第7話秋田改造計画
朝8時半、林建設営業三課。
「皆さん、おはようございます。今日は、大事な入札があります。坪井君、分かってるね?」
と、谷課長がそう言うと、
「はい、心得ています」
と、坪井は答えた。
「そして、今日は大きな取引先との会合が控えている。秋田君、担当だったね?」
「……」
「秋田君!」
オレは遅刻していた。会社にはいるのだが、お腹を壊しトイレに籠もっていた。
「課長、秋田さんは今トイレです」
と、立山恵が言った。
「なんて、緊張感のない奴だ!」
すると、
「お待たせしました。皆さんおはよう」
と、オレは言った。
「秋田君、例の会合はどうなんだい?」
「問題無いっすよ」
「いちいち、軽いんだよ。今日は、平林君と共に、平田動物園の会合に出席して、上手く話しを進めるんだ。分かったな」
「うるせぇな。分かってるっちゅうの」
「秋田!何だよ。その言い方は!」
「課長、あの事がバレてもいいんすか?」
「……」
「ま、大問題ですからね。黙ってます」
「……頑張ってくれ」
それぞれ、準備に移った。
オレと平林は、平田動物園へタクシーで向かった。
「ねぇ、秋田君。課長、何したの?」
「え?課長?何もして無いよ」
「でも、秘密を知ってるんじゃ」
「お前も、馬鹿だな。人間に秘密の一つや二つはあるもんさ」
「策士だね」
「まぁね。あのさ、オレは自分を変えたいんだ。ナイスミドルになりたいんだ。どうすれば良い?」
「今日の会合の後、考える。緊張しちゃって」
「何で緊張すんのさ。平田動物園の園長は、知り合いでね」
「え!……なんの?」
「県人会で何度か飲んだ事があるんだ。お前、今日は酒飲むから、会社には直帰としていてくれ。お前は会社に戻れよ」
「……ますます、秋田君が分からなくなる」
2人は平田動物園に到着した。
会合が始まる。
同業者が集まっていた。入札でどこが受注するかを決めるのだが。
会合が済むと、オレは園長の志村さんに声を掛けた。
「園長、久し振り!」
「おぉ〜、やっぱり秋田君だったか?」
「はい。もうお昼ですし、どこか行きませんか?」
「良いねぇ。この前の県人会に秋田君は芋焼酎じゃなくて、ずっとハイボールだったね?」
と、白髪のオジサン園長はにこやかに話していた。平林に気付いた園長は、
「君、名前は?」
「平林です。平林久美子と申します」
「よし、平林君、君もどうだい?」
「はい、是非」
と、オレと志村園長と平林はタクシーで目立たない、寿司屋に向かった。
柳橋市場内にある、丸八寿司に到着した。
平林は会社に戻らないと行けないので、始めのうちは、志村園長のグラスにビールを注いでいたが、園長が君も飲みなさいと言うので平林も嫌いでは無いのでビールを飲んだ。
園長が職員に、打ち合わせと言って直帰の連絡を入れると、平林もオレと同じく直帰の連絡をした。
「園長、オレ、県人会でなんて呼ばれてます?」
「アハハハ。気になるのかね?」
「はい」
「さては、恋煩いだな」
「まぁ、近いものでして」
「そうだね、君は痩せなくてもモテると思うよ。ババアのアイドルじゃないか」
と、園長はガバガバとビールを飲む。
少し顔の赤い、平林はニヤニヤしながら、鉄火巻きを口に運んでいた。
オレは、
「園長、どうすりゃ良いのかなぁ」
「今度、県人会長の笹田さんに女の子紹介してあげるように口添えしようか?」
オレは首を横に振り、
「いえいえ、もう目星は付けてるんです」
昼間の宴会は14時まで続いた。
平林は先に帰ってった。
オレと園長はスーパー銭湯に向かった。
2人して、湯船に浸かり、
「ねぇねぇ、今日はアリガトな秋田君。また、来月の県人会は来てくれよ。それと、これは独り言だから。3億5千万円くらいかな」
「園長、ありがとうございます」
「何の事?独り言だから」
「……分かりました」
数週間後、平田動物園の改修工事は林建設の仕事となった。
オレは、月間MVPに選ばれ、社長賞として、100万円の手当が付いた。
その数週間の、話しをしよう。
宮里とは、結構仲良く食事やカフェで楽しんでいた。だが、まだ、恋愛感情は湧いて居なかった。
後輩の白川大介と立山愛を連れて飲みに行った。
コイツラなら、オレの改造に力を貸してくれるだろう。
45歳デブのオッサンの改造計画が始まった。
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