清佳とムラサキと光の話

第6話

side:北条紫純


 助けてほしい。

 祐希か小野寺さん、笠原でも、百歩譲って咲坂でもいい。

 そう願ってはみたものの、当然、誰の助けもあるはずがなかった。ここは四階にあるアトリエだ。同階に俺以外の部屋はなく、俺に用がなければ訪れる人間はない。――しばらく待てば笠原が来る可能性はあるが、どの道助けが欲しいのは今、この一瞬だ。

 しばらく待つ余裕はない。

 だから今の思索に意味はない。

 俺は助からない。

 俺は。

 己の欲を堪え切れず、清佳さんを抱き寄せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る