第5話恋の予感

オレはきも善には、23時に到着した。

平林が暖簾の前に座っていた。

「やぁ、平林。ごめんな。呼びだして」

と言うと、

「ちょうど飲み足りなくてね。ここ、あと30分で閉まるから、24時間営業のやぶ屋へ行こっか。秋田君」

「そうだね」

オレと平林、歩いて5分のやぶ屋に着いた。

若い子が注文を取りに来た。

「じゃ、レッドアイ2つ」

と、平林は注文した。もう、酒は飲みたく無かったのだが、しょうが無い付き合う事にした。

「平林今夜は誰と飲んでいたの?」

「高校時代の同級生と女子会。皆んな結婚しててさ、私だけ1人は」

と、平林は寂しそうに言った。

「秋田君は?」

オレは、今日の出来事を細かに説明した。途中、網焼きで肉を焼きながら。この店は焼き肉屋では無いが、テーブルの真ん中に七輪があり、肉を焼けるのだ。


「それって、恋じゃない?」

「恋か……」

「秋田君、その子まだ24歳なんでしょ?」

「そうだが」

「今の子は年の差なんて関係ないし、デブ専も多いよ」

と、レッドアイを飲みながら平林は言う。

「で、デブ専?キッ様〜お前だって、まな板じゃねえか」

オレは、知らないうちにハイボールを飲んでいた。

「平林、オレ騙されてるのかな?」

「今度、紹介してよ!私が見抜くから」

「ソイツは、ありがたい。ココはオレの奢りだ、呑んで食って吐け!」

平林は、

「私、いくら呑んでも吐きません事よ!オホホ」

「気持ち悪りぃな、醜女」


週末、オレと宮里と平林の3人で食事した。

近所のフレンチビストロで、ジビエで有名な店だ。

「初めまして、宮里理恵と申します」

「こちらこそ、初めまして。平林久美子です」

「宮里ちゃん、平林は僕と同期でね、万年平社員なんだ。飲み友」

「今夜は、こんなお店での食事が出来て嬉しいです」


3人には、赤ワインで乾杯した。

お兄ちゃんが、鴨肉のサラダを出した。

宮里は写真を撮った。

オレと平林はワインをグレープジュースの様に飲む。

ボトルが半分ほど減った。

1時間もすると、酔が回りハシゴした。

しめの寿司屋。

丸八寿司に向かった。

「宮里さんは、コイツのどこが良いの?」

と、平林が切り込んだ。


「私、クタクタのサラリーマンが好きで、秋田さんと出会ってから、数ヶ月経ちますが、初めて声を掛けてみたんです。それで、初対面の方なのに、色んなお店を紹介して頂いて、好きになりました」

と、あがりを飲みながら宮里は答えた。

「あんた、誰でもかんでも飲み友になろうとするへきがあるよね」

「うるせぇ、ババア」

オレは、日本酒をひやで呑んでいた。

「今は、若い子ってアイドルに夢中なるけど、この秋田を選んだのはすごいね。コイツ、ホントは優しいから」

平林はコハダを口に運ぶ。オレもコハダが大好きだ。

「変に格好つけてないし、でも、そこが好きなんです」

「宮里さんは、デブ専なの?」

「アハハハ、違いますよ」

「オレ、ちんこ小さいよ!それに、ED」

「あんた、それホントセクハラよ!取り消しなさい」

「事実だ!」 

「ゴメンね、宮里さん。コイツ場所を構わず下品事を言うから」

と、平林はオレの代わりに謝った。

「そこも、好きです」


時間は21時。ちょっと早いが解散して、オレ真っすぐ帰宅した。

LINEの通知音が鳴る。

読むと、平林久美子からだった。

「あの子、信じていいわよ。誠実で優しい女の子。気遣いのできる子。だから逃がしちゃダメよ」


「今夜はアリガトな」

と、返信した。


そのあと、また通知音が。

宮里理恵からだった。

「今夜はご馳走様でした。来週末、どこか行きませんか?」

オレは迷った。こんなダサい格好の体型の男も並んで歩かせるのは気が引ける。

「パチンコデートしよう」 

と返信して、寝落ちしてしまった。

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