・5

「‥‥‥‥や、なんかさ、ほぼ毎日見てる気がして」そう言って、私の持っているプランターを映す。



「あ、これ、ですか」



「日直の仕事なのに、なんでシノがって思って」





ああ‥‥‥‥。





「忘れる人が多いので、放課後にやってたんですけど、いつのまにか当番みたいになっちゃいまして‥‥‥‥」



「日直の人がやるんでしょ?」



「それは、そうですが‥‥‥‥」





「シノは、嫌じゃないの?」



「いや、というか‥‥‥‥私1人がやれば、いいだけなので‥‥‥‥」



「サボりたいとか思わないの?」



「面倒なとこは、回されますから。特に気にはしてないです」






「‥‥‥‥あ、それで終わり?」私が水をあげ終わると、彼も立ち上がりかける。



「あ、あと、日誌がまだ‥‥‥‥」



自分の席に腰かけて、日誌を開く。あとは今日の感想を埋めるだけだ。









「‥‥‥‥やさしいよね」今度は前の席の椅子に座って、こっちを見ている。



「なにがですか?」見られてると思うと、なんだかやりにくい。



「シノが、さ」



「え、私ですか?」





感想、なににしようかな。



他の人は担任の先生と仲がいいから、交換日記みたいになってたりするけど。



寄せ書きみたいなページを見て、ちょっとだけ羨ましいと思うのは、今に始まったことじゃない。





「だってそうじゃなきゃ、面倒なことやったりしないじゃん」



「‥‥‥‥忘れられてるから、やるんだと思います」



「‥‥‥‥?」



「同じだから、私と‥‥‥‥」



なに、言ってんだろ。

















「さみしいの?」










その答えは、あまりにも的確すぎて。



「そうかも、しれないですね‥‥‥‥」としか、答えられなかった。









「もうちょっと他の人のこと、頼ってもいいと思うんだけど‥‥‥‥俺とか」









「‥‥‥‥え?」





「ん?」顔を上げると、いじわるな笑顔と目が合った。









「やっとこっち見た」








「‥‥‥‥っ、なんで、そんなこと」




「それ、言わせんの?」








「‥‥‥‥頼って、欲しいんですか」




「欲しいっていうか‥‥‥‥困ったときに頼れる人が、いた方が、いいんじゃないかな、‥‥‥‥って」




「そうですか‥‥‥‥」




「麻ちゃんとか、受け入れてくれそうだけど」




「‥‥‥‥私、怖いんです。人と関わるのが。私に近づくと、その人まで、酷いこと言われるので」




「なにそれ」




「経験則です」




「‥‥‥‥?」






「これまでも何度か、仲の良い人が出来たことはあったんですが。____友達になったら負けのゲーム、みたいな‥‥‥‥」


「私が仲良くしようとすると、みんな離れていったので‥‥‥‥」






「‥‥‥‥そっか」




「‥‥‥‥はい」




「不安?そういうの」




「今でも、やっぱり、怖いです。だから、自分からは関係が作りにくくて」




「そっか」




だからって、動かないでいい理由にはならないことくらい、分かってるけど。








「いいよ。ちょっとくらい頼ってくれても」




その言葉に答えられないでいると、「だって、友達なんだし」と付け加える。




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