第8話秋田、迷う

オレは週末、白川大介と立山愛を連れて韓国焼き肉屋で飲んだ。

ここは、マッコリで乾杯して、皆んな酸っぱそうな顔をしていた。

マッコリは、酸味が強い。

韓国人店員に、オレが、

「カンジャンケジャンある?」

と、言うと、

「お兄さん、カンジャンケジャンは要予約だよ」

と、言って、タコのチャンジャを持ってきた。注文はしていない。常連さんの、オレへのサービスだ。

オレは、白川と立山にどうやったら、カッコいいミドルになるか?尋ねる事にした。

白川は40歳で、立山は30歳だ。

オレより若い。


「とりあえず、その腹どうにかしましょうよ!」

と、白川は言う。

「あら、体型は関係無いんじゃない?白川さん」

と、立山は応戦する。

「ま、詰まりだ。直ぐにカッコよくなれる方法をば、オレは聞きたい」

とマッコリをのみながら、チャンジャに手を付けて話した。

「髪型ッスかね」

「髪型?」

「だって、立山さんずっと、七三じゃないですか?」

「七三がわるいの?真ん中分けばかりしていたら、ハゲるよ!」

と、オレは答えた。

「私、良い美容室知ってますから」

た、立山は応援してくれた。

「で、相手はいるんすか?秋田さん」

と、白川はサムギョプサルをレタスで包みながら言って、

「まだ、恋愛感情はないんだが、相手はその気で……24歳」

「え?24歳?」 

「秋田さん、犯罪級ですよ!」

「何が?」

「秋田さんが、24歳の女の子にデレデレしてるところ、見たくないな!」

「馬鹿モノ!だまらっしゃい!オレだって、困ってるんだ」

オレはマッコリをお代わりした。

店員が、

「お兄さん、今日も元気ね」

「うるせぇ、ババア、しっしっ!」

と、手で追い払うと、

「おかしいよ24歳で、秋田さんを選ぶなんて」

「白川さん、それって、秋田さんに失礼よ!秋田さんこう見えても、ホントは優しいんだから。仕事も出来るし。この前の仕事を受注出来たのは、秋田さんのお陰じゃない。ね?秋田さん」

と、立山はカクテキをつまむ。


「オレは、年齢はどうでも良いんだ。恋愛をしたい。学生時代の様な、プラトニックラブを」

「アハハハ、それは無理ですね。秋田さんに、プラトニックラブは」

「何で?」

「だって、デブだから」

「白川!いくら何でも、秋田さんに失礼よ」

「愛ちゃん、もう良いよ。2人ともアリガトな。ここに1万円置いておくから、あとは2人で楽しみな」

と、オレはテーブルに1万円札を置いて、店を出た。


白川の言う通りかも知れない。オレはデブだ。

だが、今後、白川とは飲むまいと決めた。あんな、デリカシーのない人間とは。

今夜も平林を呼ぼうと思い、電話した。

平林は、留守電になる。


しょうがない、1人で柳橋市場の場外の丸八寿司で飲み直していた。

そこに、谷課長の姿が。

「谷課長、何してんの?」

「……ま、まあ、付き合いで」

どう見ても、キャバ嬢だった。

「谷課長、年齢考えろよな!恥ずかしい」

「頼む、秋田君、これはヒミツで。奢るから」

「あんたに、奢られる筋合いは無い」

オレは、生ビール一杯で店を出た。


バーに向かった。

1人でバーボンを飲んでいると、女性が座った。

女性はハンカチで目頭を押さえていた。

よく見ると、平林だった。

「よう、平林」

「あ、秋田君」

「どうした?悲しい事でもあったのか?」

「それがさぁ〜、女子会だったんだけど、私と付き合うような男はろくでもないっていうのよ」

「頭来るな!オレも白川にデブに女の子が出来るのがおかしいって言っていたよ」

「アイツ、酷いこと言うわね。アイツ、営業三課を外そうよ!秋田君なら出来るよね?」

「……まぁね。谷課長に月曜日言うわ。オレも頭に来てね。アイツの世話見て来たのに。平気で酷い侮辱するもの」

オレは平林と2人で飲んだ。


オレは、平林と飲むと心が自然と落ち着く。だが、恋愛対象ではない。親友なのだ。


2人で、深夜23時まで飲んでいた。

色んな話しをした。

映画のこと、絵画のこと、そして、異性のこと。

そこで、ヒントを得た。

それは、宮里の前で素の自分を見せる事が重要だと。

その日は、オレの奢りで平林は飲もうとしたが、いざ支払いになると平林が支払った。

オレは、平林に丁重にお礼を言ってタクシーで帰宅した。

家に着いたのは、23時半ごろだった。


家で、スマホをみると、宮里理恵からLINEが合ったらしい。


「明日、予定はどうですか?」

と。

オレは、直ぐに返信した。

「朝から開いてるよ」

と。

直ぐに返って来た。

「明日、名港線の東海通とうかいどおり1番出口で待ってます。11時にお好み焼き屋さんに行きましょうと」

「わかった」

と、返信してシャワーを浴びて、ベッドに飛びこんだ。

明日は土曜日。

昼からのビールも悪くない。そのうち、寝てしまった。


とりあえず、白川大介は1カ月後に苦情専門センターへに異動になった。

大人を怒らすと、自滅するのだ。

谷課長は知らないが、実は秋田と社長は同じ県人会の仲間だったのだ。

それを、周囲は知らないのだ。

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