男子生徒の告白

飯田とホームルーム前の雑談をしていると、遅刻数分前のギリギリに白石さんは登校してきた。


普段から遅刻ギリギリで、朝が弱いのかなと思っていた。


しかし早朝からランニングしたり、他にも忙しくしている姿を見ていると、朝にやるべき仕事があったのだろうと思った。


「みんな、おはよ~」


甘ったるい声が教室に響き渡った。クラスの男子達の視線が教室の扉に集中した。


あまり気崩されてないブレザーと、それとは対照的な少し短めのスカートな白石さんを見るのも夏休みまでだと思うと、少し……かなり寂しいものがあった。


クラスの男たちが元気よく返事して、短い時間ながらも積極的にアピールするために白石さんに話しかけていた。


そんな中でも笑顔を絶やさずに、面倒な素振りを一切見せずにいるのは凄いなと思った。


担任が来るまで白石さんはクラスの男子達に囲まれていた。


****


体育が始まるので、俺たち男子は更衣室で着替えていた。


女子もいないため男子同士で少し下品な話が出来るからか、本日も学園のアイドルの話で盛り上がっていた。


『いやぁ、白石さんの体操着姿見れるから俺体育好きだわぁ』


『てか、あのデカパイが揺れてるところ見るのが好きすぎるわ』


『それなぁ。俺なんて体育の授業の時白石さんばかり見てるし』


『揉みてぇよな』


『おっぱいで思い出したけどネットの話じゃ今度グラビアやるって話だぜ』


『マジか。絶対雑誌買うわ~』


女子の目線が無ければ男のエロい話は盛り上がる物だから仕方ないね。

俺は直ぐ様着替えて、更衣室を後にした。多くの生徒が話に盛り上がって全く着替えてないので、遅れるのは確定だろうなと思った。

 

****


準備運動も終わり、体育でやるバスケが始まった。


「バスケはいいよなぁ。男子女子で半面ずつ使うからよ。試合の時は俺たちが休憩できるしなぁ」


飯田がやる気の無い発言をしてきただ、俺も同意であった。


「そうだな」

俺はウトウトしながらも適当に返事をしていた。

そんな中で休んでいる男達がザワつき始めた。


『白石さんが出てきたぞ』

『普段の髪型も良いけど、ポニーテール姿もいいなぁ』

『やっぱりデカいよなぁ色々と……』


男子達が女子の方に聞こえないよう気遣って話しているようだったが、女子達が軽蔑した目で見ているので全て聞こえてるみたいだ。


白石さんのうなじが見える、体育の日しかしない髪型だ。

白石さんが高身長なのと運動神経がいいようで得点を重ねていた。

動く度に揺れる胸に男は釘付けだった。

暫くして試合が終わり白石さん達のチームの勝利した。


****


放課後になった。一睡もしてないので眠かったが、決意を固めたので授業にも真面目に取り組んでい

た……何度かウトウトしていたが。


これから少しの間だけだが、白石さんと一緒の時間を部屋でのみだが過ごせるのだから俺の眠気が吹っ飛んで、緊張しっぱなしであった。


昼休み中に先生に頼まれていた雑用を放課後に行っていた。

部活動もしてないからか時々担任から頼まれることがある。

ジュースを奢ってくれるので、別にいいのだが。


そして俺は白石さんに、ラインを入れようとしたときに男の声が耳に入った。

部活動の始まる時間帯でもあり、帰宅部は全員帰っている時間なので本来はこの場所に生徒はあまりいないのだが……。


「白石さん!俺とつきあってください」


「ごめんなさい。私、君の事あまり知らないし.……それに今仕事も忙しいの」


白石さんは申し訳なさそうな目をしていた。


告白した男子生徒は同じ学年で確かテニス部だったはずで、かなりいい成績を残していたから少し有名だった。


断られると思っていなかったのか分からないが、苛立った表情を浮かべて、不穏な空気が両者に流れていた。


「私これから用事あるから…・・・・バイバイ」


それを感じとったのか、逃げようと踵を返したところを男が後ろから肩に手を置いた。


「待てよ」


その一言と男に触られたことで過去のトラウマが思い起こされたのか、ビクンと震えて立ち止まってしまった。そして足が小さく震えていた。


俺は白石さんの過去を知って、今恐怖を感じていることを知っていたので男子生徒に声をかけた。


「あれ~白石さんだ。こんなところで、何してるの?」


男子生徒は今の自分の状況がはっきり分かったのか、置いていた手を離した。


「ご、ごめん」


そう言って男子生徒は廊下を走って逃げだした。

暴力沙汰にならなくて一安心していた。


「また、助けられちゃったね」


白石さんは困った顔をしながら微笑んだ。


「別に今回は声かけただけだから、大したことじゃないさ」


「それでも、ありがとう!」


「どういたしまして!帰ろっか」


「そうだね。この後、何するのか少し楽しみなんだ」


「……正直ノープランです。頑張って考えたんだけど思いつかなくて一睡もしてない」


「そうなの?なら……私、見たいドラマあるんだよね。一緒に見ない?」


「もちろんだよ。これも女優業の勉強ですか?」


「うん。ほら、帰ろ!」


俺と白石さんは少し距離を置いて、それぞれ帰った。

大人気のモデルに彼氏出来たとかネットに上げられたら大変だからね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る