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「友達‥‥‥なんですか、私達」




「え、もしかして、俺だけだった?」




「友達‥‥‥‥」










「友達を作ること」は、私にとって、大縄跳びみたいなもので。



友達なんて、


大縄跳びは、






1度躓つまずいた人でも、普段飛べていれば応援してくれる。



いつも飛べない人にはブーイング。


怖くて踏み出せない人にもブーイング。






私だってみんなに迷惑かけたくないし、飛んでみたいけど。



どうしても、縄が遠くて。



背中を押してくれる人がいなければ、外野で見ているだけなのだ。












「だからさ、頼ってよ」




「‥‥‥友達だと、頼ってもいいんですか」




「うん。‥‥‥てか、そうしてもらわないと困る」








「桜庭君は、私だけの人じゃないので、‥‥‥頼るのは、ちょっと」





「え、何それ。そんなこと思ってんの?」





「えっ、あっ、ちがっ‥‥‥!!私だけに、仲良くしてくれるわけじゃない‥‥‥というか」





「あ、そういうこと?」





「‥‥‥はい」












「大丈夫だよ。俺は離れないから」












「‥‥‥え?」





「え、離れてほしい?うざい?」





「いや、そういうのではなく‥‥‥なんでかな、って」








「だってシノ、面白いし」






面白い‥‥‥?







「どこが、ですか?」





「そういうとこー」





どういうとこだ。








「‥‥‥答えに、なってませんが」





「いいんだよ、楽しいから」





「何ですか、それ」







やっぱり変な人だな、と思いながら、日誌に取り掛かる。



前は、なに書いたっけ。






見返してみると、私の時はずっと天気のことが書いてあった。



それか、1言だけの感想。「楽しかった」とか、そんなの。



みんなのと比べると、ひどく殺風景だ。





結局迷って、1言になっちゃうんだよね‥‥‥。



他の人は、『今日の先生の口癖〇回!!』とか、変なイラストとか。





少しだけいいな、と思いながら、やっぱり今日も、1言だけ。










「‥‥‥ん、終わった?」桜庭君が、日誌を覗き込んでくる。




「はい」




「‥‥‥え、これだけ?短いね」




「あんまり、上手く浮かばなくて」




「んじゃ、それ出しに行こー」さっさと立ち上がって、いつの間に鞄まで持っている。









「あの」




「‥‥‥ん?」




「桜庭君、なにしに来たんですか?」




「え、今更?」




「出ていく気配が、なかったもので‥‥‥」




「え、そんな邪魔だった?」




「邪魔、とかではなく。またこの前みたいに、忘れ物かな‥‥‥と」








「‥‥‥」




「‥‥‥?」いきなりの沈黙が、ちょっと怖い。








「シノってさ、天然?」




「‥‥‥はい?」天然、とは‥‥‥?




「____ま、いーや」なんて言って、ナチュラルに私のカ鞄も持って、教室を出て行ってしまう。



急いで、私もあとを追う。








「ありがとう、ございました」




「ん?」




「日直、手伝ってもらっちゃって‥‥‥」




「いいよ、そのくらい」






「‥‥‥あの」




「ん?」








「また、‥‥‥手伝って、くれますか」








「当たり前じゃん」ふわ、とはちみつ色がにじむ。







その笑顔を見て。




私もちょっとだけ、嬉しくなった。







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