第19話ネギマの姫様

オレとリエ、平林は当てもなく歩いていた。

すると良い匂いがして来た。その匂いの元へ歩くと、焼き鳥屋だった。

やきとんの「はせ川」。

この店は過去に1度だけ来たことがある。やきとんで有名だ。焼き鳥もあるが、串カツや土手煮が美味しい。

運良く、テーブルが空いていて他の客は店外ど立ち飲みだ。

生ビールなんて無い。日本酒か瓶ビール。

瓶ビールは勝手に冷蔵庫から取り出して、飲むが慣れた客の飲み方だ。

オレはキリンクラシックラガーを2本取り出して、3人で乾杯した。


平林はもう、失恋の傷は癒えたようでガハハハと笑っていた。

リエがあのネギマ頼んでいいですか?というので10本注文した。串カツ70円、とんちゃん80円、ネギマ80円なのだ。

平林は値段に驚き、味に驚いた。

じいさんがネギマを持ってきた。

「はい、おまち。待たせたねぇ」

「いやいや。オジサンも1杯どうだい?」

「えっ良いの?」

と、既にグラスを持っていた。

「ありがとうね。わしゃ、仕事は遅えけんど、飲むのは早いんだわ」 

と、ビールを飲んで、他のテーブルでもビールを飲んでいた。


すると、リエが、

「このネギマ変です」 

「何が?」 

「鶏肉じゃないんです」

「宮里君。君は大事な事を知らない。ネギマはネギマグロの略だよ」

「……えっ、そうなんですか?」

「私も秋田君に教えてもらったの。20年以上前に。ね?」

「そうだったな。懐かしいな。リエちゃんと同じ様な事を言ってたな」

「秋田君に、このネギマ腐ってるって、言ったら1時間焼き鳥の演説をしたわよね」

「そんな〜時代も〜あったねと〜♫」


オレはネギマを楽しむ。リエはネギマを珍しがって食べていた。

「この後、どうする?3Pでもする?」

「秋田君の馬鹿!乙女の前でそんな下品な事を言わないの!」

「じゃあ、どうする?」

「私が行きつけの店に行こうよ。ここから、近いわよ」

「吉野家とかやだよ?」

「馬鹿ね。海鮮居酒屋よ」

「海鮮居酒屋……あ、あったあった、何だっけ?さがり屋」

「あんた、本当に馬鹿ね。居酒屋いかり屋よ」

平林が会計して、3人で歩き始めた。

ここは、3500円だった。激安だ。


いかり屋に着くと、店内は活気に溢れていた。座敷席に案内された。

オレは芋焼酎、平林はハイボール、リエはレッドアイを注文した。

「秋田さん?」

と、誰かがオレに声を掛けた。振り向くと田端ちゃんだった。若い衆を引き連れて飲んでいたのだ。

「秋田さん。お疲れ様です。今日はありがとうございました」

「いやいや」

「オメェらも、挨拶せんか!秋田さんだぞ!」

と、若い衆を注意する。

「あれ?今夜は、西はいないんですか?」

「いやね、毎回誘うと彼は家庭持ちでしょ?悪いから」

「……そうですね」

「あ、平林、リエちゃん、紹介するね。田端工務店の田端さん」

「こんばんは」

「こんばんは」

と、平林とリエは挨拶した。


「皆んなで一緒に飲みませんか?」

「良いねぇ」


オレらは、テーブルをくっつけて、8人席にした。

今夜は面白い事が起きそうだ。まだ、リエは酔っ払って無い。

頼むから、脱ぐなよ!脱ぐなよ!絶対に脱ぐなよ!

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