・10

「あ、あの‥‥‥‥」



「‥‥‥‥ん?」私が声をかけると、窓の外を見ていた桜庭くんがこっちに向き直る。





東京にいたって言ってたし、こんなに積もってるのは見慣れないのかな。



他に運転手さんがいるけど、1番後ろの席に並んで座ってしまったせいで、2人きりだということを急に意識させられる。





「あ、や、あ、えっと‥‥‥‥」なんだか急に緊張してきた。  



「ん?」



「あの、さっきの、ことで‥‥‥‥」



「さっき?」



「あ、えと、色の‥‥‥‥」



「‥‥‥‥ああ!!うん!!」




桜庭君の瞳がきらきらしている。



心なしか、距離が近くなった気がする。



色の話したときも、興味ありそうな感じだった。







「友達の話だっけ?」



私がうなづくと、何も言わずに先を促してくれる。  





「私、その子に相談受けてて」



「へぇ」





「意外ですか?」



「んーん。ぽいなぁって」



「そうですか‥‥‥‥? 

そ、それで、その子、クラスで無視とか、されてるみたいで。自分の居場所もないって言ってて‥‥‥‥。


私、なんて言ったらいいのか、分からなくて」



「‥‥‥‥そっか」



「桜庭君なら、どうしてあげるかな、と思って‥‥‥‥」





私、なに話してるんだろ。



嘘、吐いちゃったな‥‥‥‥。







「シノは?」



「‥‥‥‥え?」



「シノは、その子のことどう思ってるの?」



「‥‥‥‥なんとか、してあげたいですけど。別の学校だし。

でも、一人で苦しんでいるのも、なんだか見ていられないと思って」



「へえ、友達想いなんだ」







優しい笑顔。



不覚にも、どきっとしてしまった。







「っ、そ、そんなことは‥‥‥‥っ」



自分の心臓がばくばくしていることに気がついて、変に動揺してしまう。












「そうやってシノが考えてるってことは、シノも認めてるってことでしょ? 


‥‥‥少なくとも、友達でいるってことは、色が見えてても変だって思わないってことだし」





たしかに。



考えてみれば、そうだ。



まあ、この話は友達じゃなくて、私のことなんだけど。  







「‥‥‥‥そう、ですね」





そして。



そんな友達が、もしも私にいたら。



という話でもある。







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