美少女の部屋
ボロアパートに到着した俺達は、ここで別れると思ったのだが白石さんが俯いた暗い表情をして話しかけてきた。
「ねぇ萩原君……今日の事って誰にも言わない?」
俺は白石さんが無理やりキスさせられて脅されていたことについては、もともと墓場まで持っていくつもりであった。
「もちろんだよ。白石さんにはモデルの仕事もあるしね」
モデルをしていて今や人気急上昇中でCMでも取り上げられる程に影響力が上がっていた。
白石さんは俺の目をジッと見つめてきて、絶世の美少女に見つめられると少し緊張してしまった。
(俺、鼻毛とか出てないよね……)
「うん。分かったよ、萩原君を信じてみるよ」
俺は白石さんが男達に無理やりキスさせられて、なぜ抵抗せずに受け入れていたのかが気になって思わず話してしまった。
「ところで、なんで抵抗しなかったの?俺が近くにいたから助かったようなもので……」
別に人通りが少ないが、公園の隣には家もあるので大声を出せば誰かが助けて貰えると思ったからだ。
「それは……」
「言いたくなかったらいいんだ。ごめんね」
白石さんは言いにくそうに言葉を詰まらせて、また俯いて目を細めていた。
「いいえ、全部話すよ。助けてもらったしね!でも、絶対に言わないって約束して欲しいな」
白石さんが覚悟を決めた目をしながら俺に問う。
「分かったよ、俺の命にかけて絶対に口外しない」
「ありがとう。なら私の部屋に来てくれないかな。見せたいものがあるんだ」
「え、でもいいの?男の俺が入っても……」
「うん。それに萩原君は私に手は出さないでしょう?」
「当たり前だ、無理やりなんて倫理的に反するしな」
「なら問題ないよ、知っての通り狭い部屋だからね。部屋を綺麗じゃないし、あまり幻滅しないでくれるとありがたいな」
「わ、分かった」
俺は女子と今まで接点もなく当たり前だが部屋に入るなんて、これが人生で初めての経験であった。
心臓の鼓動が聞こえてくるようで、何もしてないのに息切れもしてしまう。
「そんなに緊張しないでよ。私まで緊張してくるから」
白石さんは朗らかに笑いながら俺を安心させようとしてきた。
このアパートはボロいからか俺と白石さんしか住人はいなかった。そして俺は一階で白石さんは二階に住んでいたのだ。
丁度真上であったが、今まで物音もしなく本当に住んでるのかと疑ったこともあるくらいだ。
白石さんは自室の鍵を開けて、玄関の扉を開いた。
「ここが私の部屋だよ。上がって!」
「お、お邪魔します!」
(この部屋めっちゃ良い匂いだな! このままずっとこの匂いを嗅いでいられるよ……って俺は変態かよ。だが何て良い匂いなんだろうか……! 俺は今確実に天国にいるんじゃないだろうか……? まさか、リアルすぎる夢でも見ているのかな)
思わず自分の頬っぺを右手で摘むと、思いきりギューッと抓ってみる!
「い、痛い……」
「何をしているの?」
白石さんは玄関で固まっている俺を見て不思議そうに首を傾げていた。
美少女だとこういう仕草でも絵になるのだから反則であると思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます