第9話お好み焼きデート
昼の11時半、土曜日、
秋も近いのだが、まだ、暑い日だった。
オレはTシャツにジーンズで、1番出口でタバコを吸いながら宮里を待っていた。
「秋田さん!」
振り向くと宮里だった。
宮里は胸の谷間を強調するかどうかの、タイトなTシャツで黒のパンツだった。
オレは、目のやり場に困るが、別に小娘の乳を見て鼻の下を伸ばすような、谷課長の様な馬鹿ではない。
「よく知っていたね。このお好み焼き屋、十文字を」
「学生時代から、通っています」
「じゃっ飲もっか?」
「秋田さん、その前に」
と、宮里はバッグからドリンク剤をオレに渡した。
それは、「ウコンの力」だった。
2人して、飲んでから十文字に入った。
客が数組いた。
席に着くと、まずオレは生ビール、宮里はハイボールだった。
豚玉とデラックス、そして、鉄板焼きを注文した。
オレはお好み焼きを焼くのが下手だ。
宮里が2枚焼いてくれた。慣れた手つきだった。
鉄板焼きも塩コショウで焼いて、2人して食べ始めた。
青のりはかけないように頼んだ。
何故なら、青のりは歯に付くと取れないからだ。だから、宮里は自分が食べるものだけに青のりを振った。
昼間から、オレは美女で巨乳の女の子と飲んでいる。オレはブタだが、豚玉を食べている。
周りからすれば、飲み屋のねぇちゃんと飲んでると思われて当然だろう。
「理恵ちゃん、この前職場の後輩と呑んで、君の事話したら、デブは恋愛しちゃダメらしいよ!」
と、3杯目の生ビールを飲みながら言った。
「誰です?そんな、馬鹿は?私は秋田さんが好きなんです」
「……」
「あ、言っちゃった!」
「……」
「秋田さんは、魅力的です」
「お、オレ、短小包茎でEDだよ!」
「そんなのが、目的ではありません。私思うんです。秋田さんは、何でも頑張り過ぎるから、ちょっとは休んでもらいたんです。たとえば、彼女のひざ枕で寝たり」
「ちょっと、待ちなさい。オレは君を彼女にしたいって、言ったかな?」
「……いいえ。でも、そっちの方が楽じゃないですか?」
「据え膳食わぬは武士の恥。宮里理恵ちゃん、オレの彼女になってもらえませんか?」
宮里は、破顔して、
「ウンウン、良いですよ。これから、秋田さんは私が彼女です。この店出て、どっかで飲みませんか?」
「え?これから。……どこがあるかな?今何時?」
「ちょっとだいたいね〜、今、待ってぇーねぇー」
「オレは、そのギャグ大嫌い!」
「金山総合駅の店は?」
「あ、カモンね。カモンなら良いや。名港線で金山まで1本だから」
2人して店を出た。
オレは道を歩きながら、自然と車道側に立ち、左手で宮里の手を握った。
宮里はびっくりしたが、2人は幸せそうに手を繋いであるいた。
オレは、高校時代ぶり30年弱のフリーを卒業した瞬間だった。
2人して、歩き、地下鉄に乗ると、自宅最寄り駅に着いた。
腕時計を見ると、金曜日の夜23時半ごろ。
さっき、平林とバーで別れてタクシーに乗った事を思い出す。
「ちっ!夢か!良い内容だったのに」
その時、LINEの通知音が。
「秋田さん、お話ししたい事があるんですが、明日のご予定は?」
「空いてるよ」
「では、明日11時半、金山総合駅のカモン前で待ってます」
「分かった」
何だか、不安になってきた。だが、その不安は的中する。
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