白石さんの努力

白石さんに対して如何にしてアプローチをするかを考えていたら、窓から朝日が入ってきた。


時計を確認してみると時刻は五時すぎであり、今日の授業中は居眠り確定だなと思った。


今から寝ると遅刻確定なため、俺は改めて白石さんのどこが好きなのかについて考えてみようと思っ

た。

白石沙羅はとびっきりの美少女であり、更に高身長でありながらも出るところが出て引っ込むところは引っ込んでいる。


長い栗色の髪は枝毛すらなくストレートで綺麗であり、柑橘系のいい匂いがする。


ここまでは全て外見を参観的に連ねているだけであり、多くの男達と変わらないたろうと思った。


初めは一目惚れから始まった恋で、昨日まで仕絶な過去があることなんて夢にも思わなかった。


だが、白石さんは、そんな過去を背負いながらモデルや女優業と言った人前に立つ仕事をして、精一杯頑張っている。


昨日の件で、俺が更に白石さんをその精神的な強さにも惹かれた。


そして昨日初めて手料理を食べたがお世辞でもなく料理上手であった。


少し食べた煮物なんかもとても美味しかったので、また食べたいなと思ってしまった。


「一日だけで、こんなに知らない一面を知れて更に好きになってしまったなぁ。でも、俺は自石さんに俺のことを一カ月の間に伝えて、好きになって貰わないといけない・・・・・」


あれだけモテる女の子が、少し空手が出来て顔がいいだけの男を好きになってくれるのか・・・・。


俺の不安は増すばかりではあった。


モデルや女優もやっているのだが、声優などにも挑戦するのだろうか?


白石さんは声も良かった。可愛らしく、それでいて聞き取りにくくない、ソプラノポイスだ。


色々なことに挑戦出来るのだから、少し羨ましく思った時、上の階から人が降りてくる音がした。


このボロアバートは俺と白石さんの二人しか住んでいないのだから、考えられるのは一人だった。


「こんな朝早くからどうしたんだろう?」

昨日は少し遅くまで俺と一緒にいたはずなのに、朝早くからどこへ行くのかが気になった。


俺はベッドから起き上がり、部屋の外へと出ていた。


****


バンっと音と共に俺は玄関の扉を開けた。


少し大きい音だったせいか、階段を降りていた白石さんがギョッとした顔で俺の方を見ていた。


驚かせてごめんね。


「あれ、萩原君だ、突然扉が勢いよく開いたからビックリしたよ。どうしたの?こんな朝早くに」


「いや、あれから眠れなくてさ。それで上から降りてくる足音が聞こえて、昨日遅くまで起きてたのに朝早くなにするんだろうと思って…」


「あらら、一睡もしてないの?確かに眠そうな目してるね。見ての通りランニングです!」


くすっと笑って、可愛いなと思った。


白石さんは確かにランニングウェアを着ていて、暑

いのに日焼けしないようにか長袖であった。


「白石さんは凄いね..。やっぱり、体型維持のためにランニングしてるの?」


「うん。それもあるけどね、来月に私のグラビアデビューで水着撮影があるからさ。少しでもスタイル良い状態で臨みたかったんだ!」


今時少しくらいなら加工技術を使って誤魔化すものだと考えていたから、少ない時間で努力を重ねる白石さんをストイックだと感じた。


「時間は作るものって言うよね。私は本当にそうだなぁと思ってて、少ない時間を無駄なく使わないとって思ってるんだ」


頭を打たれるような衝撃を受けた。


俺は日頃から好き勝手にして生きていて、少しバイトして疲れたと勉強せずに眠り、ダラダラとゲームしたりする毎日であった。


「やっぱり凄いね…。正直その容姿だけで十分やっていけると思っていたけど、それ以上の努力を裏でしていたんだね」


「そんなことないよ。私にとって芸能界はラストチャンスだと思ってるからさ。私の容姿とスタイルを最大に活かしていきたいだけだよ」  


にっこりと笑って白石さんは、走っていった。


俺は少しの間、その場で立ったまま色々な事を考えていた。


何もしていない自分に対する怒りと、今までダラダラ過ごしていた後悔などの様々な感情が渦巻いていた。

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