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「____あれ、シノだ」




「____あ」





放課後。黒板掃除をしている私の視界に、卯の花色がにじむ。



そういえば前も、こんなことあったな。







「何してんの、ばんざい?」



「あ、こ、これはっ‥‥‥‥!!」





いきなり人が入ってきたせいで、黒板を消すのに手を挙げた体勢のままになってた。



なんか、変な人みたい。





「日直?」



「‥‥‥‥はい」



「あれ、麻ちゃんは?」



「あ、えと、今日はっ、‥‥‥‥部活の、リーダーらしくて‥‥‥‥っ」






先生が黒板の上ギリギリまで書くせいで、背の低い私は椅子に乗っても届かない。



他のクラスは教卓があるのに、何故かこの教室にはない。今年は教室がハズレだった。






「‥‥‥‥っ」




椅子に乗りながら背伸びしているせいで、落ちないか心配になる。



椅子が変にガタついているから、余計に怖い。






「____ノ、シノ」




「は、はい!!」





黒板を消すことに集中しすぎて、全然聞こえていなかった。



振り向くと、桜庭君のネクタイが目の前に。








「手伝う」





彼はそれだけ言うと、上の部分を消してくれた。



黒板消しの擦れる、乾いた梅色がにじむ。










「これだけ?」



「あ、あと、お花に水をあげないと‥‥‥‥」



「こっちやっとくから、シノは他のことやってて」



「あ、ありがとうございます‥‥‥‥」










いいのかな。手伝ってもらっちゃって‥‥‥‥。






戸惑いつつも、プランターにジョウロで水をあげていく。



藍色の水の音と、黒板消しの梅色が視界に映っては消える。











「ね、」



「はい」



「シノってさ」



「はい」



「いつも日直やってんの?」



「‥‥‥‥え?」






思わず顔を上げると、いつのまにか黒板掃除を終えて、後ろの窓際の席に座っていた彼と目が合う。




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