・6
「友達‥‥‥なんですか、私達」
「え、もしかして、俺だけだった?」
「友達‥‥‥‥」
「友達を作ること」は、私にとって、大縄跳びみたいなもので。
友達なんて、いて当たり前。
大縄跳びは、飛べて当たり前。
1
いつも飛べない人にはブーイング。
怖くて踏み出せない人にもブーイング。
私だってみんなに迷惑かけたくないし、飛んでみたいけど。
どうしても、縄が遠くて。
背中を押してくれる人がいなければ、外野で見ているだけなのだ。
「だからさ、頼ってよ」
「‥‥‥友達だと、頼ってもいいんですか」
「うん。‥‥‥てか、そうしてもらわないと困る」
「桜庭君は、私だけの人じゃないので、‥‥‥頼るのは、ちょっと」
「え、何それ。そんなこと思ってんの?」
「えっ、あっ、ちがっ‥‥‥!!私だけに、仲良くしてくれるわけじゃない‥‥‥というか」
「あ、そういうこと?」
「‥‥‥はい」
「大丈夫だよ。俺は離れないから」
「‥‥‥え?」
「え、離れてほしい?うざい?」
「いや、そういうのではなく‥‥‥なんでかな、って」
「だってシノ、面白いし」
面白い‥‥‥?
「どこが、ですか?」
「そういうとこー」
どういうとこだ。
「‥‥‥答えに、なってませんが」
「いいんだよ、楽しいから」
「何ですか、それ」
やっぱり変な人だな、と思いながら、日誌に取り掛かる。
前は、なに書いたっけ。
見返してみると、私の時はずっと天気のことが書いてあった。
それか、1言だけの感想。「楽しかった」とか、そんなの。
みんなのと比べると、ひどく殺風景だ。
結局迷って、1言になっちゃうんだよね‥‥‥。
他の人は、『今日の先生の口癖〇回!!』とか、変なイラストとか。
少しだけいいな、と思いながら、やっぱり今日も、1言だけ。
「‥‥‥ん、終わった?」桜庭君が、日誌を覗き込んでくる。
「はい」
「‥‥‥え、これだけ?短いね」
「あんまり、上手く浮かばなくて」
「んじゃ、それ出しに行こー」さっさと立ち上がって、いつの間に鞄まで持っている。
「あの」
「‥‥‥ん?」
「桜庭君、なにしに来たんですか?」
「え、今更?」
「出ていく気配が、なかったもので‥‥‥」
「え、そんな邪魔だった?」
「邪魔、とかではなく。またこの前みたいに、忘れ物かな‥‥‥と」
「‥‥‥」
「‥‥‥?」いきなりの沈黙が、ちょっと怖い。
「シノってさ、天然?」
「‥‥‥はい?」天然、とは‥‥‥?
「____ま、いーや」なんて言って、ナチュラルに私のカ鞄も持って、教室を出て行ってしまう。
急いで、私もあとを追う。
「ありがとう、ございました」
「ん?」
「日直、手伝ってもらっちゃって‥‥‥」
「いいよ、そのくらい」
「‥‥‥あの」
「ん?」
「また、‥‥‥手伝って、くれますか」
「当たり前じゃん」ふわ、とはちみつ色がにじむ。
その笑顔を見て。
私もちょっとだけ、嬉しくなった。
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