◇2色目 淡色の君

・1

「今日はね、転校生がね、居るんですけれどもね」と。


 丹色にいろの声で、担任のハゲおじさんが言う。





 いつもより色が灰色がかっているところをみると、ちょっと緊張しているのかな。





 緊張した時の声は、私には灰色がかって見えるのだ。


 緊張の度合いが増すにつれて、灰色に近くなっていく。








 「ど、どうぞ‥‥‥‥」と、さっきよりも灰色がかった先生の声。





 ざわざわ‥‥‥‥と教室がどよめく。







 ああ。嫌だ。





 うるさい。





 嬉々とした黄色の鋭い色が、眼に刺さって痛い。





 うるさい。





 うるさい。








 ヘッドフォンの上から手を当てがって、耳あての部分をさらに密着させるようにぎゅうっと押し込む。



 そうして目をぎゅっと強く。強くつむる。



 そうすると、音が遠くなる。



 色がぼやけて刺さらなくなる。







 ああ、楽____。













 「桜庭さくらば そうです」





 ____閉ざされた世界に。









 「東京から、来ました」





 ____新たな色が咲く。









 「よろしくお願いします」









 薄く、限りなく白に近い、水色。



 花色はないろの、心地のいい声が。耳元をかすめる。












 「わ‥‥‥‥」





 顔を上げた彼は、今まで見たどの人よりも、甘くて。やわらかい。



 やさしい、色をしていた。

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