第10話ストーカー
土曜日の11時半、金山総合駅の2階の海鮮居酒屋カモンの前に宮里は立っていた。
そこに、オレは合流して店内に入った。
宮里も酒が好きらしく、オレは瓶ビール、彼女はハイボールだった。
ツマミは適当に刺盛りで乾杯した。
「ねぇねぇ、悩み事ってなぁに?」
オレは、夏の旬、スズキの刺し身に手を伸ばした。
「実は、ストーカー被害に遭っていて」
「ストーカー?」
「はい。毎晩、私の後を着けて来て、マンション前まで、じっと見てるんです」
「ほう、変態か?」
「何か、スマホで写真撮ってるようで」
「毎晩かい?」
「はい、毎晩」
「安心しな、今夜はそのストーカーとやらを退治してやる」
「どうやってですか?」
「捕まえるんだよ!」
「甘えて良いのでしょうか?」
「甘えなさい。さ、そんな話しはどうでも良いから飲もうよ」
「……どうでも良い事はないですが、何か気楽になれました。ありがとうございます」
オレたちは、海鮮料理と酒を楽しんだ。
腕時計を見ると、15時過ぎ。
ちょっと早いが、犯人を捕まえたいので最寄り駅から先に宮里を歩かせ、その後をつけた。
すると、60代らしき男が途中からずっと宮里の後を追っていた。
宮里が、マンションのエントランスに入ると、スマホを向けて彼女の姿を撮っていた。
「おじさん、何してんの?」
と、オレは男に声を掛けた。
男は走って逃げた。しかし、オレはデブだがまだ、60代に負けない。男は派手に転んだ。
「すいません、すいません。お兄さん許してっっ」
「許せねぇなぁ。オレの妹のストーカーをする野郎は」
「お、お兄さん?すいません!もうしません」
「ちょっと、警察呼ぶからね。リエちゃん、電話して」
2人の後を追ってきた、宮里は警察に電話した。
10分後、パトカーが到着した。
男は警察に引き渡し、オレと宮里も警察署へ連れて行かれた。
男は、前科のあるストーカー野郎だった。
他にも、ストーカーしていて盗撮の記録も残っていたので、逮捕された。
オレと宮里は警察に必要事項を話して解放された。
宮里は、今日1番の笑顔だった。
そして、彼女が言った。
「飲み直しませんか?」
「えっ?」
「私の親戚の店です。汚い店ですが、味は保証します」
どうやら、オレと宮里は相性が良さそうだ。
タクシーで到着したのは、中華料理屋だった。
「いらっしゃいませ。姪から話しは聴いております。ありがとうございました。秋田さん。今日は、お礼なので好きなモノをご注文下さい」
「じゃあ、紹興酒30年モノを」
と、オレが言うと、
「じゃ私も」
と、宮里が言って、おばちゃん店員はカメごと持ってきた。
紹興酒の30年モノは相当美味しかった。
また、料理が美味いの何の。
20時、オレはお礼を言って店を出る時、
「理恵、良い彼氏さんだね」
「おばちゃん、まだ、彼氏じゃないよ」
「そうでした。ありがとうございました。秋田さん」
「今日は、ホントにご馳走様でした。ありがとね、リエちゃん」
オレはタクシーをつかまえて、宮里を送り、帰宅した。
シャワーを浴びて、扇風機とクーラーで寝た。
久し振り、気持ちの良い眠りに落ちたのだった。
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