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「‥‥‥‥え、普通にすげーと思うけど。それがなんか、問題なの?」
「すごい、ですか?」
「カラフルで、楽しそうだなって」
「‥‥‥‥‥‥‥‥そうですか」
「それって。シノがってこと?」
「もしもって、言ったじゃないですか‥‥‥これ以上は聞かないでくださいね。友達の、話です」
「なんだ。友達か」
「‥‥‥‥え」
「シノだったら、もうちょっと色々、聞きたかったんだけど」
そう言って、いじわるな笑顔を向けてくる。
「え?」
「だって、あんまりシノと話す機会ないじゃん。体育とか別だし。すぐ席替えしちゃったから、離れたしさー」
「桜庭君は、私と話したかったんですか‥‥‥‥?」
「話したかったっつーか。クラスでよく知らないの、シノくらいだし」
桜庭君、人気だからな。
もともと私が話していい部類の人じゃないことくらい、分かってたけど。
私なんか、きっと眼中にもないんだろう。
彼の友達になる人は、たぶん、もっときらきらして、もっとふさわしい人で。
長く、みつあみになった髪が視界に入る。
こんな教室の隅の、冴えないみつあみメガネなんかじゃ、ないんだろうな。
「他のヤツに聞いてもさ、シノのことあんまり知らないって言うから‥‥‥‥」
____当たり前だろう。
自分が変だと気付いてからは、まともな友好関係なんて築いていないんだから。
集団行動よりは、1人でいる方が好きだし。
声が小さいから、「しゃべらない人」として認識されているだろうし。
「あんまり、話さないので」
「クラスの人と合わない?」
「というか、よく、分からなくて。なに、話したらいいか‥‥‥‥」
「そっか」
「オマタセイタシマシタ」到着したバスに、2人で乗り込む。
同じ学校の生徒はもう帰ってしまっているし、
学校前のバス停に来るまでにほとんどの人が降りてしまうせいで、今日のバスは貸しきり状態だった。
今日は雪がずっと降っているから、出掛ける人が少ないのかもしれない。
「桜庭君は、どこまで乗って行くんですか?」
「氷町ってとこ」
氷町は、ここから3つ先。____と言ってもバス停の間隔が長いから、40分くらいはかかってしまうけど。
「シノは?」
「私は、緑が丘団地です。そこから電車で」
「え、そうなんだ。結構遠い?」
「電車に乗るって言っても、2駅くらいですよ。
中学もこの辺りだったので、そんなに変わらないですが」
桜庭君は、バス停の近くに家があるみたい。近くてちょっと羨ましい。
おばあちゃんの家に住んでるんだって。
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