重い過去を持つ美少女との恋愛模様

@sige02

プロローグ 公園の出来事

一目惚れをした。


同じクラスである女の子だ。


名前は白石さんで、学校で一番と言われる程に美麗な容姿を持つ。


髪の毛は栗色で背中まで届くロングのストレートで、身長が高めでありスタイルも抜群である。


更に男女隔てなく気配りが出来き、学園のアイドル的存在だ。


「話すきっかけでも出来ねぇかなぁ……」


白石さんは、極力男子に話しかけることが無かった。


あれだけモテるのだから男子の扱いが得意なのかと思ったが、どうも違うみたいで話しかけられても初々しい反応をした。


基本的に女子同士で話すことが多く、特定の人物と仲を深めることがなく浅く広くを徹底しているように見えた。


俺が白石さんを初めて見たのは入学式の時だった。


****


あれは桜の花びらが舞い散る朝、高校に入学した俺は自分のクラスが何組なのかを校舎の玄関に貼られた紙で探していた。


なんとなくいい香りが鼻孔をくすぐったので隣をチラッと見た。


俺はその子を見た瞬間に固まってしまった。


まるで、電流が走ったかのような感覚に襲われると、すぐに動けなくなってしまったのである。


いつまでも自分を見てくる俺を不審がった女の子が怪訝そうに頭を少し傾けた。


「あ、あのー……何か?」


「い、いえ……。凄く髪がお綺麗だなって」


「これですか?長いから手入れが大変なんですけど今更切るのも勿体なくて」


女の子は、お淑やかな笑顔を俺に向けた。


「あ、俺……僕、1組の萩原祐樹です。よろしくお願いします」


「私は2組の白石沙羅です。隣のクラスだけどよろしくお願いします」


俺たちはお互いに頭を下げて、少し雑談をした。



****


女に縁のない俺にとって一番の思い出だった。


「おい、また白石さん見てるのかよ?」


少し見すぎてたようだ。


隣の席の飯田にニヤニヤとした顔で言われた。


「見るだけなら自由だろ?」


「そうだけどよ、あんま見すぎると嫌われちまうぜ」


確かに飯田の言う通りかもしれない・・・少し自重しよう。


「白石さんは流石のモテっぷりだよなぁ。他校の3年のサッカー部のイケメン部長の告白されて断ったらしいぜ」


飯田から聞かされた内容に、俺はあまり驚かなかった。


「有名なのは当たり前だな。入学してモデルのミスエイティーンでグランプリ取ったんだからさ」


「そうだな……噂じゃ今年から女優もやっていくらしいぜ」


飯田が言う通り女優もやると噂されていてデビュー作が何になるのか俺は気になっていた。


俺はSNSで白石さんのインスタを飯田に見せた。


「こんなデマも書かれて白石さんも気苦労するよな」


俺はフォロワーが40万人を超えている白石さんのインスタの投稿についている酷いリプを見せた。


「なになに、『この女は中学時代から肉便器でパパ活女だった』。相変わらずネットってのは怖い人間が多いねぇ」


「ほんとなぁ、俺も中学の時空手の全国大会三連覇して少しネットに悪口書かれたけど、それでも辛かったしよ」


「そういえば、もう空手はやらないのか?」


「前も言ったけどやらないかな。暴力沙汰一度起こしちゃったしね」


俺は一度暴力沙汰を起こしてから、空手を続けるのを辞めたのだ。


「勿体ねぇなぁ。また始めれば直ぐに優勝取れるだろうに……。俺も空手してたけど、あの時のお前に勝てるやつ大人含めて知らねぇな」


俺には少し空手の才能があり、中学からは負け知らずだった。


「まぁ、もう昔の話だよ。今は大人しくコンビニ定員をしてるのよ」


「お、強盗来ても余裕で守れるな。一人暮らしで親の援助なしで一人で生計立ててるんだから偉いよお前」


「偉く褒めるな、ありがとう」


「話を戻すけどよ入学して1年経つけど、白石さんは誰とも付き合ってないし付き合う気ないんじゃないか?」


「そうかもな、でも俺の一目惚れによる恋心はそう簡単に消えてくれないんだよ」


「そうか。お前もそろそろ恋人でも作って高校生活楽しめばいいのによ。顔も悪くないのに」


「俺はお前みたいに彼女作って別れてを繰り返す男じゃないのさ。一途な男なんだよ」


飯田は肩を竦めて、自席へと戻っていった。


だが飯田の言う通り俺もこの恋心に決着を付けないといけないと感じていた。


このまま卒業したら、ずっと後悔するだろう。


白石さんはモデルであり彼氏作る事は、そもそもダメかもしれなく望み薄かもしれないが、俺が次へと進むために告白するしかない。


意外とやると決めたらやる男な俺は、いつ告白するかを考えていた。


んー、決断が鈍らないように早い方がいいかな。


今日はバイトあるから、明日の放課後に白石さんに告白しようと俺は決めた。


****


その夜バイト終わりに、俺はいつもの公園に寄ろうかと歩いて向かっていた。


ここは俺のボロアパートの近くでもあったので、時々バイト帰りに来ていた。


意味はないが、なんとなくバイトで疲れているので歩いて気分転換したからだ。


公園が見えた頃3人の男と一人の女が交互にキスをしているのを目撃した。


(うわあ~普通外でキスなんかするかね。しかも女一人ってのが気色悪いわ)


俺はその場から去ろうとして、一瞬女の顔を見るとそこにいたのは白石さんだった。


俺は恋している白石さんの一面を見て、心が張り裂けそうな気分に陥った。


まさに吐きそうな気分とはこのことだった。


そして男達の声がここまで聞こえてきた。


「君凄い可愛いのにキス激しいね。無理やり迫ったのに逃げもしないんだもん、俺達に犯されたくなちゃったかな?」


「こんな可愛い子とキスしたの初めてかも気持ちいいわ……てか、モデルの白石沙羅じゃね?」


「あぁそうだ。俺インスタもフォロワーだし、間違いねぇよ。生で見ると胸デカすぎるだろ」


白石さんは涙を流しながら、震えた身体と声で話す。


「あの……止めてください。今なら警察も呼びませんから……」


「警察なんて俺達が怖がるわけないじゃん」


「そうそう。俺達レイプしまくってるから犯罪に慣れてるんだわ」


「お、人気モデルなら動画で脅せば一発じゃん。俺天才だわ!おい撮影するから、お前らどっちかキスしてやれよ」


男達と白石さんの話から無理やり迫っていると理解した俺は完全に理性を失った。


動画を撮ろうとしていた男に対して不意打ちの一発を後頭部に入れ、その後残りの二人には上段蹴りと鳩尾への一撃を入れた。


空手を辞めたとはいえ日頃から鍛えているので、衰えは全くなく中学時代よりキレは増しているのだ。


その辺にいる不良共を一撃で倒すなど簡単であった。


白石さんは驚いたのか、その場で涙を流しながら俺に感謝した。


「あの男達から助けてくれてありがとう……凄く怖かった……」


「いいんだよ……白石さんが無事で良かった」


白石さんは俺の胸元に抱き着き、少しの間震えながらも涙を流すのであった。


俺達は同じアパートなので一緒に帰宅した。

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