「やりましたわ!これでお姉様と一緒にいれて、お手伝いすることも出来ますわ」
諸手を挙げて立ち上がるるーちゃん
そして、眉をピクピクさせ怒っている横のデイジー
フッと以前のお茶会を思い出す
この娘はわたしが家にいないことにショックを受けていた
ユーフォリアで生活していることを知った
でも何故急に用事があると帰った?
もしや急に切り上げたのは主さまへこのお願いをするためか?と考えが進んだ
マズイマズイマズイマズイマズイ。。。
前回のドレス事件で地獄を見ている
この二人が一緒に居るとなるとまた火の粉が飛んでくる
いや、火の粉程度では済まないだろう
すでにデイジーが噴火しそうなのでるーちゃんへ釘を刺す
「あー、でも自分の星のことは大丈夫なの?家に居て管理しないとダメだし、主さまの評価に関わるところだからわたしところに居るのはマズいんじゃないかな?」
いいとこを突いたのだろう、ハッとした顔を見せ苦虫を噛み潰したようにるーちゃんは話し出す
「確かに。。。お姉様の言う通り、毎日お姉様の星に居るのはマズいですわね。折角お姉様からご許可を頂いたのに、評価が下がってご褒美が取消しになるのは以ての外。。。」
釘を刺して正解だった、この娘毎日居る気だ
わたしはさらに二の手を出す
「あと、わたしの家は公爵家だからそう簡単に一緒に居るのは難しいと思うけど。。。」
「その点は大丈夫です。ブランさんにお願いしてありますし、夕お姉様にご迷惑はおかけしませんから!」
笑顔で返され、わたしの二の手は失敗してしまった
すでに手を回していたようだ
ここら辺が落としどころか?というところを攻める
「るーちゃんも管理神だから自分の星を第一に考えないと。そんなに頻繁に来てもらうと逆に迷惑かけちゃうから」
「ゆ、夕お姉様!そんなにもわたくしのことを考えて頂けるなんて。」
「分かりました。毎日は諦めます。どのくらいにするかは検討いたしますわ。」
わたしは最悪は回避できたことにホッとした
「ブランさんの案とどのくらいの日数にするかと決まってから伺うことにいたします。楽しみですわ!」
胸の前で手を合わせ、こちらを見ながら笑顔で語りかけるるーちゃんにわたしはアハハと空笑いしか出せなかった
緊急の呼び出しから2か月くらい経った頃
わたしは父ノーランから呼び出された
部屋でリーラと遊んでおり、リーラとクレアさんのお付きメイドを残して父ノーランの部屋へ向かう
ドアをノックし入室する
「ユーディ、急にすまんな」
「いえ、お父さま。いかが。。。」
わたしは父の横にいる人を見て二の句が止まった
でた
金髪
でたわ
ワインレッドと黒のドレス
でましたわ
るーちゃん
忘れかけていた緊急呼び出しがよみがえってくる
「あら、この娘が使徒さまなんですの?」
唖然とするわたしを放って会話が続く
「左様。我が娘ユーディスになります。」
「まぁなんて可愛い使徒さまですこと」
「わたしくはルビーと申します。公爵家の剣術指南役を申し付かりました。ユーディスさんよろしくお願いいたしますね」
「お、おとうさまどうして。。。」
「黙っておってすまん。王より話が来ておったのだ。祝福の儀よりお前を探るために王の周りも煩くなっておるらしい。貴族共は押さえておるが、他国からのお目通りの話や訪国の依頼が一段と増えておるそうだ。特にお前を気に入っている母后さまが心配されておる。王へ進言されたのであろう。それでお前を護るために護衛としてルビー嬢を送ってくださったのだ。」
「名目上はあくまでも我が家の剣術指南役としてだが、お前についてもらうことにする」
「そう心配せずともよい。ルビー嬢はこの美貌だが、剣の腕は超一流と王のお墨付きをもらっておる。なんでも騎士団長ですら子ども扱いだと。。。」
ズズズッとロボットのように顔だけルビーさんへ動かすと目がった
引き攣った顔のわたしに笑顔で微笑み返すルビーさん
わたしは別の意味で心配だった
るーちゃんが来てしまったことでデイジーとのバトルを考えると頭が痛む
「ん?ユーディいかがした?」
「お父さま、ちょっと頭が。。。」
「そうか、呼び出してすまなかったな。部屋へ帰って休むといい」
お嬢さま、お部屋へとデイジーへ連れられて部屋へ戻った
出た時と様子の違うわたしをみたリーラから「お姉様だいじょうぶ?」と聞かれた
わたしは心配させないように笑顔を見せたが頭痛の種はまだいる
気を落ち着かせるように紅茶を飲んでいるとその頭痛の種が部屋を訪ねてきて今へ至る
目の前では仲良くなったるーちゃんとリーラが楽しそうに人形で遊んでいる
わたしはまた溜め息をつくと少しぬるくなった紅茶を口に含んだ
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