第22話女・小杉

LINE電話が鳴った。

オレは出た。昨日出会った小杉からだった。

「もしもし、秋田ですが」

「あ、秋田さんですか?今、帰宅途中なのですが話しを聴いてもらいたくてお電話しました」

「あぁ〜、そう言う事かい。おでんの「大番」知ってる?。そこで、部下と2人で飲んでるけど知らない?」

「知ってます。おばあちゃんの店ですよね?」

「そうそう、死に損ないのババアと、クソババアの店。今、空いてるよ」

「15分後には到着します」

「うん、待ってるね」

「は〜い」


オレはスマホをポケットに入れた。

「誰が来るんスカ?」

「お前が好きそうな、美人教師だよ」

「秋田さん、ほとんど飲み友達、女性ばっかじや無いですか?」

「田端ちゃんは男だよ」

「でも、平林さんや、宮里さん、他も女ばっか」

「あの、馬鹿作家の羽弦トリスも飲み仲間は女性ばっかだよ」

「誰ですか?トリスってヤツは」 

「だから、馬鹿作家だよ」

「僕は本読まないですから」


15分後。


「いらっしゃい」

「あのぅ、秋田さんは?」

「あ、お連れ様ね。奥の座敷席よ!それより、あなたおっぱいデカいわね。お母さんホルスタイン?」

「違います」


「おっ、小杉ちゃん、こっちこっち」

と、オレは手招きした。

「こんばんは」

西は緊張して、

「こ、こんばんは」

「彼女はね、小杉工業の娘さんで、高校教師なんだ」

「初めまして。小杉です」

「初めまして、に、西です。僕は馬鹿だから、高校中退しましたが。大丈夫ですか?」

「西、学歴は関係ない。実力主義だ。この前、谷課長がお前の仕事ぶりを評価していたぞ」

「え?ホントっすか?やはり、秋田さんの下で良かった」


「で、小杉ちゃん、何の話しだい?」

小杉は生ビールを注文して、おでんの大根、玉子、こんにゃくを追加した。


「じ、実は。同僚の音楽教師が生徒と関係を持って、妊娠したんです!」

「……に、妊娠。犯罪じゃないか?」

「生徒は、18歳で成人しています。これは、当事者と私しか知らず、秋田さんのお知恵をお借りしたくて」

「結婚だな?」

「結婚!!」

「生徒は未必の故意だ。生徒にも責任はある。同僚に言いなさい。結婚を」

「でも、同僚、既婚者です」


西は焼酎を吹き出した。

「……離婚だな」

「やっぱり、そうですよね」

「当たり前だ。それか、堕ろすか?」

「それも、選択肢に入っています」

「西、どう思う?」

「その男が近くにいたらぶん殴りますね」

「当然の発言だ。良いぞ!西」


「ま、話しは堕ろす方向で、いいんじゃない。この、妊娠は誰もが損する。幸せになれない。それが今夜の解答だ」

「あ、ありがとうございます」

「さ、さ、飲みなさい。焼酎飲める?芋だけど」

「はい、頂きます。乙女割りで」

と言うと、西が焼酎2、お湯8でお湯割りを作った。

小杉は、常識があり芯のある女だった。

色んな話しを聴いた。


時間は21時。

解散した。

8月の熱帯夜で汗が滲み出る。

シャワーを浴びて、麦茶を飲んだ。

風呂上がりの麦茶は最高だ。

LINEの通知音が鳴る。

小杉からだった。

「今夜の話しを同僚にしました。来週、産婦人科で堕ろすそうです」

と。

オレは、ソファーに座り、

リエの事を考えていた。

脱ぎ魔と決別したら、また飲もうと。

小腹が空いたので、コンビニで唐揚げを買って来て食べた。

まもなく、オレは寝落ちした。


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