小太りおじさん

「萩原、期末どうだった?」


飯田が死んだ顔をして尋ねてきた。


「全てそこそこいい点数だと思うぞ」


白石さんに告白してから少しは勉強してるので、学力向上しているのだ。


昨日、期末考査の日程が終了したから、俺達以外の学生達もテストの結果をお互い話し合っていた。


白石さんは転校するってことが確定してるためなのか、赤点でもいいと言われてるみたいだ。


いくら偏差値高くない学校でも、それでいいのかと思ってしまったが、どうやら赤点は回避出来そうと昨日言っていた。


今日は日帰りの仕事があるらしく、昼過ぎに戻ってくるみたいだ。


白石さんと一緒に勉強する事も出来て学生らしい雰囲気を味わえて、俺は期末期間は非常に充実していたのは内緒だ。


「今日あたりからテスト返却されてくるよな?」


「まぁそうじゃないか?」


「俺……悪かったら親に小遣い減らされる……」


「まぁそれは仕方ないな」


****


俺が白石さんに告白して3週間が経過して、一緒にいられるのも残り一週間だ。

凄くセンチメンタルな気分だ。


数学の授業であり、テストが返却されてきたが8割以上と意外と高得点でもあり内心喜んでいた。


特別難しくない試験なのだろうが、意外な事にクラス一位みたいだった。


テスト返却もされて、授業が再開した。


割と真面目に授業を聞いているとスマホに着信があった。


内容は今日の献立が何がいいかと聞かれたので、パスタと答えておいた。


白石さんが作るパスタは当たり前だがコンビニ等とは比較にならないほど美味しいので、食べたくなっちゃうのだ。


その後も他愛もない話をラインでしていると、既読がついたのに返信が遅かった。


俺は何か粗相をしたかと不安になっていると、一言返信がきた。


『たすけて』


俺はそれを見た瞬間に学校の2階の窓から飛び出した。


「お、おい!!萩原!!」


数学の教師が凄い叫んでいるし、クラスの生徒も驚いているがそんな事は関係なかった。


ラインで家にいることは分かっていた。


ここからなら徒歩15分だが、俺の足なら5分以内に着くだろう。


「少し待っててね!白石さん!!」


数分すると俺のボロアパートに着いた。


白石さんの部屋の前に着いて扉を開けようとすると鍵が掛かっていた。


空手の蹴り技で強引に玄関の扉を破壊した俺の目に映ったのは、小太りの不審者と演技してニコニコ笑っていた白石さんの二人がいた。

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