・4
「____あれ、シノだ」
「____あ」
放課後。黒板掃除をしている私の視界に、卯の花色がにじむ。
そういえば前も、こんなことあったな。
「何してんの、ばんざい?」
「あ、こ、これはっ‥‥‥‥!!」
いきなり人が入ってきたせいで、黒板を消すのに手を挙げた体勢のままになってた。
なんか、変な人みたい。
「日直?」
「‥‥‥‥はい」
「あれ、麻ちゃんは?」
「あ、えと、今日はっ、‥‥‥‥部活の、リーダーらしくて‥‥‥‥っ」
先生が黒板の上ギリギリまで書くせいで、背の低い私は椅子に乗っても届かない。
他のクラスは教卓があるのに、何故かこの教室にはない。今年は教室がハズレだった。
「‥‥‥‥っ」
椅子に乗りながら背伸びしているせいで、落ちないか心配になる。
椅子が変にガタついているから、余計に怖い。
「____ノ、シノ」
「は、はい!!」
黒板を消すことに集中しすぎて、全然聞こえていなかった。
振り向くと、桜庭君のネクタイが目の前に。
「手伝う」
彼はそれだけ言うと、上の部分を消してくれた。
黒板消しの擦れる、乾いた梅色がにじむ。
「これだけ?」
「あ、あと、お花に水をあげないと‥‥‥‥」
「こっちやっとくから、シノは他のことやってて」
「あ、ありがとうございます‥‥‥‥」
いいのかな。手伝ってもらっちゃって‥‥‥‥。
戸惑いつつも、プランターにジョウロで水をあげていく。
藍色の水の音と、黒板消しの梅色が視界に映っては消える。
「ね、」
「はい」
「シノってさ」
「はい」
「いつも日直やってんの?」
「‥‥‥‥え?」
思わず顔を上げると、いつのまにか黒板掃除を終えて、後ろの窓際の席に座っていた彼と目が合う。
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