・8

「さみっ‥‥‥‥‥‥‥‥!!」





バスの到着時刻10分前。



真っ白な景色のなかに、2人で佇む。


 

あるのは、今いる待合所と、停留所と、古くなった自販機だけ。






「これ、いりますか」




私があったかい飲み物を渡すと、「ありがとう」と素直に受け取ってくれた。



あらかじめ水筒に入れておいたやつだ。



自分の分も注いで、手をあっためる。



コップが2つ付いてる水筒だから、こういうときに便利。






「いつも、そんなの持ち歩いてるの?」



「あ、これですか」と、1人分にしては大きすぎる水筒を手に取る。



「こういうとき用です。待ち時間が長いので」



「こっちの女子高生って、みんなそうなの?」



「いえ、たぶん‥‥‥‥‥‥‥‥これは、私だけです」



「へぇ」言いながら、お茶をすする。





さっきまでとは違って横並びになったから、目の前に白い景色が一面に見える。








「私、雪好きなんです」



吐いた息が、すぐに白くなって煙みたいに消えていく。





「なんで?」



「周りの音が、消えるからです」



「シノって、聴覚過敏ちょうかくかびんなの?」



「え?」



「俺が初めて教室入ったとき、耳塞いでたから。

周りの音、うるさいのかと思って。さっきそれ外したときも、"ここなら大丈夫"って言ってたし」



「えっと‥‥‥‥‥‥‥‥」



「あ、ごめん。変なこと言って」



「‥‥‥‥‥‥‥‥いえ」








「もしも、ですけど」



「うん」



「音に色が見えるって言ったら、どう‥‥‥‥思いますか」



「え、シノが?」



「もしも、の話です」


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