第19話 評定
わたしは領都へ戻ってから、帝都へ行く前まで準備をしていたテンサイ、カブ、トマト種まきを行った
7月にカブとトマト、10月にテンサイを収穫をした
カブとトマトは食用にし、テンサイは根を絞り煮詰めて砂糖を抽出した
父ノーランにも確認してもらい、来年からはテンサイは畑にて大量に作る事になった
あと、いつも行くカフェ森の泉に以前家で出したトマトソースのパスタのレシピを教えたので新しいメニューとしてカフェで提供するようになった
おかげで食用としてのトマトが街の人々にも認知され需要が高まってきた
トマトは手軽に庭先で作れるため、広がっていくと嬉しい
来年はブランさんから言われている評定、塩の収穫、兄ジルベルトの学校への入学だ
兄ジルベルトは5月で9歳になる為、4月から学園での寮生活となるらしい
この世界の学校は基本学部4年と上級学部3年の7年の学校生活となり、その後更に勉強したい人は延長で引き続き在校できるそうだ
兄ジルベルトが嬉しそうに教えてくれた
年が明け帝国歴989年となった
わたしとデイジーは前の日の夜よりわたしの家へ戻り、ブランさんを待っていた
いつものように緑茶を飲みながらデイジーとお話ししていると「お待たせいたしました」とスッとブランさんが現れた
「準備はできていらっしゃいますか?」
わたしはコクンと頷く
「では向かいましょうか」
ブランはわたしの手を取り、何かを言うとスッと視界が消えた
2、3秒くらいしてスッと視界が開ける
視界が明けると以前拝謁のときに来た石畳へひかれたレッドカーペットの上だった
前と同じように先まで壁が見えない石畳と円柱が果てしなく続いている間
だが一点だけ違う
前は2Mくらいの扉だったが、今回は10Mはありそうな壮大な装飾の扉だった
ブランさんの後ろへ続いて扉の前まで来る
わたしはブランさんへ声かけた
「あのー。太陽のシンボルのところで平伏して主が出られるまで顔を上げないですよね」
ブランさんは一瞬キョトンとした顔をしたがすぐにいつもの笑顔に戻って言った
「あぁ、今回は必要ありません。あなたはノワールなのですから」
「わたしの後ろについていらして」
ブランさんが一呼吸おいて言う
「第二位神・惑星管理神統括ブラン、第三位神・惑星管理神ノワールの二名。評定の為、参上いたしましたわ」
ズズズッと重そうな扉が勝手に開いていく
中はすさまじかった
わたしの貧相な語彙では説明出来ないくらいまさに神々の住む城と言わんばかりの王座の間だった
わたしはブランさんについて中へ進んでいく
すでに中にはレッドカーペットを挟みそれぞれ5人ほどが直立していた
わたしたちは王座を見て右側の先頭にブランさん、次にわたしが並んだ
前の時みたいな重い空気は感じない
王座の間だからだろうか?わたしがノワールになったからだろうか?といろいろ考えているとチリンチリンと例の音が聞こえる
ズズズッと扉が開く音が聞こえ、後方よりカツッカツッと足音が寄ってきた
わたしは前のブランさんを見習い、レッドカーペットを歩く主を見ずに王座のみを直視していた
やがて王座へと上がり主は座る
わたしは見た
魔法使いのようにつばの広い帽子を被り、長い杖を持った長い白髭の老人を
---魔法使いだ
わたしが思った瞬間、主さまと目が合った
見透かされたかのようにニヤッと笑みを向けられた
---また読まれた
---心を無に心を無に心を無に
お経のように考えていると前のブランさんから声が発せられる
「皆さま、これより評定をはじめます」
「さっそく主さまよりお言葉を賜りたいと思います」
主さまがお話になる
「皆々、忙しい中集まってもらいすまぬ」
「新しいノワールも誕生して、しばらく経つのでな。顔合わせもかねて、久しぶりに評定をおこしたのだ」
「今回は降神はおらぬからゆるりと聞け」
「ではまず第四位神・ヴェール」
「ハッ」
順番に名前が呼ばれ、主さまより評価が下される
わたしたちの列の後ろから順番に呼ばれるようだ
何もしてないけど何を言われるのだろう、こうしんって何だろうと考えていると主さまから声がかかる
「第三位神・ノワール」
「はい」
「お前はCだ」
---C??
「まぁ可もなく不可もなくと言ったところだ。だが今回がはじめての評定。次回は上を目指せ」
---????
ーーー学校の成績評価みたいなもの?
「第二位神・ブラン」
「はい」
「お前はSだ」
「流石は管理神統括。連続記録はいつまで続くのであろうか?またこれからも励め」
「ありがとうございます!」
ブランさんの声からは喜びが滲みだしている
ブランさんが終わると今度は逆の列の人が評価を言われている
主さまは全員に評価を下すと皆へ話し出した
「これで全員終わったの。皆の者勤め御苦労。」
「今日は前回話した新たなノワールがおる。今回から評定に加わってもらった。初めて見る者ばかりだと思うが見知っておいてもらいたい」
そう言われると多数の視線を感じた
わたしは気が付かない体で主さまを一点に見ている
話を聞いていてもまだ視線を感じており上の空だった
「。。。以上になる」
「皆の者またこれからもわしの創った星を頼むぞ」
「SのブランとAのルージュは後日で構わん。また来い」
「では今回は終わりとする」
そう言うと主さまは王座を立ち、出ていかれた
足音が聞こえなくなったのを確認してからわたしはフゥと大きな一呼吸をした
苦笑いをしながらわたしを見るブランさんより声がかかる
「お疲れ様でした。緊張はとれましたか?」
「初めてだったから少し疲れちゃいました」
「の。。。」
「では戻りましょうか?」と扉へ歩きながらブランさんへ話しかけた
「のわ。。。」
「あー、S評価おめでとう御座います。連続とか流石はブランさん」
「のわー。。。」
「そうでしょう!あなたもみ。。」
ブランさんの言葉を切って後ろより声が聞こえた
「ちょ、ちょっと無視しないでお聞きなさい!!」
「へっ?」と後ろを振り返ると金髪の15歳くらいの女の子が両手を腰に当て怒っていた
わたしはとりあえず謝りつつたずねた
「すみません、どうしました?」
女の子は左手を腰に当て、右手で持ったエヴァンタイユでこちらを指さしながら怒る
「どうしましたですって?」
「あなた!さっきからずっとこのわたくしが声をかけて差し上げているのに無視するとはいい度胸ですわね」
「あっ、気が付きませんでした。すみません。」
女の子はフゥと熱を吐き出すように一息ついて話し出す
「まぁ、いいですわ。わたくしが先輩なので大目に見ることにいたします。」
「はぁ。。。ありがとうございます。」
「わたくしはルージュ。あなたがノワールさんですわね?」
「そうです」
謝りながらわたしは女の子をみる
金の刺繡が入るワインレッドのサックガウンと黒のストマッカーとペティコートの2色で揃えて広がったスカート、袖は大きなフリル、右手に持ったエヴァンタイユとローブ・ア・ラ・フランセーズのようだった
だが絵画のマリーアントワネットとかで見るようなとてつもなく広がったスカートではなくどちらかといえばローブ・ア・ラングレースに近い
綺麗だなと思いながら見ているとルージュから訝しげな声がかかる
「なんですの?」
「あっ、いえ。ワインレッドと黒のドレスがお綺麗だなぁと」
ルージュの琴線に触れたのだろうか?一段上がった声で言われた
「まぁ!あなた見る目がございますわね。」
「今日は評定の場。わたくしの自慢のドレスで参りましたの」
「いいでしょう?このエヴァンタイユは創るのに苦労しましたのよ。」
「それにわたくし特にガウンがお気に入りですの」
ご機嫌になったのだろうルージュさんはわたしに言った
「ノワールさん、あなた気に入りましたわ。わたしくがお友達になって差し上げます。わたくしからお友達に誘われるのは光栄ですわよ?」
後ろにいたブランさんから耳打ちが入る
−−−ルージュはこの性格の通り、お話する友達がいないの。新入りのあなたに会えるのを待ってたみたいでよかったら仲良くしてあげて。
機関銃のように話すルージュさんを見ながらツンデレお嬢さまなんか?と思った
満足したルージュさんから言われる
「ノワールさんこれからお茶でもいかがかしら?」
「いいですよ。眷属が家で待ってますからわたしの家でお茶どうですか?」
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