・3

「ごめん、大丈夫‥‥‥!?」卯の花色。水色が少し濃く見える。


 


「サク、何してんだよ」萌黄色もえぎいろの声。






顔を見て、雨宮あまみや君だったっけ‥‥‥?と内心首をかしげる。



似た色の人がたくさんいて、うまく思い出せない。






「は、はい‥‥‥」答えながら、散らばったファイルを集める。



「東雲サン、これ」雨宮君(?)が、落ちていたファイルを集めて渡してくれる。



「あっ‥‥‥!!ありがとうございます!!」



「これ、提出物?」聞きながら、ファイルを重ねてくれる。



「はい」



「麻ちゃんは?」聞き慣れないあだ名に少し戸惑ったけど、少しして麻美さんのことだと分かった。



「部活のミーティングに‥‥‥」



「サク、一緒にやってやれば?」



「え、俺?」



「うん。なんか、話しかけたそーにしてたしさ!!」



「いって!!」



ばしっ、と桜庭君の背中を叩いて、さっさと教室に入ってしまった。







「‥‥‥‥」



「‥‥‥‥」







「‥‥‥行こっか」桜庭君が、ファイルを半分持ってくれる。



視界が開けて、ちょっと歩きやすくなった。










「いずみんもさ、強引だよね」ちょっと困った表情かお



そう言われたところで、彼と一緒にいたのが雨宮君ではなかったことに気が付いた。





「私、ずっと雨宮君だと思ってました‥‥‥‥」



「え、そうなの?」



「色が、よく似てて」



「へぇ」





「よく、あるんです。顔覚えるのが苦手で‥‥‥‥」



「そっか。俺と一緒じゃん」



「はい‥‥‥‥え?」




一緒って。




「俺も、みんなの名前とか顔とか、覚えるの苦手でさ‥‥‥‥」




そうだったんだ。







「でも、私には、とてもそんな風には‥‥‥‥」



「俺、早く覚えられるように、あだ名付けてるんだ」





そうなんだ。あだ名って、そういう工夫だったんだ‥‥‥‥。






「その方が覚えられるし、仲良くなれるしさ」



「工夫してるんですね」



「だって、覚えてもらってたら、嬉しいでしょ?」



「‥‥‥‥そうですね」



「なんか、乗り気じゃない感じ?」





「私に覚えてもらって嬉しい人が、居るのかなーって思うと‥‥‥‥」



「えっ、シノ、そんなこと思ってんの?」








会話している間に、職員室の前についた。



2人で来たから、先生がビックリしてた。



いつも日直の日は、私1人だったから。











「あの、」




「‥‥‥‥ん?」



「ありがとう、ございました」



「うん。どうしたしまして」







過ぎ去っていく背中を見て。












「あの、‥‥‥‥」






「‥‥‥‥ん?」私の声に、ちゃんと向き直ってくれる。











「‥‥‥‥あ、いえ、何でも、ないです」






____だめだ。こんなこと頼んじゃ。












「‥‥‥‥ん、じゃね」




「‥‥‥‥はい」








____また、助けてほしいなんて。





そんなこと言ったら、だめだ。










桜庭君は、私だけの人じゃないから。






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