4色目 ひみつ

・1

「しののめさんっ‥‥‥‥!!」






朝。教室に入ると、オレンジ色が視界に浮かぶ。




「はっはわ‥‥‥!!」




声が大きかったからか、目の前がチカチカする。



桜庭君以外に声を掛けられたことに驚いて固まっていると、「昨日はありがとうっ!!」と私に向かってくる麻美さんと目が合った。







「あ、あの‥‥‥」



「昨日の日直!!黒板そうじ!!」



「あ、はい‥‥‥‥」







ありがとう、なんて言われたのが久々で、照れくさくて俯いてしまう。




しかもこんな、お日さまみたいな子。







「次はあたしも、ちゃんとするからっ!!」


部活のリーダーが回ってこなきゃね!!と付け加える。




「は‥‥‥‥」


話しかけられた嬉しさと緊張と困惑で、首を上下に動かすことしかできない。














「しののめさん、大丈夫?なんか変な動きしてるけど‥‥‥」



カチコチになった私の顔を覗きこんでくる。







「あ、なんかちょっと、ビックリして‥‥‥」









「シノ、おはよ」









「ひゃぁっっ!!」突然肩に手を置かれて、飛び上がってしまう。




声のした方を見ると、「何回も呼んだのに」と驚いた表情かおの桜庭君と目が合った。







「‥‥‥どしたの?」



「なんかしののめさん、ビックリ装置みたいになっちゃって‥‥‥」



「‥‥‥?」



「さっきから、赤くなったり青くなったりしててさ」



と、2人で不思議そうに私を見つめる。 

  





う‥‥‥‥‥‥。


そんなに見つめられたら、恥ずかしいんですが‥‥‥‥‥‥。












「麻ちゃん、見すぎだって」



「え、あ、ごめん。なんか面白くて」






「あ、あの、私の方こそ、ありがとうございました。日直、手伝ってもらって‥‥‥」



「そんな‥‥‥日直なんだから当然じゃんっ?」



「‥‥‥‥でも、ありがとうございます」





私が深々とお辞儀をすると、「こちらこそ!!」とお辞儀を返してくれる。



それだけでなんだか嬉しくて、口元が緩む。






「しののめさんって、そんな表情するんだ‥‥‥」



「え、変ですか?」



「や、ちがくてさ。笑ってるの見たの、はじめてだから」





そういえば、そうだったかも。



自分ではあまり、意識してないけど。











「ずっと、そうしてればいいのに」














「‥‥‥っ」あ、まぶしい。















「ね、あたし、嫌われてる?」



「えっ!?」



「なんかしののめさん、あたし見ると嫌そうな表情かおすること多いから‥‥‥」少し色が暗くなる。








「あの‥‥‥」



なんて言ったらいいんだろ。


色のせいなんだけど、麻美さんを否定しかねない。








「麻美さんが、きらきらしてて、眩しいので‥‥‥‥」



「‥‥‥‥ふぇ?」



「なんかいいなって‥‥‥‥あ」ちょっと、素直に言いすぎちゃった。







「ごっ、ごめんなさいっ!!」



「なんで謝んの‥‥‥‥」顔を上げると、黄色い笑顔と目が合う。










「ありがとっ!!」










「は‥‥‥‥」また、ありがとう、だ。















「ねぇ」不機嫌そうな卯の花色。




「俺のこと無視?」いつの間に、私の机の上に頭を乗せている。






「なに、そうちゃんはかまってちゃんなの?」



「べつにー。2人がいい感じだったからさー」



全然話せないなと思って、と口をとがらせる。








「す、すみません‥‥‥‥」



「シノはいいのー」



「え、あたしが悪いみたいじゃんっ!!!」









「_____よ」



抗議している麻美さんの後ろから、にょきっと手が出てくる。








突然すぎてびっくりした。



思わず身体ごと反応しちゃったけど、多分誰も見てないはず‥‥‥‥‥。






萌黄色もえぎいろの声。



____えっと‥‥‥泉君だ。いつも桜庭君と一緒にいる。




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