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「‥‥‥‥や、なんかさ、ほぼ毎日見てる気がして」そう言って、私の持っているプランターを映す。
「あ、これ、ですか」
「日直の仕事なのに、なんでシノがって思って」
ああ‥‥‥‥。
「忘れる人が多いので、放課後にやってたんですけど、いつのまにか当番みたいになっちゃいまして‥‥‥‥」
「日直の人がやるんでしょ?」
「それは、そうですが‥‥‥‥」
「シノは、嫌じゃないの?」
「いや、というか‥‥‥‥私1人がやれば、いいだけなので‥‥‥‥」
「サボりたいとか思わないの?」
「面倒なとこは、回されますから。特に気にはしてないです」
「‥‥‥‥あ、それで終わり?」私が水をあげ終わると、彼も立ち上がりかける。
「あ、あと、日誌がまだ‥‥‥‥」
自分の席に腰かけて、日誌を開く。あとは今日の感想を埋めるだけだ。
「‥‥‥‥やさしいよね」今度は前の席の椅子に座って、こっちを見ている。
「なにがですか?」見られてると思うと、なんだかやりにくい。
「シノが、さ」
「え、私ですか?」
感想、なににしようかな。
他の人は担任の先生と仲がいいから、交換日記みたいになってたりするけど。
寄せ書きみたいなページを見て、ちょっとだけ羨ましいと思うのは、今に始まったことじゃない。
「だってそうじゃなきゃ、面倒なことやったりしないじゃん」
「‥‥‥‥忘れられてるから、やるんだと思います」
「‥‥‥‥?」
「同じだから、私と‥‥‥‥」
なに、言ってんだろ。
「さみしいの?」
その答えは、あまりにも的確すぎて。
「そうかも、しれないですね‥‥‥‥」としか、答えられなかった。
「もうちょっと他の人のこと、頼ってもいいと思うんだけど‥‥‥‥俺とか」
「‥‥‥‥え?」
「ん?」顔を上げると、いじわるな笑顔と目が合った。
「やっとこっち見た」
「‥‥‥‥っ、なんで、そんなこと」
「それ、言わせんの?」
「‥‥‥‥頼って、欲しいんですか」
「欲しいっていうか‥‥‥‥困ったときに頼れる人が、いた方が、いいんじゃないかな、‥‥‥‥って」
「そうですか‥‥‥‥」
「麻ちゃんとか、受け入れてくれそうだけど」
「‥‥‥‥私、怖いんです。人と関わるのが。私に近づくと、その人まで、酷いこと言われるので」
「なにそれ」
「経験則です」
「‥‥‥‥?」
「これまでも何度か、仲の良い人が出来たことはあったんですが。____友達になったら負けのゲーム、みたいな‥‥‥‥」
「私が仲良くしようとすると、みんな離れていったので‥‥‥‥」
「‥‥‥‥そっか」
「‥‥‥‥はい」
「不安?そういうの」
「今でも、やっぱり、怖いです。だから、自分からは関係が作りにくくて」
「そっか」
だからって、動かないでいい理由にはならないことくらい、分かってるけど。
「いいよ。ちょっとくらい頼ってくれても」
その言葉に答えられないでいると、「だって、友達なんだし」と付け加える。
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