第2話オッサンと女性
オレは、会社のエントランスで2人を待っていた。
同じ課の平林久美子と広報の立山愛を。
平林はオレと同い年の45。
立山は30だ。
しばらくすると、2人がエレベーターから出てきた。
「秋田君、お待たせ。行こっか」
と、平林はニコニコしながら言った。オレは2人を大衆居酒屋の「きも善」に連れて行った。
予約を入れてあるので、座敷席に案内された。
とりあえず、オレは生ビール。女性らはハイボールだった。
ツマミは適当に2人に任せた。最近垢抜けてきた、女の子店員が酒を運んでくる。
3人で乾杯した。
焼き鳥と、刺し身が出てきた。刺し身は6点盛り。
立山は、スマホで写真を撮った。
最近の奴らは、とりあえず料理をカメラで撮る。
オレは生ビールをがぶ飲みして、お代わりした。
「秋田君、そんな飲み方すると身体壊すわよ」
「うるせぇババア、もうオレは糖尿病だよ」
「秋田さん、ビールは太りますから、他のお酒で……」
「ビール、ダメなの?じゃ、日本酒で」
「バカバカ、日本酒はダメ。ウイスキーか焼酎か?」
「平林、お前医者と同じような事言ってんな」
「これでも、45ですもの。ね?愛ちゃん」
オレは3杯目はハイボールにした。
ここで、2人に確かめたい事がある。どうしても聞きたい事が。
「ねぇ、平林、愛ちゃん、オレって魅力的な男性かなぁ?」
平林は吹き出した。
「馬鹿ね、秋田君。そんな体型で、ビールガバガバ飲むような男が魅力的?私が紹介しょうか?女性を」
オレは直ぐに反応した。
「私の家の隣にグループホームがあるの。ちょっとお年寄りだけど、女性は沢山よ」
「ひ、平林!テメェ、ババアと付き合えと言ってんのか?」
平林はハイボールを飲みながら、
「女性には、変わりないよ」
「オレはこう見えても、若い女性が好みなんだ。ね?愛ちゃん」
立山は顔をしかめて、
「秋田さん。気持ち悪いです」
「……じ、じゃぁどうすれば、良いんだ?」
「ま、恋愛は交通事故と同じ。いつ、どこで起きるが分からない。ま、私らがいれば寂しく無いでしょ!」
「……うん。まぁね」
「宜しい。ここは私が払うから、次の店は秋田君、お願いね」
オレは、ネギマを食いながら頷いた。
2軒目は、お食事処の「三嶋屋」。
ここで、3人は芋焼酎のお茶割りを飲んだ。
「だから、言ってんじゃん。グループホームは、ヤダって」
平林はまだ、オレとババアを付き合わそうと、必死だ。
「愛ちゃんは、彼氏とかいるの?」
「秋田君、それ、セクハラよ」
「そうか、そうか、ゴメンね」
「私は彼氏と先週別れました」
「え?愛ちゃん、あのイケメンと別れたの?ちょっと聴いてあげてよ秋田君」
焼酎を飲みながら、オレと平林は立山の話しを聴いた。
「私、二股掛けられていたんです。もう1人の女性を妊娠させたみたいで、私と別れて向こうと籍を入れるんです」
立山は伏し目がちに話した。
オレは怒りが込み上げてきた。
「良し!愛ちゃん。その男を殴りに行こう!贅沢は日本の敵です。オレなんて、1人も彼女いないのに!二股だと!そして、妊娠?許せん!うちの愛ちゃんを」
「まぁまぁ、そんなに興奮しないで、秋田君」
「私が悪いんです」
「何も愛ちゃん悪く無いよ!」
と、オレは力む。と、立山がボソリと言う。
「実は、私も二股掛けていたんです。で、二股がバレて、2人とも離れて行って」
オレは理解は出来なかった。焼酎をがぶ飲みした。
平林は、落ち着いた口調で話し掛けていた。
オレは、一体何をしてんだか。そして、今の若い子らの恋愛観が全く分からない。
「すいません、秋田さん。こんな話ししちゃって」
「良いんだょ〜。このお節介焼きのちりめん問屋のオジサンが話しを聴いてあげるから。な?お銀」
「誰よ!私がお銀?」
「悪い?」
「……ね、ねぇ、愛ちゃん。今夜は思いっきり呑んで、忘れようよ」
「ありがとうございます」
「この男、金は無いけど、飲み代だけはたんまり持ってるからさ」
「うるせぇなババア。もう1軒だ!出るぞ
!」
3人は瞬くネオン街に消えて行った。
翌日、オレと平林は平気な顔して出勤した。
オレらに、二日酔いと言う概念が無い。立山は今日は病欠らしい。
あれだけ飲んだんだ、二日酔いするだろう。
数日後、平林がオレに耳打ちした。
その言葉に魂消た。
「愛ちゃん、妊娠してるらしいわよ」
次の更新予定
アンブレラの下に、君はいる 羽弦トリス @September-0919
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