・4
黄緑色がにじむ。
4時間目のチャイムが鳴って、立ち上がりかけたところで、麻美さんに引き止められる。
「一緒に行こ!!」
「‥‥‥‥」
なんか、友達みたい。
ちょっとうれしい。
「
身ぶり手振りで、なにか話している。
ボーッと見ていると、きらきらの笑顔でこっちに向かって走ってきた。
「いいって!!行こ!!」
私の手を、ぐいぐいと引っ張っていく。
「あ、あの‥‥‥‥」
私のことはお構いなしに、男子2人の元へ。
「東雲サン、可愛そうだろ。腰引けてるし」私を見た泉くんが言う。
「お前のせいで、飼い主が犬に散歩されてるみたいになってるぞ?」
「え?あ、ごめん」ぱっ、と繋がれていた手が解ける。
「いえ‥‥‥」
「シノ、食堂行くんでしょ?」
「みんなで行こ!!」
「おれ、弁当なんだけど‥‥‥」戸惑い気味に、泉君が言う。
「大丈夫だよ、あたしもだから♪」
1人分にしては明らかに大きすぎるお弁当を持って、元気よく先に行ってしまう。
「はやくー!!席埋まっちゃうよー!!」
一瞬で廊下の端までたどり着いた麻美さんが、階段のところから声をかけてくる。
「麻ちゃん、速いなー」
「そうですね‥‥‥」
「元気が有り余ってるんだよ。おれ無理。見てるだけで疲れる‥‥‥」そう言いながら、横であくびをする泉君。
「そうなんですか?」
「や、だって考えてもみてよ。4時くらいから朝練しといてあの元気だよ?」夜だって20時過ぎくらいまで部活あんのにさ、と付け加える。
「いつも元気ですよね」
「だから、元気が有り余ってんのか、ただのバカなのか____」
泉君がそこまで言ったところで、「いずみん、あたしの悪口言ってるでしょ!!」と廊下の向こう側からオレンジ色の声が聞こえる。
「やめてよねーっ!!」とは言うけど、そこまで怒ってなさそう。
「ほら、あーゆーとこがバカっぽいっつーか‥‥‥‥」
歩いて廊下の端までたどり着いたところで、麻美さんが「なに??」と聞いている。
「ん?そんなに食べてると太るよねって話」いたずらっぽく笑いながら、泉君が彼女の持っているお弁当を指差す。
そんな話、してなかったような‥‥‥‥?
「そんなことありませーんっっ!!」と麻美さんがほっぺたを膨らませている様子を横目で見る。
階段を駆け下りる彼女を「めんどくさい」と言いながら追いかける泉君。
「仲いいんですね‥‥‥?」
「なんか、中学から一緒らしいよ?」桜庭君が教えてくれる。
そうなんだ‥‥‥。
「慣れてきた?」
「え‥‥‥‥?」
「クラスの人と一緒にいるの」
「‥‥‥‥少しは」
ちょっとだけ、2人の関係が羨ましい。
言いたいことが言えて、仲が良くて。
でも、それは「自分」をさらけ出しているからで。
素の、自分だからで‥‥‥。
「‥‥‥」
私にはまだ、難しい。
「話せるじゃん」
「はい、少しは」
「ちょっとは近づいた?」
「え?」
「友達が欲しい、ってやつ」
「‥‥‥‥まだ、わからないです」
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