・2
____朝。
「やった‥‥!!」
白い世界を見て、私は思わずそう口にした。
高校生にもなって雪の日が好きなんて、ちょっと変わっているかもしれないけれど。
それでも私は、雪の日が好きだ。
毎年寒くなってくるたびに、降り積もったあの白い景色を見るのが好き。
特にひどくならない限りは吹雪でも運行している電車に、他の地域よりも早めの積雪。
もちろん今日は、学校がある。
あと5分もすれば、お母さんから「早く起きなさい」と怒られるだろう。
もう起きてるもんね、と思いながら、パジャマを脱いで制服に着替える。
今日は目覚ましが鳴る前に起きれた。
アラームの音はギザギザした
今は設定の変更で、
そしたら天気の悪い日でも、きれいな色で起きられるから。
「ううー。さむ‥‥‥‥」
今年は寒くなるのが早かったせいか早々に冬服になり、
まだ11月に入ったばかりだというのにマフラーを巻くほど。
付けていた暖房の温度を上げ、くしゃみをひとつ。
ブレザーのボタンを閉めて、リボンをぱちんと付ける。
持っていくものは教科書と一緒にリビングに置きっぱなしにしているから、他には何もしなくて済む。
____と。危ない危ない。
これを忘れるところだった。
棚の上から愛用のヘッドフォンを首にかけて、リビングへと向かう。
とんとん、と階段を踏むたびに、
「おはよー」
私がリビングに入ると、お母さんが
この色は、優しくて好き。
「目玉焼きとベーコンなんだけど。ご飯とパン、どっちがいい?」
「パンで」
一週間前くらいに起きた、殺人事件の内容が流れている。
この色は、汚くて嫌い。
私には「
その名前を知ったのは、もう随分前のこと。
私のは聞いた音に色が見える、「
自分が他の子と違うと感じるのに、そう時間はかからなかった。
物心つく頃から、気がついたときには、もう私の聞こえるセカイは色に溢れていて。
みんな、同じだと思っていたのに。
「色が見える」って言った瞬間、みんなが私のことを「変な子」って言い始めたから。
「そんなのうそだ」「おかしい」って。そう言ったから。
別に、目が見えないわけじゃない。ちゃんと見えてる。色だって分かる。
ただそこに、音が、色になって、ステンドグラスみたいに重なるだけなのに。
____以来、私は。共感覚について、誰にも話すことはなかった。もちろん、家族にも。
お母さんには、もう知られているかもしれないけれど。
私を「変な子」にしてしまうそれは、私の「病気」になってしまった。
「学校、楽しい?」朝ご飯を食べる私に、若草色の声が聞く。
「うん」うなづくけど、そんなのは嘘。
私は、
そのせいで、友達なんているはずもなく。
それは高校生になった今も、変わっていない。
「7時、7時____」
朝ご飯を食べて赤紫色が見えたら、もう出る時間だ。
今日の時間割を、つぶやきながら確認する。
教科書の
「いってきまーす」
玄関を開け、パサッ、と傘を開く。
エメラルドグリーンが、にじんで消える。
____今日もまた、1日が始まる。
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