・9

「‥‥‥‥え、普通にすげーと思うけど。それがなんか、問題なの?」



「すごい、ですか?」



「カラフルで、楽しそうだなって」



「‥‥‥‥‥‥‥‥そうですか」



「それって。シノがってこと?」



「もしもって、言ったじゃないですか‥‥‥これ以上は聞かないでくださいね。友達の、話です」



「なんだ。友達か」



「‥‥‥‥え」



「シノだったら、もうちょっと色々、聞きたかったんだけど」


そう言って、いじわるな笑顔を向けてくる。



「え?」



「だって、あんまりシノと話す機会ないじゃん。体育とか別だし。すぐ席替えしちゃったから、離れたしさー」



「桜庭君は、私と話したかったんですか‥‥‥‥?」



「話したかったっつーか。クラスでよく知らないの、シノくらいだし」







桜庭君、人気だからな。


もともと私が話していい部類の人じゃないことくらい、分かってたけど。



私なんか、きっと眼中にもないんだろう。





彼の友達になる人は、たぶん、もっときらきらして、もっとふさわしい人で。



長く、みつあみになった髪が視界に入る。



こんな教室の隅の、冴えないみつあみメガネなんかじゃ、ないんだろうな。








「他のヤツに聞いてもさ、シノのことあんまり知らないって言うから‥‥‥‥」





____当たり前だろう。



自分が変だと気付いてからは、まともな友好関係なんて築いていないんだから。

 


集団行動よりは、1人でいる方が好きだし。



声が小さいから、「しゃべらない人」として認識されているだろうし。






「あんまり、話さないので」



「クラスの人と合わない?」



「というか、よく、分からなくて。なに、話したらいいか‥‥‥‥」



「そっか」







「オマタセイタシマシタ」到着したバスに、2人で乗り込む。



同じ学校の生徒はもう帰ってしまっているし、

学校前のバス停に来るまでにほとんどの人が降りてしまうせいで、今日のバスは貸しきり状態だった。


今日は雪がずっと降っているから、出掛ける人が少ないのかもしれない。





「桜庭君は、どこまで乗って行くんですか?」



「氷町ってとこ」




氷町は、ここから3つ先。____と言ってもバス停の間隔が長いから、40分くらいはかかってしまうけど。




「シノは?」



「私は、緑が丘団地です。そこから電車で」



「え、そうなんだ。結構遠い?」



「電車に乗るって言っても、2駅くらいですよ。

中学もこの辺りだったので、そんなに変わらないですが」





桜庭君は、バス停の近くに家があるみたい。近くてちょっと羨ましい。



おばあちゃんの家に住んでるんだって。




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