第18話 帝都内

わたしたちは商人ギルドへ着いた

帝国第2の港ウォルシー港を持つ公爵家、荷下ろし品は基本的に領都を通り、帝都へ向かう為、領都で見たことある品物ばかりだった

だが、北方や東方より陸路へ来る物は領都を通らないので見たことないものがある

しかし特別目を引くようなめぼしいものはなかった

しばらく見るも収穫無しと判断したわたしはお昼を食べようとゴスリングさんへ提案した

「おススメの店がありますんで、そこへ行きますか」

ゴスリングさん曰く、お嬢が行くような店ではないが肉団子スープが絶品と歩きながら説明してくれた

お店へつくとお昼どきということもあり、5人ほど並んで列を作っている

が、前方から騒々しい声が聞こえる

ウェイトレスにどこかの貴族であろう一団が「早く席を用意しろ」と文句をつけているようだった

空いてない為に謝り倒すウェイトレスが気の毒でしょうがない

「クズだわ。どこにでもゴミは湧いて出るものね。」

助け船のつもりで前へ聞こえるように言った

「おい、誰だ!今言った者は!」と貴族たちが振り返りこちらを見る

「あら?ゴミの自覚があるのかしら」

ゴスリングさんからはまた厄介ごとをと恨めしそうな目で見られながらわたしは煽った

「このガキ!」「貴様!」と一団より声が飛ぶ

その中で一段と怒る青年を先頭にこちらへ来た

怒髪天を衝く勢いでわたしたちに捲し立てる

「おい、お前!良い度胸をしているな。わたしはランベルツ帝国ルーベック伯爵家が三男オリバーという。名を名乗れ!」

わたしは時代劇展開キターと思いながら冷静にオリバー氏の台詞そのままに笑顔で名乗り返す

「あらあなた良い度胸してますわね。わたくしはランベルツ帝国シュヴァーベン公爵家が長女ユーディスと申します。」

「帝都では面白いことが起きますわ。たかだか伯爵家程度が公爵家に喧嘩を売るなんて前代未聞。こんな面白いお話はキチンとお父様とお婆様へ上げさせて頂きますわ。」

相手が公爵家とは思っていなかったのだろう

シュヴァーベン公爵家の名前が出たとたん、土下座し謝罪し始めた

「謝罪など必要ありませんわ。周りの方々の迷惑ですわ」

「ユーディスさま申し訳ございません。何卒お許しを。」

しつこく謝る一団にイライラしてきたわたしは

「はっきり言わないと分かりません?目障りですのでさっさとお帰りになって下さいます?」

5歳のわたしより煽られ、這う這うの体で帰るオリバー氏たちを無視して列へ並びなおす。


周りの視線を感じるが無視してデイジーと話していると先程のウェイトレスとオーナーだろうか?がわたしたちの前に来て話し出した

「シュヴァーベン公爵家の方々、先程はありがとうございます。さぁ席を案内致します。どうぞ」

わたしは手で制すと

「あら?まだ並んでる方がいらっしゃいます。わたしたちは順番通りで構いませんわ」

「分かりました。暫くお待ちいただければと思います」

わたしが引かないと見たのだろう、オーナー?はそう言うと店内へ入っていった

しばらく待つと列が進みわたしたちの番になった

ウェイトレスがわたしたちを店内の席へ案内する

わたしはゴスリングさんへお願いした

「ゴスリングさん提案の店だからオススメを頼んで」

お任せして出てきたのはゴスリングさんたちはがっつり肉系だったがわたしたちのはパンとサラダとオススメしていた肉団子のスープだった

「お嬢、食ってみてください」

わたしはオススメしていた肉団子のスープを食べる

中身は肉団子、ニンジン、タマネギ、白菜に似た葉物野菜、キノコが具材

鶏ガラスープっぽい味で野菜と鳥の味が出て非常においしい

贅沢言えばショウガが効いていると更にいい

「ゴスリングさんおいしいです」

ゴスリングさんはわたしの言葉に安堵したように言った

「それならよかった」


店を出るときにオーナーより本日はサービスでと言われたがきちんと支払った

お礼をされるようなことはしていない

ゴミを掃除しただけだった



食事をした後は、お店の散策だ

領都よりお店や露店の数も多い

歩いていると日用品店があったので中へ入ってみる

やっぱりと思ったが、領都のキースの両親の店より塩、胡椒、砂糖は割高だった

塩と砂糖は計画を実行中だが、胡椒等の香辛料をなんとかしないといけないがまずは砂糖と塩の量産を目指そう

わたしたちはそのあともお店を見ながら何事もなく屋敷へと帰路についた

オリバー氏たちから仕返しが来るかと思ったがさすがに公爵家には手が出せなかったようだ



帰宅すると、父ノーランとエルナおばあちゃんが戻っていた

父ノーランたちに今日あったルーベック伯爵家のことを話した

「何かあればわたしの所へ来るからユーディは心配しなくていい」

父ノーランはそういうと続けて、ほかに用事がなければ明日王へ挨拶して領都へ戻ると言った

顔通しだけの登城だったので領都に仕事が山積みらしく長居していられないらしい

特に用事もなかったのでわたしは頷き、早めに部屋戻り休むことにした

行くときに暇をつぶせる物とクッションを創ると決めていてたことを思い出した為、夜こっそりわたしの家へ行き、クッションと本を作成して部屋へ戻った




翌日、朝から王城へ帰郷の挨拶へ行く

別れの際はエルナおばあちゃんとクララおばさんは抱き合って別れを惜しんでいた

わたしもクララさんに「今度はうちの泊まりにおいでなさい」と言われハグされほっぺたにキスされた

馬車に乗るとまた10日ほどの馬に揺られるのかと憂鬱な思いになったが、馬車の中で昨日創ったクッションを父ノーランとエルナおばあちゃんへプレゼントした

特に父ノーランからわたしが創ったものなのでこの世界の物より出来が良い為気に入ったらしく、追加で欲しいので帝都のどの店で買ったか?をしつこく聞かれた

「お嬢さまは通りの露天商から購入しておりました。南大陸の人間らしく、何かの鳥の羽の敷物らしいのですが。。。」

みかねてデイジーが横から助け舟を出してくれた

わたしは心の中でデイジーに感謝した



ちなみに本はとでもじゃないが読めなかった

クッションのおかげで行きよりお尻は痛くないが、それでも馬車内は揺れる

車酔いになりそうになったので途中で本を読むのはやめた

別のものを考えないといけない


やることもなく景色を眺めながら馬車に揺られ、領都へ戻ったのは3月を過ぎてからだった



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