美少女とのキス
彼は大きく溜め息をつくと、白石さんに向き直って言った。
「えっと……この男の人知り合いだった?」
というか戦っているときは気づかなかったけど、このおじさん凄い体臭だな。正直ションベンより臭い気もしていた。
「いやぁ全然知らない人だよ。なんか、私のファンみたいで……あとを付けられてたみたい」
なるほど。白石さんのファンでストーカーという事か……。
「ところで萩原君ケガはない?」
「俺は平気だよ。白石さんこそ男に変な事されなかった?」
白石さんは過去の経験から男に迫られると身体が硬直して抵抗が一切出来ないと聞いていた。
「え、特に無かったかな?萩原君が直ぐ来てくれたのと、私が話を長引かせてたから……。それに私も驚いたんだけど、このおじさんに肩掴まれて迫られた時に抵抗出来たんだ」
「え……でも、どうして?」
白石さんが複数の男に無抵抗にキスさせられていたときのことを思い出していた。
あれ程無抵抗に男に従う白石さんが自分の意思で……。
「ん~理由は分かってるんだけどな……言うの恥ずかしいな」
「え……いや言いたくないなら無理しなくていいよ」
なんだか頬を染めてハニカミながら話していたから、少し気になるのが本音だが……。
「ふふっ、まあ萩原君ならそう言うよね。安心して!ちゃあんと教えてあげる♪」
「へ?」
普段以上にニコニコと相変わらず良い笑顔を浮かべる白石さんの顔が、やけに紅潮している事に私が気付いた時──彼女は既に動いていた。
「ん──」
何秒──いや何十秒だったのか分からないけれど──ふあっと甘い息をついた白石さんが顔を離し、ぺろりと赤い舌先が唇を舐めた。明らかに手馴れている仕草であったが、ファーストキスの俺にはそれ以上の衝撃が身体中にビリビリと流れていた。
「な、ななっ、なぁっ──」
「ふぅ…。これで分かったかな?」
「え……」
「まだ分からないのかな?仕方ないなぁ……萩原君は♪」
小悪魔的な表情を浮かべて、ニヤニヤと笑いながら硬直している俺の顔に白石さんの綺麗な顔が近づいてきた。
ごく自然な仕草で俺の唇をチュッと啄ついばんでみせる白石さん。
長い睫毛、整った鼻、少し薄い唇、なんて綺麗な寝顔なんだ。
そして俺の口は火傷したように熱かった。
白石さんから感じる甘い香りが、男の臭すぎる体臭を紛らわしてくれるようだった。
もう少し相応しい場所でファーストキスを捧げたかったなと思った。
「流石に私からキスしたってことは理由分かるよね…。私から告白したことないから言いにくいんだ」
白石さん……告白するよりキスの方がハードル低いっていうのか……。
この女の子は今まで男と沢山エッチしすぎてて性の感性が、告白より下になっているということなのかと思った。
「白石さんの好意は俺に伝わったよ……。凄く嬉しい」
「うん、なら良かった。なんかムラムラしてきちゃったから、濃ゆいのいくね…」
そう言って白石さんは再び俺の肩に手を掛ける。
ブッチューーッ
亜麻色の髪の美少女が、艶やかな唇を彼のそれに重ね──いや、貪っていた。
俺も食われるわけにはいかないと思い拙い技術で仕返ししたが、技量は白石さんが圧倒的に上。余裕でやり返されて、俺は生涯勝てないなと悟った。
そしてとうとう、湿った水音らしきものが、唇の隙間から漏れ始めた。
警察官が部屋にくるまで俺達はキスをし続けた。
それでも俺は彼女を愛している 藤本茂三 @sige02
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