白石さんの部屋で…
俺は荷物を部屋に置いて、制服のまま上の階白石さんの部屋に向かった。
特に用もないから階段を上がることがなく、これで2回目だからか少し緊張していた。
そしてインターホンを押した。
「鍵開けてあるから入っていいよ~」
白石さんの声が聞こえたので、俺は玄関の扉を開けて中に入った。
部屋の中で白石さんはパソコンで何かの動画を見ていた。
「何見てるの?」
「これ?これは、私のCMの撮影素材だよ。失敗した時の演技を見て反省点を振り返ってるんだ」
「俺も見ていい?」
「いいけど……少し恥ずかしいね」
俺は立ったまま見ようとしていたのだが。
「隣座りなよ、別に私に手を出す気はないんでしょう?」
白石さんは自身の隣の床をポンポンと叩きながら話した。
「当たり前だ!……分かった座らせて貰うよ」
俺は少し距離を保ちながらも隣に座ったが、ドキドキと心臓の音がはっきり聞こえる程に緊張していた。
(なんか甘い匂いするな)
俺は口には出さなかったが、白石さんの本人の香りと制汗剤の匂いが混ざった良い匂いが鼻孔に入った。なるほど、制汗剤か。
人気モデルだし華の女子高生。匂いには敏感らしい。
俺は自身の匂いが気になって、少し嗅いでみた。
それを見た白石さんが、くすくすと笑いながら話した。
「大丈夫だよ。萩原君は臭くないよ、少しいい匂いするよ」
「なんか少し恥ずかしいな。あまり走ってないから、汗も掻いてないからかもな」
「確かに……運動神経いいのに勿体ないなぁ。中学時代に空手の成績が凄く良かったって飯田君が言ってたよ」
飯田のやつ俺を話のネタに使ったな……。
「うん……。でも空手は高校進学前に辞めちゃて、今はボクシングでも初めてみようかなと思ってる」
「ボクシング!凄いね、空手で何度も優勝経験のある萩原君なら凄い成績残せそう。やってみなよ!」
俺もまだ今朝からの構想段階であったが、好きな人から応援されたんだから今週の土日からジムに行ってみるかと決断した。
好きな人から褒められたい・いいところを見せたいと言ったクラスの男子の連中と同じことだったが、俺にもその感情が今ならよく分かった。
以前までならカッコつけてる連中を少し小馬鹿にしていたんだが……少し反省だな。
「そうだな。今週の土日にジムに行ってみようと思う。それよりCMのNG集見せてよ」
俺はニヤニヤ少し笑いながらも話しかけた。
白石さんはプクーっと頬を膨らませて、少し怒った風に話した。
「違うもん。初めてだったけど、良く出来てるって監督さんにも褒められたもん」
白石さんの本来の顔の一端なのだろうか、少し子供っぽいところもあるんだなと思った。
クラスとは違う表情を見れて、また好きな一面が出来た。
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